表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第四章 夏休みとお兄様
124/307

魔王と巫女の特訓:前半

前半後半に分けます。


「はぁぁぁあ!!!」


 魔王城の端にある騎士訓練所にて。

 俺はユメの稽古をする前に、彼女の実力を見る為、模擬戦をしていた。

 観客として母さんやグロリアスとムジカさん。師範代としてニーファが出席、ユメと一緒にメリアも修行する。

 ………何故、俺が稽古なんてつけなきゃなんだろうか?人に教える程の実力者でもない気がするが。


 ユメの戦闘方法は2つ。

 拳と脚の周りに魔力を纏わせて、単位時間当たりの火力、つまり瞬間火力による連撃攻撃を多用する《魔闘術》による近接戦闘。

 魔王継承者のみが発動できる、なんか凄くてヤバイパワー、《暗黒魔法》による魔法戦。


 《暗黒魔法》とは、魔王に至る者が使える闇魔法の上位互換以上の魔法である。具体的に言えば魔王の血筋であり、魔王としての力を持つ者に発揮される神の恩恵だとか。


 無論、俺は使えない。

 最初は使いたいなーと思ったが、一切発動しないし、使えもしないので諦めた。


 この恩恵とやらは、古き神の1柱によって初代魔王に与えられたらしい。そこから年代を重ねるに連れて進化、退化を繰り返し現在の《暗黒魔法》が存在しているとか。

 ………我が国はその古き神を信仰していないし、僅かに残った初代を記す本にも詳細は乗っていなかった。


 あぁ、今は集中しよう。ユメとの戦闘中だ。

 ユメは魔力を纏った拳で俺を叩き潰さんと早技で締めてくるが、危なげなく俺は避け続ける。

 《魔闘術》は一撃一撃が必殺であり、それを連撃に変えることで敵を完全に葬り去ることを目的に開発された。そして、それをユメは使いこなしており、既に手慣れた様子。


「くっ……」

「ほらほら。当てなきゃ意味ないよ」


 挑発をしながら旋回し、ユメの打撃を避ける。たまに蹴り技も入るが、当たらない。

 うちの妹は頭にトンガリが突き出た格闘娘のような戦闘力を持っているようだ。怖い怖い。


「はぁ、はぁ……行きます」

「?………へぇ」


 荒れた息を整えて何か言ってきたので、何をするのかと身構えてみれば、背の黒羽を展開した。

 よく目を凝らせば、その羽一枚一枚に魔力が込められていることがわかる。

 そして、羽に籠った魔力を右手に凝縮させ、魔法陣方に展開する。

 紫電が迸る漆黒の魔法陣。

 魔王を倒す者なら知っておくべき事前情報。

 五秒の時を有して発動する《暗黒魔法》。


 俺はその五秒の間に、魔力障壁を7枚張って防御の姿勢をとる。


「《黒紫雷帝》!!」


 魔法陣から黒紫の雷の塊が、コンマ1秒で俺の目の前に迫る。


「はやっ……ゔっ!」


 7枚も重ねられた魔力障壁を全て粉砕し、俺の横腹を雷が直撃し、貫通する。


 ユメの魔法陣が霧散し、訓練所の壁を壊そうと迫った雷も消滅する。


「………ははっ」

「に、兄様!?大丈夫ですっ……」

「まだ終わってないぞー?」

「え!なっ!?」


 心配して駆け寄ってきたユメに、俺は腹を押さえながら足蹴りを食らわす。

 瞬時の所で躱されたので、身体能力を測るのもこれぐらいか。


「に、兄様、怪我は……」

「ん?大丈夫大丈夫。だって俺……」


 そう言うと、ユメの前に居た俺は霧のように薄れ消えていき………


「本物はずっと此処に居たからね」


 母さんの後ろ……というか、肩叩きをしながら立っていた。


「あ〜、上手だわ〜……もっと上もやってちょうだい」

「はいよー…ユメがさっき貫通させたのは俺の幻影だ。そういうのも見分けられるようにしないとだな」

「は、はい…………良かった」


 今まで味わってきた中でも、上位レベルのスピード。あの雷は発動までにかかる時間がネックだが。

 もし、俺が《幻影分身》を使わなければ重症負ってだぞ。しかも魔力障壁を全部割るなんて……恐ろしい子っ!!


「はい、母さん。俺行ってくるから」

「はい、頑張ってね〜」


 母さんの肩叩きを終えて、ユメの方に歩く。


「《魔闘術》に関して言えば問題ない。魔力運用とコストを考えながら戦えば苦戦はないと思う。《暗黒魔法》については……発動までにかかる時間が長くて隙が多い。相手によってはその間に致命傷を受けるからな………」


 ユメの欠点を幾つか並べてみると、今すぐ直せそうなのが幾つかあるので、直そうと思う。


「てことでユメ、お前が使える《暗黒魔法》全部見せて。あと、ムジカさん、歴代の魔王が使ってきた《暗黒魔法》について記述されてる本ってありますか?」

「魔王様の執務室にあるとお思われます」

「ちょっと持ってきてもらえます?」

「かしこまりました」


 メイド長のムジカさんが影に消えるように移動し、訓練所を後にする。

 

「それじゃあ始めるぞ…………と思ったけどユメは休憩。メリア、君の番」

「はい!」

「今行きます」


 ユメを休憩させて、メリアに前に出るよう促す。訓練所のグラウンドの端へと移動するユメが、グラウンドに出るメリアとハイタッチした。


「………あんなに仲良かったんだな」

「ご存知無かったのですか?」

「すまん。知らんかった」


 未だに奴隷解放できていない巫女メリアと次期魔王として国民に人気を持つユメが仲良しか。

 ………メリアの故郷にも行かなきゃだなー。


「じゃあ、行くぞ」

「宜しくお願いします!」


 メリアは轟砕の爆戦棍……では無く訓練用のメイスを持って構える。

 俺も訓練用の西洋剣を持ってメリアと対峙する。


「《ダークウェア》……行きます!」


 両腕に身体強化の闇魔法を掛けて突撃。

 メイスの動きは滑らかで、細身でか弱い印象を受ける白腕を巧みに動かしメイスを振るう。

 俺はそれを剣でいなし、弾き、迎え打つ。

 甲高い音を立て続け、拮抗状態となる。


「ふっ……!」


 埒が明かないと思ったのか、メリアは後方に飛び、メイスを構え直す。


「《ダークアップ》!」


 メイスに闇を纏わせて強度と耐久力を上昇させて強化。訓練用のメイスが圧倒的に殺意の高い武器へと進化した。


「はっ!」


 瞬発力を生かして俺に突撃し、メイスを縦に下ろす。

 黒い戦棍が俺の脳天を狙うが、無論俺は剣で防ぐ……こともせず愚鈍に避ける。

 下手に防御したら剣が折れる。訓練用だし。


「《金剛剣士》!」


 剣にダイアモンドの強度を誇る鉱石を土魔法で創石して剣と融合させる。

 これまた訓練用から硬くて岩の質感を持つ武器が出来上がった。既に見た目は剣ではなく金属の塊に鍔が着いた鈍器になっていた。


「はぁっ!!」

「やぁっ!!」


 二振りの鈍器がぶつかり合い、衝突。

 そのぶつかり合いは、メリアの戦棍が俺の剣(元)を押し返し始め、メリアに勝利の女神が微笑むかと思われたが……


「後ろがガラ空きじゃぞ」


 ニーファの乱入によって背後を平手打ちされ、メリアが吹き飛ばされる。


「きゃあっ!!」


 ……………………はぁ。


「ホントに乱入するとは思わなかったぞ……」

「強くなる為には理不尽に耐え忍ばんといかんからな。第三者の攻撃も予知していないと戦えんぞ」


 流石に外野の人達────いつの間にかムジカさんも戻ってきていた────もそれは無いだろうと表情で物語っていた。


 衝撃から立ち上がったメリアは、ニーファと俺に向き直る。


「お主は夫の従者なのだろう?それ相応の力を身に付けて貰わんと困る。ユメ以上に厳しくするぞ」

「は、はい!」


 ユメの相手は俺、メリアの相手はニーファと決まった瞬間だった。



途轍も無く関係の無い話になるんだけど、

文化祭の準備ってみんな頑張ますか?


自分のクラスは謎でして、内装班で予定の日はしっかり行ったのに全然進まないし、お盆明けに委員会での用事を終えて教室に行ってみたら吹奏楽部に占領されてるし。


不安でしかないわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ