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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第三章 特別生のお兄様
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同盟本部の見学日

 

 デミエルとウェパルとエノムルのスライム三匹を飼い始めて早1週間。


 今日は以前から計画されていた、《世界同盟本部の見学》を行う日だ。


 ということで現在学園を出て、馬車に乗って移動中。

 世界同盟の本部は、世界都市の中心である《世界樹》の真正面……なのか?まぁ、そこにある。


 ここに向かう馬車は、四台連結で、学年やらで別れている。残りの一台は従者組だ。


 ついでに言うと、俺のペットであるデミエルとウェパルは一緒に連れてっているが、エノムルはデカすぎるため、残念ながら留守番だ。

 プニエルは、俺の膝の上でモチモチしている。


「にしても……同盟のぉ」


 ニーファが嘆息を吐きながら外を眺める。

 この馬車には、俺とニーファ、クロエラしか乗ってないが、この発明家は絶賛爆睡中。

 なんでも、徹夜で研究を頑張ってたらしい。


「………zzz」


 ……………ゆっくり寝ててください。


「まぁ、ニーファは暫く人間の世界について知らんかったもんな。別に興味なんてないけど、気づいたらなんかできてるぅー!って感じ?」

「まぁ、そう言う感じじゃな。言い方はムカつくが」

「手厳しい……」


 楽しく談笑していると、馬車がゆっくりと止まり、到着の知らせが届く。

 王侯貴族が見たら侮蔑するようなレベルのエスコート(笑)をニーファにしながら、馬車を降りる。

 まぁ、そんなエスコートの仕方なんて、習わなかったし。………魔族にそんな習慣あんのか?まず。

 あ、クロエラは叩き起こしました。直にダイビングして、お腹にクリーンヒットして。

 まぁ、俺軽いし?めっさ軽いし?問題なしよ。

 他の馬車からも、続々と見学者諸君が降りてくる。

 ………うわー…。聖王子の名は伊達じゃないんだな……ミラノのエスコートがすげぇ。もう、すげぇ。語彙力が低下するほどすげぇわ。


 さて、話を戻して。


 馬車を降りた俺達の前には、この都市のシンボルである《世界樹》と、その前に立つビル……といっても謙遜が無いレベルの建物。


 円形の建物は、周辺の家々の倍はあろうか。

 灰色の壁に、外側からは中を覗かない特殊なガラスの窓。

 どう見ても、異界の技術を使いましたって感じの建物こそ、《世界同盟》の本部である。


「ようこそいらっしゃいました。特別生の皆様」


 出迎えに来たのは、執事服を着た初老の男性。

 白髪をオールバックにして、綺麗に整えられたちょび髭が特徴の人間。

 その表情からは歳相応の穏当さを感じさせるが、しかし真っすぐに背筋を伸ばし、全身から滲む毅然とした態度からは反対に全く歳を感じさせず、非常に若々しい印象を受ける。


「まずは私の名前を。私はレミーロ=アイギーニ。本日の見学の案内人を勤めさせていただきます」


 そのまま、老執事のレミーロに案内され、本部の見学会が始まった。





 円卓会議場。

 その名の通り、円状の机と、それを囲う椅子が並べられた会議場。『場』と名が付くとおり、広い。中央の円卓の外側に、また別の席が設けららている。

 ここでは、同盟の上層部が規定の日や一刻を争う事態に陥った時に使われるらしい。

 そして、今日は見学ということで、ここで挨拶的な事をやるんだってさ。


 そして、その中央の席に座る五人の人物。

 彼らはこの世界同盟の中でも重要なポジションに就いているものである。


「では名乗ろうかの。ワシの名はエウク=レイデスじゃ。同盟最高評議会長にして、人族代表じゃ」


 高齢の男性がまず最初に挨拶する。

 同盟最高評議会長とは、世界同盟のトップだ。現在は人族であるエウクさんが務めているが、任期制であり、毎回種族を交代しているらしい。

 故に、魔族やエルフ、ドワーフ、獣人が会長に就任して、同盟を取り仕切ることもある。


「次は私ですね。私はアルダンテ=ルノワール。魔族代表を務めています」


 理知的な雰囲気を醸し出し、長い黒髪を後ろで縛っている魔族の青年。

 そして、その名字が示す通り……


「ぶっちゃけるなら、現魔王シルヴァトスの弟でもあります」


 少し動揺が走る。

 まぁ、事実を知る俺とミカエラ以外だが。


 そう、この人、俺の叔父です。


 滅多に城に来ることは無いんだけど、俺や家族の誕生日会の時にはよく出席していた。

 ただ、ここ最近は忙しかったらしく、ニーファとの面識はまだ無い。


 アルダンテは、俺の方をチラッと見て、少し微笑んだ。………確かあの人、極度の……いや、やめとこう。うん。


 その後の代表は、俺にとっては対して気にならんので、名前だけ紹介。


 獣人族代表、レフリド=ヘルハンデ。

 エルフ代表、シルフィエット。

 ドワーフ代表、ゴーデム。


 以上の五人が、世界同盟を主軸に世界の平和を維持している上層部のトップである。


 その後、それぞれの自己紹介が終わったので、世界同盟発足の歴史を教えて頂くことになった。


 エウク爺様が説明役として話し出す。

 仕事で忙しいだろうに、わざわざ自分から出てくるとは………上の仕事は大変だなぁ。


「今から五百年前に、勇者様の一人のお声によって設立された和平同盟は、いつしか世界全体を巻き込み、多種族を尊重し、良き隣人として、同じ世界に住む良き仲間と考える、という世界同盟へと成り上がります。数多くの戦争で傷ついた人族。出生率が下がり、戦争すらもままならない魔族や獣人族。元から温厚だったエルフやドワーフによる精霊族。彼等が手を取り合って生まれたのが、今もこの場にある世界同盟なのです」


 その後もまぁ、長く続いたが、参考になる事とない事が多かったので……まぁ、起きてたけど、聴き流してた。てへ。

 あ、ニーファとクロエラも同様だぞ!


 その後、施設内を見学したり、話を聞いたりしながら、本部見学は終わり、有意義な時間は終わるのだった。






 ◆世界同盟魔族代表アルダンテ


「………彼も大きくなりましたね」


 私は一人、感慨深くなりながら書類を整理する。

 最近は、神の神託によってゴタゴタしていた所為で、魔王国に帰れなかった。


 いやはや。

 兄と兄妻、そして子供達。

 二年も会えないのは少し寂しいな。


 そう言えば、まだ私は独身だった。

 いや、きっといい相手が……兄と同レベルの力量があるのなら、妻として認めるのだが。


「フォッフォッフォ。アレが魔族の放浪王子がのぉ」


 ノックをして入ってきたのは、同じ代表であり議会長である御老体。


「えぇ。私が以前あった時よりも、随分成長しているご様子。しかも、様々な功績を残しているとか」


 人伝での話ではありますが。


 ヘルアーク大会で優勝を飾る。

 勇者マサキ様や聖王子ミラノ様のご友人。

 エンジェルスライムという希少種を飼い慣らし。

 彼の隣にいる少女もまた、普通とは離れた存在。


「私は、兄と違って、戦うよりも頭を使う方が得意でしたが………彼の動きは予想域を遥かに超えますね」

「ほう……数秘術を極めたお主が言うのだから、相当なんじゃろうて」


 御老体は、窓の外を眺めながら、彼等が馬車で帰った道を見る。


「………例の封印が解けたらしい」

「!?」


 私は、驚愕して、御老体を見やる。


「恐らくじゃが……神と人の戦争が始まるんじゃろうよ。……その時は、お主も覚悟しとれい」

「……えぇ」


 少し重たい室内の中、二人の男は黙って未来を考えていた。



補足ですが、前回行った世界樹の地下迷宮は、この本部の反対側に位置します。

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