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月夜恋慕
まるいまるい月が二つ在るよ。
遠くに見えるの。
滲んで二つに見えるよ。
貴方は一つなのに。
手を伸ばして請い願おうと決して届くことはない。
穢れを知らぬ純粋純真無垢なる月よ。
私は貴方に恋をした。
いつからだったかは定かでない。
けれど、多分それは一目惚れだった。
毎夜毎夜、貴方を探した。
たとえいくら遠くにいようとも。
この眼で貴方の姿を捉えられるだけまだ幸せだと思う。
けれど、何度も何度もあまりに遠すぎる距離に舌打ちした。
海が作れるほどの涙を流した。
貴方を恨んだこともあった。
私はこんなに愛しているのに。
私はこんなに求めているのに。
貴方は露知らぬ顔つきでいつも優しくただ微笑んでるだけ。
それはとてもとても白々しいと思った。
貴方は一生決して誰も愛しはしないのだろう。