身勝手な傲慢
ごめんね。
ごめんね、ごめんなさい。
貴方をおいて逝くこと。
私独りで消えて逝くこと。
勝手に決めてしまったこと。
身勝手に振舞ってしまうこと。
ごめんね、ごめんね。
全部私独りで背負っていくこと。
貴方に痛みを与えたこと。
貴方に悲しみを与えること。
ごめんね、ごめんね。
許してね。
大好きだよ。
大好きだったよ。
私を好きだと言ってくれた人。
私が好きになった人。
泣かないで、泣かないで。
せめて微笑んで見送って。
最期の抱擁は思いっきりがいいよ。
最期の口づけは優しくがいいよ。
最期の言葉は大好きがいいよ。
サヨナラなんて辛気臭い言葉は貴方に必要ないよ。
サヨナラは全部私のものだから。
私が全部引き連れていくんだから。
だから、貴方はどうか笑っていて。
私にサヨナラを告げて泣かないで。
とても酷なことを言っているのはわかってるよ、ちゃんと。
だけど、きっと貴方が私の立場だとしたら、貴方もそう言い残すでしょう。
全部全部私が連れて行ってあげるから、貴方は私がいなくなった悲しみだけに集中していて。
笑って笑って。
せめてこの瞼が閉じるその瞬間までは微笑んでいて。
そのあとはたくさん泣いてもいいから。
けれど、いつまでも泣かないでいてね。
私も悲しくなっちゃうから。
だから、しばらくしたらまた笑ってね。
私の大好きな貴方でいてね。
はじめはぎこちなくでもいいよ。
けれど、作り笑いはやめてね。
それは貴方の本当の笑顔をきっと奪ってしまうだろうから。
そしたら私、きっと寂しくなっちゃうよ。
だから、笑っていてね。
時々泣いてもいいから。
そのときは私を思い出さないでね。
貴方の心の傷口がまた開いて悲しみが漏れ出してしまうかもしれないから。
寂しくなったら好きな人に抱きしめてもらうといいよ。
それは私にとって、とてもとてもつらいことだけれど、私はもう貴方を抱きしめてあげられないから。
貴方を抱きしめることのできるあたたかい腕を持っていないから。
けれど、貴方が好きになった人だもの。
きっと素敵な人なのでしょう。
だから、私は少しの嫉妬に駆られながらもきっとホッと息をつけるでしょう。
ごめんね、ごめんね。
許してね、どうか許してね。
私が私を全部取り払おうとしていること。
私が私として最後まで生きようとしなかったこと。
不意に足元がふらついて。
闇に目がくらんでしまったの。
貴方の傍で最後まで貴方を支えてあげられなくて悔しいよ。
大好きだよ。
大好きだったのに、私、私自身に負けたの。
どうか幸せになってね。
つらくても私のこと忘れないでいて欲しいよ。
他の人を好きになっても、私のことを二番目に愛していて欲しいよ。
もし子供ができたら三番目でもいいから忘れないでいてね。
私ってば未練がましいな。
私が勝手にしてしまったことなのにね。
貴方を無視して、貴方の前から姿を勝手に消しておいてなお貴方を束縛しようとするなんて。
かっこわるいや。
けれど、それくらい貴方のこと好きだったんだね、私。
ごめんね、ごめんね。
私、泣いちゃうよ。
貴方と一緒に居られないのがとても悲しくて寂しいの。
もう話すこともできなくなったのがとても悲しいの。
我侭な私でごめんね。
ごめんね、ごめんね。
きっと私、もう笑えないよ。
けど、貴方には笑って居て欲しいと傲慢にも思う私を許してね。
大好きだったよ、私を好きで居てくれた貴方のこと。