戦友達との再開
前話から新章に突入しました。
章の名前から分かる通りだと思いますが、多分だけど秋になっても夏を描き続けてる気がします。
出来れば30話前後書くつもりです。
今までの章も30話以上あったしね。
あ、それと
二ーファの服装が今まで単調な白いワンピースっぽく書いてきたのですが、なんか民族衣装の方が良くね?可愛いんじゃね?と妄想が広がり、これからは『民族衣装の雰囲気を持つドレス』とします。
まぁ、物語に変化は特に無いですが。
もし暇な人が居たら、今までの話を読み返して二ーファの服に言及している所を見つけて、自分に報告してくれるとありがたいです。
では、本編へどうぞ。
夏季長期休暇が始まり、暑い夏が本格的になってきた(世界都市はそこまで暑くない)今日この頃。
俺とニーファ、メリアにスライム勢はある屋敷を目指していた。
補足だが、今まで一緒に行動できなかったエノムルはクロエラが造った『ミニミニ君2号』によってデミエルとウェパルより少し大きいサイズに小さくなった。
ネーミングセンスの欠片も無い凄い作品が2号の理由は、1号が暴走して酷いことになったからだ。無論、失敗は成功の元として前向きに受け取っているらしい。彼は。
ガタゴト……ガタゴト……
ウェパルが御者を務める不思議な黒馬車に乗って目的地…………勇者マサキの屋敷へと向かう。
世界都市に来てすぐ、また会おうとか言っておいて一切出会わずに夏が来たので、流石にやってきた次第だ。
事前にアポは取ってあって、今日一日は勇者パーティともう1組入れて暇を潰すつもりである。
「………貴族っぽいところだなー」
「そうじゃの………なんじゃ、お主も家が買いたくなったのか?」
窓から覗いた景色は、貴族が住んでいる様な雰囲気を醸し出す街並み。世界都市に貴族階級は存在しないが、他国の貴族がいる為、その多くが此処に居を構えている。
たまに、道を警備として雇わられた冒険者が歩き、報酬の為に目を光らせて仕事をしていた。
………俺は警備なんて面倒な仕事をしたくないなー……手加減とか出来なさそうだし。
下手したらここら一帯が吹っ飛ぶ。
おっと、ニーファの質問に答えないと。
「家?……うーん、学園を卒業したら買うぐらいだなー…………いや、買っとくか?」
「……真面目に検討しなくてもいいんだぞ?」
なんだ。ニーファは要らないのか?
将来一緒に住む予定の家なのに。
「なっ……」
彼女の耳に思った事をそのまま囁いたら、見る見るうちに顔を赤く染めて顔を埋めてきた。
よーしよしよし。恥ずかしかったな、うん。
「主様、もうすぐ着くみたいです」
「ん?そうか」
ウェパルが触手を巧みに動かしてメリアに合図して俺に報告してくれる。どうやら勇者屋敷に着いたらしい。
勇者屋敷。命名は俺。
窓から見た外観は白を基調とした大きなお屋敷。整えられた緑が調和をなし、綺麗さと清潔感を醸し出している。
「ほら、ニーファ。早く顔戻して。見られるぞ?」
「………むっ……わかった」
妄想が膨れ上がっていたのか、顔を蕩けさせていたニーファを強制的に現実に連れ戻す。
ちょっと悲しそうな顔をされたが、流石にその顔で外に行ってほしく無かった。
まぁわかるよ?
想像の世界から現実の世界に戻される苦しみは。
勇者屋敷に正門から入り、黒馬車から降りる。
既にそこには勇者達が出迎えに来ていた。
「ようこそ、3人共。お久しぶりです」
勇者マサキが前に出て挨拶をしてくる。
後ろには聖女のソフィアとエルフのシリシカ、没落貴族のクレハだ。
ミュニクは………あ、ソフィアの服の裾を掴んで目を擦っていた。寝起きかな?
「あぁー……取り敢えず久しぶり。なんでそんな固いん?」
「まぁ、形式美?」
「やめろ。背筋に悪寒が走る」
「え!?なんで!?」
ちょっと格好良くサムズアップして答えマサキの姿を見ていたら本当に悪寒が走ってビックリした。
「まあ今日は宜しく」
「リョーマさん達はもう来てるから、早く上がりなよ」
そう。
今日は俺とマサキ以外にリョーマの所も来ている。なんでも、嫁さん達を紹介してくれるらしい。
Sランク冒険者にして『鉄剣』の異名を持つ人類最強の男。
かの有名な女レスリング選手と張り合えるレベルの男である。無論、ボケての話だが。
頭の中で無駄なことを考えつつ、勇者ハーレムの皆様方にも挨拶をし、プニエルが幼女化したことに三者三様の反応をしてくれたり、ミュニクがプニエルと仲良く手を繋いで幼い姉妹の様に見えて微笑ましくなったりしながら中庭へと向かった。
「おー!来たか!」
中庭にやってくると、律儀に椅子に座って待っていたリョーマが手を振ってくる。
それに応えて手を振り返しながら、他のメンツを見る。
リョーマの近くには三人の美女が居た。
金の髪を垂らし、翠眼を持ち、民族衣装のような服を着るエルフ。灰色の髪を持ち眠そうな目で此方を見る狼の獣人娘。そして緑の髪を肩で切り揃えて、側頭部から山羊の角が生えた魔族。
「お久ー。元気だったかわ……聞かんくていいか」
「それもそうだな。じゃあ俺の嫁さんを紹介するぞ。うーんとそうだなー……エルフの娘がクレア。そんで獣人の娘がルフ。んで魔族の娘がシェーンだ」
「えっと、リョーマさんがお世話になったそうで……これからも宜しくお願いします」
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします!」
「うん。よろしく」
さて。取り敢えず聞きたいことは後でいいや。
まずは楽しもうじゃないか。
「それじゃあ主な3人とみんなが揃ったということで、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
マサキの音頭で始まったのは、結構早めの立食選べるタイプの昼食会である。まだお昼の3時間前だ。
ここでお腹をある程度満たしてから、世界都市の海辺にある砂浜で遊ぶ予定だ。
既に勇者と鉄剣のものを言わせぬ金の力と信頼の実績によって1日貸切になっている。
やったね。水着の文化がこの世界にはあるってよ!!
リョーマやマサキと(酒以外で)飲み交わしたり、女性陣と軽く会話したりして円滑にことは進んでいく。
プニエルはミュニクと仲良くコカトリスの鶏肉の唐揚げを二人で仲良く占領している。
メリアとニーファは女性陣の中で楽しそうに言葉のキャッチボール中。
ウェパルはメリアの頭の上で料理を落とさないように上手に食べてるし、エノムルはニーファの足元でご飯を貰っている。
ついでに言うと、デミエルは俺の頭の上でムシャムシャと行儀悪く食べている。たまに食いカスが頭から降ってくるが、魔法で対処済みだからOK。
「ふむ……たまにはこう言うのも悪くないの」
それから少し経って、俺が離れて料理を選んでいると、ニーファが近づいてきた。
ニーファが蜜柑果汁100%ジュースを手に持って呟く。
「それもそうだな」
単調に返事を返すが、それだけで充分だったようだ。フッと息を吐き、美味しそうにジュースを飲む。ゴクゴクと音を立て、首元が動く姿に少しだけ見取れてしまったのは何かの魔力だろうか?
まぁ、女の魅力ってやつか?よく聞くヤツ。
「あ、あの!」
俺がココア(珈琲もあったが苦くて飲めない。前世から変わらない世界の理)を飲んでいたら、リョーマの妻の一人であるシェーンさんが話しかけてきた。
「はい、どうしましたか?」
「あ、あの……アレク様ですよね?」
「………気軽に呼んでどうぞ」
「は、はい」
ふむ。あまり表に出ない俺の顔を知っている……まぁ、知ってるだけの人ならそれなりには居るか。……居るよね?
「で?なにか御用でも?」
「い、いえ!か、確認したかっただけなんです!すいません…じゃ、し、失礼します!」
彼女はあがり症なのか、コミュ障なのか、緊張からなのか………平常運転の可能性もあるか?
「………知り合いかの?」
「いいや?恐らく魔都の住人だろうが……全員の顔を覚えてるわけもないし、そもそも俺自身が出てくることが少なかったし。面識なんて軍とか貴族にしかないね」
「そうか…………………………ぼっちだったの」
「聞こえてるからね?違うよ?友達と遊ぶのが面倒臭いって感じる年頃だったんだよ?」
「まだ一桁の年齢で?アホか」
酷い。どうやら世界はぼっちに厳しいらしい。
その後、滞りなく昼食会は終わり、海に行く為の準備に入るのだった。
主に女性陣が。
「………なぁ、リョーマ」
「ん?なんだ?」
中庭を片付けているマサキの屋敷の従者に混じって手伝いをしているリョーマに質問をする。
「てかお前も手伝えよ」
「俺は魔王の兄だぞ?」
「ただでさえ強い魔王に兄って付けるだけで威圧感が変わるよな……で、なに聞ききたいんだ?」
ジョークを交えながら話を進めていく。
魔王の兄に、威圧感なんてこれっぽっちも無いぞ。
「お前の嫁さんのシェーンさん。どこで買った?経緯は?理由は?教えてくれるとボク嬉しいな♪」
リョーマの嫁さん三人は全員奴隷だ。以前奴隷狩りにあった被害者なのがクレアさんとルフさんで、当然ながら3人共首輪は外されている。
「…………それを話すとでも?個人情報だぞ?」
「………じゃあいいや」
「は?………いいのかよ」
「どっちだよ。はっきりしろや」
言外にダメと言っておいて驚くなよな。
「……まぁ、闇市とだけ言っとこう」
「へぇー……かの鉄剣様でも闇市には行くんだね」
「そりゃあな。掘り出しもんってのもあるだろうし、あの時は金がとにかく必要だったしな」
「…………」
「………話だと、魔族の商会の娘だったらしいが、上客の貴族が些細な事でキレたらしくてな。そんで商会は貴族の金融操作によって解体。シェーンは借金背負って奴隷落ちだとよ」
「……ふーん。金融操作ねぇー」
まぁ、聞いたところで俺に出来ることはないが……魔界祭前に帰った時に報告しとくか。
その後、仕方なく片付けを手伝い、スムーズに事を進めることが出来たのだった。
次回
「この物語、初の水着パート!」
お楽しみに〜