知らない内に予定がうまるーん
「さぁて……お腹もいっぱいになった所で話を続けようか」
アンテラが口元にハンバーグの欠片を残しながら話を始める。
「………夜天神様、ハンバーグが」
「え?取って取って」
「……はい、取れました」
「サンキュー」
教徒として流石に見過ごせなかったのか、メリアはアンテラの口元の肉を布巾で拭い取り、そのまま台所で皿洗いに向かった。
「あぁー……まぁ、メリアちゃんの話は終わったから良いか。君達のさ、学園の長期休暇での用事を教えてくれないかな?」
「長期休暇?………あー…夏休みの事か」
我が母校ユグドラシルには『夏季長期休暇』という『夏休み』が存在する。
この休みの期間で、実家が遠い者は帰省したり、研究会の活動に励んだりする。また、この休みを利用して祭典や行事などが行われる。
世界都市は観光名所としても有名なので、各大陸から多くの観光客が訪れるため、大混雑するのも夏の名物。
この中央大陸は世界の中心と言われてはいるが、気温は安定している。まぁ、夏は暑く、冬は雪が降るが。
…………この世界って球体なのか?赤道とか極圏なんて聞いたことないしな……
「その長期休暇のうちにさ、天界図書館行ってほしんだけど」
「えーっと、なにそれ?」
なんか凄そうな名前の図書館キター!
「うん。そこで色々と知ってもらいたいし。例えば《五神獣》とか」
《五神獣》
天父神が世界に放った五体の神獣。
《神竜》《神虎》《神鳥》《神亀》《神蛇》の最初の魔獣。《神竜》以外は種族進化を行っている為、呼び名が変化しているらしい。
そこから派生して現在世を蔓延る魔物が存在するという。
神獣グラン・タラスクスに関しては、地上の民……つまり、俺達が勝手に読んでるだけで、本当の名は《仙老亀》コクヨウらしい。
………そう言えば、人型の始祖はいないのかな?
疑問が尽きない世の中だ。
「まぁ、そこで魔法の学を深めて貰うと嬉しい」
「………なんかあんのか?」
「……ぶっちゃけ言うと、そろそろ四堕神の1柱ぐらい動くと思う」
「…マジか?」
「天父神は多分だけど、まだ動かない。せいぜい現状扱える神徒や神獣に命令するぐらいだ。まぁ、種族進化してない神竜ちゃんぐらいだけど」
「ぐっ……我の進化条件がわからんのだ……」
つまり、ニーファが進化してなかったから神の命令が届いてしまい、踏ん張ったけど無理だったと。
「まぁ、そこはそのうち分かるよ………ということで、招待状渡しとくから、はい」
「あ、どうも」
「これに魔力を込めて転移すれば行けるからね」
「……天界図書館って、天界にあるんだよな?」
「うん」
「……召されたりしない?」
「ないないない。そもそも行ける存在が限られてるから。神竜ちゃんは当然として、神化している君なら問題ないよ。まぁ、他の人は行けないけど」
つまり、メリアやプニエル達はお留守番か。
「……何時でもいいんだな?」
「うん。取り敢えず夏を堪能してから来てよ。図書館には伝えとくから」
「……わかった」
その後、アンテラの骨董屋から出たのは夕方で、転移によって寮に帰宅した。
「………のうアレク」
「ん?」
「……我が進化するにはどうすれば良いんじゃろうな」
「……それを知る為にも、行くべきだろ」
多分だけど、此奴は俺を殺しかけたことに責任を持っている。
自分が至らなかったせいで、天父神の絶対命令に逆らえきれなかったのだから。
「……まぁ、おいおい知ってけば良いさ。俺とお前は一心同体。そうだろ?」
「………ふっ。そう、じゃったな」
その後、留守番決定のメリア主導で夏休みの計画が建てられたのだが………
『海水浴』
『休み最初の魔界祭に王族として参加』
『夏後半の平和記念祭に参加』
『古代魔術研究会としての活動』
『冒険者稼業〜夏version〜』
『メリアの里帰り』
等々………
この中で一番重要なのって、メリアの里帰りだと思うんですよ。
そして、従者の手で決まる俺の日程……いや、従者だけど奴隷だったわ。
………夏休み楽しみだなー。
てか、休暇中に四堕神とか出て欲しくないけど。
絶対休日出勤の長期戦争やん。
……早急に仕留めんとアカンな。
俺の平穏な日常の為にも!