侮辱
臆病者だと笑っておくれ。
一人で膝を抱えていることしかできない能無しだと、陰口を叩いておくれ。
僕はその分、強くなってみせるから。
今のうちに、せいぜい罵っておいておくれ。
僕が立ち上がる前に。
さァ、お願い。
盛大にお礼をしてあげるから。
盛大に辱めておくれ。
もうすぐしたら全て笑って受け止めて、倍にしてお返ししてあげるから。
楽しみにしておいで。
自信がないなら、もがいて泣いて縋って…それからどうしようもないと諦めたなら私に乞うがいい。
それまでは一人孤独の海に沈みなさい。
浸りなさい。
血の海に。
失望なさい。
己の無力加減に。
そうしたら、私がそこから救い出してあげてもいいわ。
ほら、優しく抱きしめてあげる。
首輪を買ってあげるわ。
きつくその身に食い込むような…痛みを与えられるようなのを、付けてあげる。
きっと可愛いわ。
よく似合うはずよ。
だって、この私が選んだ貴方ですもの。
この私が選んだものが、この私に選ばれた貴方に似合わないはずがないわ。
ふふふ。
最高よ。
ワン!とでも、ニャン!とでも鳴いてみせなさい。
そして、靴をお舐め!
私がご主人様だと判らせてあげるわ。
まずは従順なそのカラダに。
それから強情なその自我に。
最高な私が最高な貴方を最高に辱めてあげるわ。
楽しみになさい。
「陵辱」
ああ。
それはとても快感ね。
貴方は女かしら?
「屈辱」
その歪んだ綺麗なお顔、最高だわ。
「汚辱」
綺麗だわ。
もっと嫌がりなさい。
「恥辱」
素敵ね。
「羞辱」
ああ。
とてもいい響きだわ。
「雪辱」
ああ。
それはとても不愉快なものね。
時は満ちた。
君に、この首輪を譲ってあげる。
それとも、新調する?
もっときつい刺々しいのに、する?
その首から血が滲み出るような…そんなのにしようか?
大丈夫。
きっと似合うよ。
とっても可愛いんだもの、君。
その綺麗なお顔によく似合うよ。
その屈辱に歪んだ表情は。
君の好きな言葉の一つだね。
今にして思うとなんて素敵な言葉なんだろうね。
どうして気付かなかったのかな?
でも、君のおかげで解ったよ。
さァ、靴でも舐めてもらおうか?
今日のこのときのために頑張ったんだよ?僕。
一日中泥の中駆け回ってさ、歯も磨かないじじぃに噛ませたガムをふんだりとかさ…最高に汚くしたんだ。
意外と難しいね?
一日で汚くするなんて。
君は一体昨日までどうやってあんなに汚くしてたんだい?
でも、まぁ。
ここまでしたら君も舐める甲斐があるってもんだよね。
さァ、ほらほら!
ニャン!とでも、ワン!とでも、ご主人様とでも可愛く啼いてみせなよ。
そしたらさ、特別優しく…激しくたっぷり可愛がってあげるからさ。
いつもみたいに笑って見せてよ、ねぇ?
強気じゃないと面白くないじゃない?
弱気でも好きだけどさ。
――……反抗期ね……――
これだからだめね。
犬はつくづく馬鹿だわ。
私の躾が成ってなかったのか、それとも足りなかったのか…。
ふん。
調子に乗っちゃってさ。
いいわ。
いいわよ。
今のうちだけは貴方の言う通りにしてあげるわ。
せいぜい可愛がりなさい。
やるなら徹底的にやりなさい。
最高に私を苛めてみせなさい。
そのうちにすぐ貴方にこの首輪を譲ってあげるから。
今のうちだけ楽しんでなさい。
仮初のご主人様気分を。
所詮、飼われる側だということをよくよくと解らせてあげるわ。
今に見てなさい。
すぐに溺れさせてあげるわ。
この私に。
この私の可愛がり方を癖にしてあげる。
今度は完璧に、調教してあげる。
ほら、もう貴方の番ね。
早かったでしょう?
いいわ。
いい。
素敵ね、その屈辱にまみれたお顔!
ああ…どんな首輪がいいかしら?
大丈夫。
今度は絶対取れないものにするわ。
オーダーメイドで作らせるから安心して?
ふふふ…。
やっぱり貴方にはこれがお似合いね。
貴方だからこそかしら?
とっても可愛くてよ。
さァ、跪いて私の愛を乞いなさい!
もちろん、最高に可愛いお顔でね。
そしたら、最高にいたぶってあげるから。
楽しみになさい!