魔都エーテルハイト
父と母に願望を伝えてから一週間が経過した。
俺は、久々に城を出て、魔王国アヴァロンの首都…魔都エーテルハイトを散歩…もとい探検しようと思った。
ぶっちゃけ、学園に入学するためには十二歳にならなければならない。後二年間、待っている間は好きに動くつもりだ。
城下町に行くために門をくぐる。門番を務める近衛騎士の人達に軽く挨拶をしながら、久しぶりの外を堪能する。
魔都エーテルハイトは、主に五つに分かれている。
中央に魔王城が存在し、それを囲うように貴族の屋敷が建ち並ぶ。
東は、一般人などが暮らす平穏な居住区。
南は、日々賑やかで盛んな商業区。
西は、治安が悪く暗い雰囲気のスラム。
北は、ドワーフが集い酒臭の強い鍛治区。
今回は、特に目的も無いので南の商業区に向かうつもりだ。
さっそく、貴族街を抜けてブラブラと南に向かう。さて、買うとしたら何を買うか……
「へい!らっしゃい!今なら化けスイカが安いよー!」
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!今ならポーションが安いよ〜!」
毎日、静寂など訪れない商業区。市場が並び、多くの民がひしめき合っている。そこにいるのは魔族だけでなく、獣人やドワーフなどの姿もチラチラ見える。……人間やエルフはボチボチとした数しかいないが、恒久同盟が結ばれてからは別種族同士の交友がそれなりに盛んになり始めた。
……え?俺は一応王族なのに、誰も気付かないならなんでかって?そんなのあたりまえだろ。
俺が引きこもりのボッチで友達がいな………自分で言っといて心にグサグサ刺さるな。これ。
俺は小さい頃から部屋や図書館、つまり城から出ることが少ないから、認知度が非常に低い。
妹のユメはちょくちょく外出しているらしいが。
まぁ、そんなことは置いといて、なんか買うか。お金はアイテムボックス…空間魔法の中に腐るほど入っているからな。
アイテムボックスを会得する人は少ない。つまり、希少価値。結構珍しいので、ダミーの鞄を持って、そこから出すようにしている。変に注目を浴びたく無いからな。
そして、気になった店を冷やかしながら、のんびり散策していく。たまに気に入った物を購入したりして、人混みの中を歩いていく。
やがて、人通りの少ない路地裏に来てしまった。
「ん……?」
ふとそこにポツンと骨董屋らしき建物に目が止まる。
フラ…
俺は、誰も目を向けないような骨董屋に、何かに誘われるように店内に足を踏み入れた。