美しい死に方
どうせ死ぬならきれいに死にたい。
綺麗に。
奇麗に。
キレイに。
誰の目にも留まらずに一人死にたい。
あっという間に。
でも、どうせ人の死なんて汚いものよ。
ドラマやアニメや漫画や舞台のように、美意識のカケラもない。
無神経な死に方をするの。
居合わせた人に嫌悪感しか与えないでしょうよ。
人の死なんて、まだ私はこの目で見たことがないわ。
この肌で感じたことも、もちろん実体験なんてもってのほか…未経験。
余りの悲しみで美化されるのかしら?
実際とは遠くかけ離れたそれで。
でも、美化なんて。
そんな偽物私には要らないわ。
どんな飾りも不要。
だって、私はきれいな死に方をしてみせるから。
けれど、そうね。
若い姿で、できれば死にたいわ。
そのほうがきっと美しいもの。
醜く歳をとった私よりかは。
だからね。
私、この世界ともうお別れしなくちゃならないの。
さよならの時間まであと少し。
じゅう。
きゅう。
は ち。
な な。
ろ く。
五 。
よ ん。
三。
二 。
一 。
「―――……零……―――」
なんて、ね…。
どうせ死ぬのなら、できるならば大切な人たちに囲まれて死にたいわ。
醜くても構わない。
人に嫌悪感とか、抱かせてしまったとしても。
私の死を悲しんでくれる人たちに囲まれて。
私が大好きな人たちに囲まれて死ねるなら。
多分きっと、それが私の最高の美意識。
私にとって最高の幸福。
きっと安らかに眠れるでしょうよ。
それって、人として美しい死に方じゃない?
それだけ自分を想ってくれてる人がいるってことが判るもの。