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 ――質の悪い冗談だ――







 そう呟く君の声が空洞な僕の心に響き渡って。


 そして、浸透した。


 ねぇ、君はさ本当は気付いてるんでしょう?


 知っててさ…笑うんでしょう?


 そんなふうにさ…残酷だと言って微笑する。


 悲しさと切なさとやるせなさと…暗い感情がない交ぜになったそんな笑顔で。


 僕を見てさ、嘘つきだなんて唇だけで呟くなんて。


 器用なことをするね。


 僕だって君の事、嘘つきだっていつも思ってるよ?


 馬鹿だねって呟いてる。


 残酷だとも嘆いてる。


 だから、きっと僕も…自分が気づいてないだけで君みたいな笑い方をしてるんだろうなぁ。


 最高で最悪な二人だな。


 いっそお似合いだとも言えるさ。


 でもね…僕をこんなふうにしたのは君だよ?










 ――好きだよ――












 ――面白い冗談を言うね――


 







 その言葉は空虚な俺の心を失望させ、胸の奥底へと沈みこんだ。


 拾い上げようとしなかったよ…いつもみたいにお前の言葉を。


 今回は耳を塞いだよ。


 塞いでやり過ごした。


 軽い気持ちで口にしたんじゃないと反論こそしなかったけれど。


 冗談だと受け流して、いつもみたいに笑って片付けることも出来なかった。

 

 本気だってお前、知ってただろう?


 知っててわざと気付いてないふりをしたな。


 お前はいつもそうやって俯いて笑うんだ。


 話を聞いてるふりして、その実まったく聞いていない。


 俺をちゃんと見ようとしないのは何故――?


 目があったときは必ずといってもいいくらいお前は呪文のように嘘つきって、唇だけで告げてくる。


 器用なことをする奴だな。


 俺だってお前のこと、いつも嘘つきだって思ってるよ?


 馬鹿だって責めてる。


 残酷だって怒ってる。


 そんなところは嫌いだとも思ってる。


 悲しそうな辛そうな痛そうな…そんな顔でいつも微笑してるお前なんか俺はみたくなんてないのに。


 お前はいつもそうやって生きている。


 如何なる時も。


 だけど、そんなお前を嫌がってる俺だってきっと人には言えないだろう笑い方をしてるんだと思う。


 最高に最悪な二人。


 いっそ滑稽だとも思うさ。


 でもな…俺をこんなふうにしたのはお前だろ?












 ――嫌いだよ――


 



 君の事なんて。





 お前の事なんて。











 ――好きだよ――






 君の事が。


 お前の事が。











 暗く仄かに咲くその笑顔が、いつか明るく満開に咲き綻びますように。


 そして、今日も二人は笑いながら冗談を口にする。

祈りさえも冗談だと嘯きながら…。

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