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強敵の名は

 プルルルルルル…。


 友人から一本の電話があった。


 俺はそれを取った。


 その内容は。


 「ちょっと来てくれ。頼む。敵が倒せないんだ!」


 援護だった。


 救援とも言うのだろうか。


 それとも応援だろうか。


 どっちにしろどれも似たような意味合いを持っていることに変わりはなかった。


 要するに助けに来いと言われているのだ。


 俺はどんな奴なのかと尋ねた。


 友人は早口で答えた。


 恐らく今敵と交戦しているのだろう。


 倒せないという割にはたいした余裕ではないか。


 電話片手に強敵(友人曰く)と戦ってるなんて。


 それ、本当に強敵か?


 俺が行く必要なくない?


 昨日の飲み会の二日酔いで超気持ち悪いんだけど。


 俺は今、二日酔いという名の敵と戦っているんだが。


 すげー強敵だぞ?


 そんなときにお前の応援?


 ふざけるな。


 そんなもの知ったことではない。


 でも、ま、どんな敵かだけは聞いてやろう。


 「多分なんかどろどろしてる奴。姿は見えないんだが、目が覚めてから俺だけを集中攻撃してくるんだ」


 「はぁ?」


 どんな敵だよ。


 お前姿もわからない敵とどうやって戦ってるって言うんだよ。


 そして、俺にそんな奴とどう戦えって言うんだよ。


 友人は続けた。


 「昨日そいつはおとなしくて、実に美味そうだった。俺はがぶがぶ口にしたよ。そしたらこんな目にあった!」


 女か…?


 「女の恨みでも買ったのか?お前は今それと戦ってるのか?悪いことは言わん。さっさと謝っとけ」


 「違う!!女よりはましだけど厄介なものなんだ!ちょっ…頼む。マジ助けに来てくれよ」


 「……」


 俺はしばし考えた。


 二日酔いでつらい中、外へ出歩きたくはないのだが…。


 「…わかったよ」


 俺は了承した。


 どんなのかはよく判らない強敵と戦う友人を助けに行くことに決めた。


 「そうか…すまない。恩に着る。さっそくなんだが、この強敵によく効く薬液を購入してきてもらいたい」


 薬品?


 「薬なんかで倒せるのか?…本当に俺必要なのか?」


 薬程度で倒せるのなら俺やっぱ必要なくね?


 「ああ。今の俺にはお前が必要なんだ。じゃないと敵が倒せない」


 …どんな敵なんだよ。


 ますます判らなくなってきた。


 まぁ、行ってみれば否応なく判るはずだろう。


 とりあえずどんな薬液なのか訊ねてみる。


 友人は言った。


 ひどく苦しそうな声で。


 やはり余程手強い相手なのだろうことがうかがい知れた。


 「どんな薬なんだ?」


 「液伽辺だ」


 ……。


 「…お前さ、昨日飲み会来てたよな?酒、飲んだろ?俺の横でさ、ぐびぐびとさ…飲んでたろ」


 「え…?ぁ、は?何?…ちょ…早く、おねがっ…うッ!むせ返ってくる。おえっ…おええええええぇぇぇぇぇぇ」


 「お前それ単なる二日酔いだろぉーー!!!紛らわしいことするなよッ!」


 「ちょ…今それどころじゃ、うぇっ!?」


 ゲロロロロロ…。


 「わーちょっと待て!分かった。駅伽部だな!?今すぐ持って行ってやる。後で金返せよなっ!」


 「む…す、すまない。菓子も買ってきてくれ。それはお前の金で…」


 「……行かないぞ?」 


 「………冗談です、ハイ」


 








 こうして友人の二日酔いは俺のおかげで治った。


 そして、皮肉なことに俺の二日酔いもどこかへ吹き飛んでいた。 






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