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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第三章 特別生のお兄様
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戦いの果ての交わる思い

ぶっ続けで3話連続投稿。すごくね?


………あ、日付が変わってるうー!?


あ、みんな。

アレクの前世の名前がわかる話だよ!

あと、大量の砂糖を口から吐き出す準備はできたかな?


───────────ここは何処だろう。


 深い、深い、夢のような世界。

 フワフワとした感じに、現実味の無い記憶を吟味する。

 それでも、それが実際のことだともう一人の俺は言う。


『それがお前の消された昔の姿だと』


『お前は都合の良い道具として作られたと』


『だからこの世界を忘れていたんだと』


『もう俺とお前は他人だと』


 アレク=ルノワールの前世の記憶は、転生時に封印、書き換えられていた。

 それは、彼の破綻した、崩壊寸前の自我が理由だった。

 表面上では、一般的な好青年を演じ。

 実際には、幼少期に受けた虐待、いじめ、悲劇により、錆び付いて朽ち果てた心。

 彼のそれを癒す者は、死ぬ直前にまで現れなかった。







 姓名、景山 慎司(かげやま しんじ) 享年19歳。

 大人になれぬまま死んだ孤独の青年こそ、未来のアレクである。





「君を異世界に転生させたいんだ」


 黒髪の少女………本人は女神と名乗っていた、アンテラに俺は目を向ける。


「嫌だ」


 まず最初に出た言葉は、拒絶。


 自分は死にたいと願っていた。いくら生きていても、自分の生きる意味が見いだせずに、ただのうのうと存在するだけの無駄なゴミ。

 ただ願うだけで、毎日毎日、朝起きて死のうと動いても、手足が竦んで、結果的に『死ぬのは明日にしよう』と後回しにして、また夜を迎える。

 そんなクソみたいな人間の願いが叶ったのか、俺は死んだ。トラックに跳ねられて、無意味な生涯を閉じるはずだった。

 それなのに。コイツは、俺を転生させると?

 苦痛だった。

 イヤだった。

 これ以上、生きたくなかった。

 だから、転生なんて辞めて欲しかった。


「………それでもいいさ」


 だが、俺の悲痛な願いを女神は叶えなかった。


「僕が欲しいのはね、適合者である君だけど、君の人格、記憶は別にいらない。必要ないんだ。だから、君の今の記憶を消し去った上で転生させる。それならどうだい?」


「それに………もしかしたら、次の世界では自分の良き理解者が見つかるかもしれないよ?」


 その言葉は、俺にとって悪魔の言葉にしか聞こえなかったんだ。


 それでも。

 記憶を消すという労力をさせてまで俺を転生させたあの女神には、少しだけ感謝すべきなのだろうか。

 今世の俺は、良き家族と、友人と、そして隣にアイツがいる。


 前世の自分とは全く違う存在となった俺は、新しい記憶で、書き換えられた記憶で歩む。

 今ここで、激戦の拍子に記憶のネジが外れても。

 今の俺なら大丈夫。


 だから、ゆっくり眠るといい。

 心身共に生まれ変わったんだ。

 あぁ、そうだ。もう、他人だ。

 死んだお前(・・)の分まで、俺は生きる。


 さようなら。今まで忘れていてごめんな。


 景山慎司は死んだ。

 今を生きるのは、魔王の兄として生まれた俺だ。














◆Good morning


 あまり気分の良いとは言えない夢を見た。

 ………いや、夢と言うより、現実か。


 しかし今は、心地良く、そして頬に感じる方の感触は、何度も何度も上から下へと流れて、俺の頬を優しく撫でてる。


 まるで、ゆりかごの中で揺らされているかのような安心感。


「んっ………」


 頭に柔らかいものを感じながら、体を動かす。


「ッ、クゥ………!」


 体のあちこちが痛い。

 ……………あぁ、そうだ。確か俺はニーファと戦って─────────


 そうやって目を開けたら、至近距離にこちらを見つめるニーファと目が合ってしまう。


「「…………………おはよう」」


 2人で同じタイミングで言ったので、目を丸くし、可笑しくなって笑ってしまう。


「はははっ……………殺さなくていいのか?」


 前世の記憶が蘇った今、今世では生を求めている俺から出た言葉。

 ニーファは、俺を殺す為に戦った。

 そして、今は膝枕をされた状態で俺は生きている。


「………我の負けじゃ」


 達観したかのように目を瞑り、ニーファは言う。


「お主のせいで、何を言えばいいか忘れてしもうたわ………すまんな、アレク」

 

 悔やむような顔で俺の頭を撫でる。


「…………じゃあ、勝者特権ってことで、いくつか聞くぞ?」

「うむ………好きにせい」


 殺し合いが終わったは、全て聞くと言ったからな。有言実行だ。


「………誰に命令された?」

「……我ら神獣の生みの親であり、四堕神の1柱。天父神フォルスガイアじゃ」

「へぇー」


 四堕神ねぇ………


「なに?声でも聞こえんの?」

「つい最近、封印が解けたらしいぞ。それが原因じゃ」


 えー……もう、嫌な予感しかしないよ。

 まぁ、転生時に女神……後で骨董屋を見てけたら特攻してやるか。アンテラが俺を転生させた理由が少しわかった気がする。


「お主の事を一番危険視しておったよ。あやつは。世界の秩序の為とかほざきおって」

「嫌だったのか?」

「うむ」

「じゃあなんで、従った?」

「……………」


「失いたくなかった」


「…………?」


 失いたくない?じゃあなんで殺すのさ。


「我は何千年と生きてきた。そして、我は初めてのお主と会ってから、色々と変わってしまった」


 ふむ。


「我はな、初めての感情を得たんじゃよ。お主のお陰でな」

「………感情?」


「………恋心、じゃ」


「…………………………………………へぇ」


 へーっ、ソーナンダー、ヘー。

 ア レ ク は 動 揺 し て い る !


「お主といると胸が高まって。お主と喋るのが楽しくて、嬉しくて。お主を失うと思った時が辛くて、悲しくて。お主の隣に居たいと思うようになって。そんな感情が我を渦巻いていた………」


「そんな我に、お主を殺せと?………無理じゃよ。何度も何度も悩んで、悩んで。我が実行しなければ、きっと神に消されるだろうと思い至って。なら、我の手で死んだ扱いして隠せれば……と思い至って、今回の強行に出たわけじゃ」

「へー……ところでなんだけど」

「む?なんじゃ?」


 真面目に語っているところ悪いんだが、この人生で一番大事な事を言わせてもらいたい。


「ニーファ。俺さ」





「お前が好きだ」





 その言葉は、スッ、と俺の口から、飛び出していた。


「………………!?」


 全身の動きが固まったニーファに、俺はさらに言葉を続けていく。


「俺、お前が好きだ。惚れている。……思ってた以上に好いてたみたいだ」


「───な、な、な、何じゃ急に!?」


 ようやく俺が何を言ったのか理解したらしく、かぁっと顔を真っ赤っ赤にしてそう捲し立てるニーファを見て、俺もまた小さく首を傾げた。


 急に……確かに急だな。うん。


 どうしちゃったんだろう、俺。


 やっぱ極限状態の上に、今回死をかなり近くまで感じたから、色々精神が極まっちゃっているんだろうか。


 まあ、でも……そんなこと、どうでもいいか。


「なんかさ、上手く言えないけど………俺と一緒にいてくれると嬉しい」


 前世も含めて、一切縁のなかった告白。

 それを聞いていたニーファは未だ顔が赤いままだが、優しく、嬉しそうに、語り掛けながら言葉をかける。


「我、でも良いのか?………我はお主に危害を加えたんじゃぞ?それも、死1歩手前に落ちるほどに。それでも………良いのか?」


 ……あぁ、そうか。

 ニーファは、俺と敵対したことで、怖くなったんだ。俺に避けられるのではと。嫌われたのではと。

 …………まったく。


「よっこいしょっと」

「ちょ、アレク、なにを!」


 未だに痛む体を無理矢理動かして、地面に座る。ニーファを目の前に座らせて。

 ………体の傷が治っているのは、ニーファのお陰だな。

 取り敢えず、ニーファを抱きしめる。

 優しく、抱擁して、背中を撫でる。


「そんなお前のことを、どうやら俺は好きになってしまったらしいよ……………ニーファ」

「………むぅ……」


 少し困ったように、目を逸らすニーファに向けて、口端を笑みの形に変えた俺は、重い腕をのろのろと伸ばし、銀髪の少女の、白い頬に手を触れる。


「───ニーファ。俺はお前が好きだ。どうしようもなく好きだ。お前と同じで、離れたくない。だから……これからもずっと、一緒にいてくれないか?」


「………はい」


 いつもとは違う印象で、顔を赤らめているニーファが、ゆっくりと顔を下ろしていき────




 ──────その唇が、俺の唇に触れた。




 甘く、柔らかく、心地良く。


 脳が蕩けてしまいそうな不思議な感触。


 唇を通し、彼女の体温と、その熱い思いまでもが伝わって来るようで、まるで一つに融合したかのような官能的な錯覚すら覚えてしまう。

 12歳の体でこんな事になるなんて、とふざけた考えも、直ぐに頭の片隅に飛んでしまって。


 数秒とも数分ともわからないような時の中で、俺とニーファは唇を交わし続け――やがて、少しずつ彼女の顔が俺から離れていった。


 再び、俺とニーファは間近から顔を見合わせる。


「これは……あれだな、恥ずかしいな」


「フフッ、お主がそんな顔を浮かべるのを見られたのであれば、我も恥ずかしいのを我慢した甲斐があったというものじゃ」


 頬をリンゴの如く真っ赤に染め上げながらも、まるでいたずらっ子のような表情を浮かべるニーファ。


 その彼女の表情は、目が離せなくなる程に美しく、あどけない子供のように可愛らしく、俺の心臓がドクンと大きく跳ねる。


「…………これからも宜しくな、ニーファ」

「…………うむ。一緒じゃ、アレク」


 それから数分間。

 二人の影は、重なり合っていた。









執筆してる間に、いいなー、いいなー、羨ましいなーと思考を巡らせる悲しい作者。

甘さ100倍の砂糖が体内工場から量産されて吐き出した気分だよ。


まぁ、2人がくっついたってので、取り敢えずネタを1つ回収したよ。


待望の読者さん、待ってたかな?

非リアのみんな!同盟でも組むかい?

待ってるよ!

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