ただいま
「そろそろ、帰らんとヤバくね?」
「むっ………そうじゃな」
ニーファと2人でのんびりしていたが、朝日が登ってきた。
その休憩してる場所が爆心地レベルの被害を受けてるため、過ごしづらいってのもあるが。
「そういや、この山ぶっ壊して良かったん?」
「まぁ、大丈夫じゃろ。今では必要ないしな」
「ここ特有のなんちゃら酒は良いの?」
「龍泉酒じゃな……まぁ、あんまし酒はなぁ……直ぐに酔いつぶれる」
「龍なのに?」
「そうじゃ」
………………衝撃的真実。
ニーファのちょっとした1面を知りながらも、体を動かす。
うーん……駄目だな。
「魔力もスッカラカンだし、体が怠い……」
「確かそう言うのを魔力欠乏症って言うんじゃったかのぅ……まぁ、明日には全快じゃろ」
魔力欠乏症ねぇ……まぁ、俺の魔力全てと周辺を漂う魔素を全部使って戦ったからなぁ……
あぁ、言っておくか。
「おし、ニーファ」
「ん?なんじゃ、一体」
「俺が殺されそうになるなんて無いからな」
「………ふっ、そうじゃな」
それに、もし死にそうになっても………可愛い嫁さんが何とかしてくれるでしょう。
「………我が運ぼうか?」
「あぁ……マジ?それは助かるんだが…」
「ほれ。男の矜恃なんて今は置いとけ」
そう言って、俺を担ぎあげ、抱かれる。
俺を抱いた状態でニーファは羽を動かし、上空に飛び上がる。
風魔法でなんとかしてくれてるのか、風圧とか塵とか一切気にならないな。流石だわ。
「………荒れたなぁ」
「………荒らしたのぉ」
上空から見た惨劇は、大災害レベルの傷跡を残していた。霊峰は見る影もなく、天を貫いていた山は砕け、地面に広がっている。
「なぁ、これ、色々と周辺被害やばいんじゃ?今の御時世だと結構発達してるもんだから……」
「………我等は何も知らなかった、ということで」
「あ、はい」
ニーファに担がながら空を飛び、世界都市への帰路に就く。
大空を一直線に突き進み、山を、野原を、海を超えてゆく。
そして、あっと言う間に空の旅は終わりを告げ、世界都市の近くに着く。
このまま都市内に入ると、厄介なことになりそうなので、ここから少ない魔力を使って転移をする。
転移先は自分達の寮部屋。
「《転移》」
一瞬で視界が切り替わり、俺とニーファは木の床に着地する。
あぁー……せっかく回復した一部の魔力が消えたわ……ダルい。
「……あ!やっと帰ってきたんですね!」
奥から出てきたのは、うさ耳ピンク髪のメイドさん……メリアだった。
「おう。ちょっと遅くなっちゃった」
「すまんな」
確かに帰りは遅くなると言ったが、日付を跨いでも帰ってこなかった俺達を心配していたのだろう。どうやら、一睡もしていないようだ。
「あー……メリア、眠いなら寝ていいぞ」
「い、いえ……私は大丈夫ですよ。それよりも、2人共、休んでは?」
「いや、でも授業……」
「今日は欠席と先にリダ先生にお伝えしてありますから、大丈夫です」
「あ、準備万端のようで」
そのままメリアに背中を押され、移動をする。
が、体が汚れているのでメリアの魔法で身体浄化をし、汚れをとる。
メリアは俺直伝の魔法修行を行った為、色々と応用が聞くのが良いところだ。
「マシタ?」
トテトテと歩いて、俺の足に頬を擦り付けるプニエルと、それに付き従うように現れたデミエルとウェパル、そしてのっそりと扉からこちらを見つめるエノムル。
「おう。ただいま」
「おかりー!」
そして、プニエル達は子供部屋に行き、俺とニーファは寝室に入り、ベッドに向かう。
ポフンッ…
「んっ………」
布団にダイブし、その柔らかさと心地良さを全身で堪能する。
そして、布団でポフポフしていると、ニーファが俺の隣に乗ってきた。
「では、お昼になったら起こしますので」
「メリアも寝るんじゃぞ〜」
「はい、気が向いたら」
「ちゃんと寝なさい」
そのままメリアは一礼してから部屋をでる。
以前、スライムが増えた為、部屋の広さが足りないと、空間拡張した結果、いくつか小部屋を作ってある。
この寝室もそのひとつだ。
「……おやすみ、ニーファ」
「……おやすみ」
疲れ切った身体は、沈むように、眠気に逆らわずに眠りについたのだった。
…………………なんだろう、この感触は。
柔らかくて、暖かくて、落ち着く何か。
腕の中でモゾモゾと動きながら、体の位置をずらしているのか。全容は分からないが、目を瞑っているだけで何がそこにいるのか分かる。
………まぁ、一緒に布団に入ってるのはコイツしかいないんだけどな。
「……すぅ…………はァ」
「おい!耳に息をかけるな!絶対起きとるじゃろ!あ、こら!尻尾を触るっ、にゃあ!?」
イヤイヤと口では言いながら、身体は一切抵抗せずに俺に身を寄せてくれているのは、信頼か、愛ゆえか。
「……最高の抱き枕だな」
「我は枕か?枕扱いなのか?」
「おいおい。王族の抱き枕だぞ。喜べ」
「いや、横暴すぎ…んんぅ!」
あ、ちょっと楽しくなってきた……
「ちょ、調子に乗るでない!!」
赤面状態のりんごニーファが俺をベッドから落とそうとして来たので、耐える。耐える。
「ふっ……その程度で俺が落ちるわけが…………………あれ?」
直ぐにフラっとなって倒れてしまうが、すかさずニーファが頭を支えてくれる。
「……そう言えば、お主は病人だったな」
「そうだよ。責任持ってね」
「………うむ」
それから、メリアが昼飯が出来たと呼びに来るまで、2人で楽しく、身体が痛まない程度にイチャイチャしていた。