鏡
空は蒼かった。
思ったより蒼かった。
けれど、思ってたよりは澄んでいた。
とても綺麗だと思った。
空は青かった。
思ったより青かった。
けれど、思ってたよりはくすんでいた。
とても醜いと思った。
でも、これくらいがちょうどいいのだと思った。
それは人のよう。
人を映す鏡のよう。
天に在るものよ、地に在るものと比例して在れ。
どこまで続いてるのか判らない、きっとどこまでも続いてる果てのない空は命の分だけ拡がっているようさ。
幾つあるのか判らない、とてもたくさんある生命のように果てしなくそこに在る。
人のようね。
人のようさ。
まるで鏡のように。
人と反映してる。
とてもくすんだ色をしてるときもあれば、とても澄んだ色をしてるときもある人の心のよう。
とても澄んでるように見えてくすみが取れないところも人の心みたい。
とてもくすんでいるように見えて澄んでいる部分もある人の心みたい。
ああ…とても醜くて綺麗だね。
空を見上げた。
そこにはまだ空が続いてる。
青空が、在る。
太陽が、在る。
そして、隅の方に薄く姿を消した月が、在る。
空が在って。
太陽が在って。
月が在る。
蒼があって。
光が在って。
闇が在る。
そう…そう。
まるで人の世みたいね。
人の心の内のようね。
ああ…醜い。
ああ…綺麗。
正反対の意味を持つ二つの言葉が一緒に在るね。
とても可笑しいよ。
でも、それくらいがちょうどいいんだろうね。