悩める竜の見出す答え
前半は、ほのぼのです。
2020/06/15追記。
我等がヒロイン、ニーファちゃんの表記がこの話から
「カタカナの『ニ』」ではなく「漢字の『二』」だとの指摘を受け、修正を開始。
今後とも誤字報告、宜しくお願い致します。
「え、この娘がプニエルちゃん?本当に?」
教室に入ってすぐに、ミラノやステラさん、等の先輩陣営に囲まれたので、簡単に説明した。
俺の腕の中でヨダレを垂らして寝ているプニエル。スライム形態の時と知能指数は変化していないらしい。ニーファ曰く、3歳児レベルだとか。
……そのニーファは、現在、何かを悩むかのような顔をしているのだが、いくら問いただしても、なんでもないと言い張っていた。
話を戻すが、この学園で生活する為に学園長に御説明に向かったら、調べたい興味を何とか隠そうとしながら、理解を示してくれた。
今まで通りの従魔として扱うが、見た目は幼児なので、他の教師陣への説明も必要になったらしいが……俺には関係の無い話だから割愛。
「うーん…こう見ると、2人はプニエルちゃんの親みたいだね」
ミラノの何気ない言葉で、プニエルを抱き抱えていた俺と、隣でプニエルの頬をつついていたニーファが固まる。
「「………………」」
死後硬直とまでは言わないが、俺達は固まる。若干頬が赤くなりそうになるが、根性?で耐える。耐えてみせる。
「……お前……いや、ミラノ先輩、軽はずみな言動は慎むべきだと思いますよ?」
「その言葉を君にそのまま返したいと思うよ。………それに、ほら」
ミラノが顎をクイッと向けた方を見たら……赤面した上に湯気を出しているニーファ。
「……ニーファ、おい、ニーファ」
「…………はぁっ!? な、なんじゃ?なんかあったのか?」
凄 い 動 揺 し て ら っ し ゃ る
「まぁ、その、なんだ。………席につこうか?」
「……うむ、そうしようか、の」
その後、ニヤニヤしながらこっちを見る謎共を威圧してから、普段通りの授業が始まる。
尚、プニエルは授業中に起きて、メリアに引き取られました。
放課後、研究室に籠る俺は、物を片手に作りながら、次の休日の内容を考える。
……久々に冒険しに行くか。
ということで。
「ニーファー?いますー?」
我が部屋を占領しているニーファを確保しに行くが………いなぁーい。
そこには、夕飯の準備をしているメリアと、スライム四衆が楽しそうに遊んでいた。
「……なぁ、メリア。ニーファ何処に居るか知ってる?」
「はい?ニーファ様は……あれ?さっきまでは居たんですけど……」
うむ。我がパーティの財布を預かるメリアが知らんとなると……何処だァ?
「………《対象探知》《個体名:ニールファリス》…………え、遠っ」
何故、あんな場所に……いや、アイツの元住処だから別にいいのか?
まぁ、取り敢えず。
「なぁ、メリア。ちょっと帰り遅くなるわ」
「あ、はい。わかりました。………えっと、何処に向かうのですか?」
メリアに帰りが遅くなる事を告げ、魔法の準備をし……発動。
「ニーファが昔住んでた場所だよ……《転移》」
シュタッ。
魔法による転移をした場所は、イビラディル大陸の秘境が1つ。
龍泉霊峰。
俺とニーファが初めって出会った場所……つまり、神竜が住む洞窟内。
しかし、その洞窟は以前の激闘によって崩壊状態。見る影も無い程穴だらけでありながら、あの日以来荒らされた形跡は見れない。
そして。
沈み始めた太陽の光が、洞窟の穴を貫通して地を照らしている。
そんな場所に、目を瞑ったまま仁王立ちするニーファ。
「………やはり、来たか」
俺が転移した際の魔力の流れを感じたのだろう。目を開けて、俺を横目に見てくる。
「そりゃまぁ、こんな所に居たら、なんかあったのかなぁー?と、思って来てみたわけ」
「……そうか。まぁ、お主と二人っきりになりたくて、ここで待っていたのだから、結果オーライじゃな」
「………それ、俺が来なかったら、どうすんの?絶対拗ねて暫く口聞いてくれないやつじゃん」
「その通りじゃな!よくわかっておる」
軽口を叩きながら、俺は無防備にニーファに近づく。
静かな崩壊洞窟に響き渡る俺の足音。
「で?わざわざ人気の無い場所に連れてきたんだ。何の用?」
常人の間合いと言える範囲に入ってから、聞く。
「………実はな」
そう言ってニーファは、自分の背丈よりも巨大な武器……天罪紫刀を取り出して、此方を振り向き────……
「アレク……武器を取って、戦え」
俺の首の横に大剣を近づけて、そう言い放った。
「………………はぁ、なんで?」
僅かな動揺を悟られないように、聞く。
まぁ、今更、こいつと戦闘をおっぱじる意味がない。俺はそう思っているのだが。
「………お主には言えぬ事情がある……じゃが、これだけは言える。我はここで、お主を殺す気じゃ」
苦虫を潰したような顔で、そんな事をいいやがるニーファを見て。
「どうしてもか?」
「……どうしてもじゃ」
本当なら、何故俺を殺そうとしてくるのか聞くべきだろう。
本当なら、わざわざ戦いを選ばずに逃げるべきなのだろう。
だが。
こいつは……ニーファが、何を思って敵対してきたのかはわからない。
わからないからこそ、それに乗る。
今まで戦ってきたニーファは、本気を出していなかった。ほんの少し力を使っているだけで、本気の全力を見たことを、俺は無い。
恐らく、ガチの殺し合いと言うのなら。俺は絶対に死んでしまう。
………まったく。何があったのやら。
「………最近、ずぅーっと悩んでおってな。奴等が復活した今、お主の隣に我がいる事で、お主に危害が及ぶのではと」
なんか、突然語り出したぞ。俺に危害?それなら毎日及んでますけど。何か?
「……そんなふうに、うじうじ悩んでいたのが原因だったんのかのぉ……お主を殺せと言われてしまった」
「……………」
ニーファが誰かに命令されて、俺を殺す、か。
かの神竜が従わなければいけない存在……?
まぁ、つまり………
「そんで、その誰かさんに命令されたから、無視する訳にも行かず、俺を殺すと」
「…………そうじゃ」
………はぁ〜〜〜
「馬鹿だな、ほんと」
「………なんじゃと?」
俺が口に出た罵倒に、目敏く反応したニーファは、大剣に少し力を込めて、首に触れさせる。
やばい、ちょぉーとヤバいかもしれんが……最後まで言わせてもらう。
「お前が俺に危害を加えるだァ?そんなん日常茶飯事だわボケ。それに、俺を殺せ?なら、何も言わずに殺ればよかったのに」
俺の言葉に、驚いた様子で此方を睨んでくるが、俺はお構い無しに叫ぶ。
「あのなぁ!!なんか困ったら言え!仲間だろうが!!つか、俺を殺すだぁ!?やれるもんならやってみろ!!うじうじ悩んだままの女に、敗れちまうほど俺は弱くねぇからな!!」
その言葉に、何を思ったのか、顔を伏せ、
「……そうじゃな。お主と戦うのに、こんな思いを持っていたら、ダメじゃの………」
吹っ切れた様子のニーファ。まぁ、俺の死亡確率が普通に上がったので、不利になっただけなんどけどね。
「まぁ、そんな暗い顔されてると、相棒としてやらなきゃだしな」
「………相棒、か」
「………あれ?声出てた?」
「うむ。普通に」
……………………恥ずかしっ!?
なんか重要な局面なのに、めっちゃ恥ずいんだけど。
「……なぁ、アレク。お主は、運命に付き従うか?それとも………抗うのか?」
まったく。何を聞いてくるのかと思えば。
はぁ……………
普通なら、ニーファを連れて、メリアの作った晩飯を楽しく食べられただろうに……まぁ、いいや。
「そだなぁ………俺は、運命に抗った上に……
作り替える派だね」
そう言った瞬間、転移でニーファから離れ、戦闘準備をする。
愛用の2振りの武器を異空間から取り出し、両手に持ち、一瞬で装備を整える。
右手に《獄紋刀》
左手に《魔神杖カドケウス》
学生服の上を纏うように現れる《常闇の黒衣》
そして、背中から自慢の烏羽を生やす。
「……そうか…………すまんな」
自分から殺すとか言いやがったくせに、謝罪するニーファは、右手に《天罪紫刀》を持ったまま、俺から離れた場所に立つ。
「……終わったら全部聞くからな」
「……それまで生きてたら、な」
そして……突然始まった戦いの火蓋が切って落とされた。
後半は、やばいです。
前話との差よ。
プニエル回じゃないのかよっ!と思ったアナタ。
行き当たりばったりなんだ。この作者は。