氷心の魔女
最近の悲しかった出来事は
クラスメイトから勧められたゲームでのこと。
『アリーナ』というプレイヤー同士が全自動でバトルする闘技場で1000勝以上したのに
今朝、完敗して連勝記録が途切れたこと。
まだ80日しかやってないんだけどね。
マールと荷物持ちを連れて冒険に出た俺達『銀の翼(パーティ名)』は、ウラバラの森で希少な薬草を採取し終わったあと、マールの魔法を見ることになった。
「ん………アレクと比べると低いと思う」
「いや、基準が可笑しいから。あれとは比べちゃダメだから」
「何がダメだって?クロエラ君」
「全て?」
「…………そこまで言う?」
少し心の精神バリアが抉られたが、気を取り直していきましょう。
マールは《氷心の魔女》という異名通り、水魔法の上位互換、氷魔法を得意とするらしい。
さて、お手並み拝見といきますか。
「……《フリーズ・プリズン》」
手に持った魔導具である青い宝石のついた杖を持って、詠唱。
魔法が発動し、宝石から放たれたのは氷の吐息。空気を冷やし、大地を凍らせられる。
空中には氷が枝のように生え、一瞬にして目の前は銀世界へと生まれ変わった。
………生態系を簡単にぶち壊せるやん。
てか、謙遜しすぎやろ。この娘。
「……こんな感じ」
魔法を撃てたのが嬉しかったのか、少しだけ頬を赤くして振り向くマール。無表情だけど。
冷気が後方にいる俺達にも届き、クロエラとメリアは腕を摩り始めた。
………ニーファは神竜だから兎も角、冒険装備として黒衣を着てきて良かった。
これが有ると無いとじゃ、気候の変化についてけないからな。
「………こんなに寒くなるんだね、氷魔法って」
「凄いですね……」
「うむ。この若さでこれは凄いぞ」
「拍手喝采。褒めたるわ」
「ん………」
四人で褒め称えると、嬉しそうに頬が歪んだのを俺達は見逃さず、顔を合わせる。
「……笑ったね?」
「笑ったの」
「笑いましたね」
「笑えるんじゃん」
「ん………恥ずかしい」
これ以上弄ると虐めに発展して酷いことになるから(経験談)、ここらでやめとこう。
まぁ、マールが笑えたってことで良し。
「よし、んじゃ帰るか」
「え!?ボクの魔法は見てくれないの?」
「お前のは魔法じゃなくて魔法学だろう。使うのは全部ミラクル兵器じゃねぇか」
「それを世界は魔法と……「言わねぇよ」……はい」
クロエラを黙らせた後、マールに凍らせた大地を元に戻すように指示を出すが……
「……ごめん、無理。解凍の魔法は使えるけど、この規模は無理」
「要練習だな、それは………ニーファ」
「仕方ないのぉ」
ニーファに頼んで、目の前の銀世界を破壊してもらう。多分だけど、被害の方がデカイな。
え?何故頼んだかって?
嫁さんが魔法撃ってる所見たいやん?
「……《竜の息吹》」
口元に現れた魔法陣から極太の破壊光線が発射され、銀世界は粉微塵となり、燃え盛る大地と………
「って、やりすぎじゃボケ!なんでドラゴンパワー全開で撃ってんだよ!?」
「いや、じゃってアレクが撃っていて我が撃たないのも可笑しいじゃろ!?」
「流石にこの魔法はねぇよ!!………あ、繊細な魔法使えない、または苦手けぇ女子?」
「………サテ、ナンノコトジャロウナ」
「片言ですよー。おーい」
「………2人は仲良し?」
「まぁ、婚約してるらしいしな」
「………婚約?夫婦?」
「なんか言ってたぞ……って、マールちゃんは居なかったんだな」
「うん………研究会の将来も安泰?」
「いや、違うと思うよ?」
「何故そんな言葉が……?」
「え?職場を引き継がせる為……?って本に」
ニーファと燃え盛る大地の前で会話を広げる俺達は、マールが頓珍漢なこと言ってたので注意。
「マール、君には後で常識を教えるから」
「え?………知ってるけど?」
「本で学んだことだけだろう?世を渡ってきた俺が教えてやるから、な?」
「…………わかった」
まぁ、そんなこと言ってるが前世が前世なのでメリア監修の元だが。
今日も僕らパーティは元気です。
オマケが2人居るけれども。