女王様
揺れる世界の中で、私は目を覚ました――。
温かい粉たちに包まれて眠っていた私を覚醒させて、力強く強引にその人は私を連れ去って。
恐縮する私に。
貴方にはこの席が似合うわ…と。
後ろでごめんなさいね…と。
背中合わせにあつらえられた豪奢な椅子に私を座らせて。
嬉しそうに微笑んだ。
そのとろけるような甘い相好に私は魅了されてしまった――。
中立ではぶかれて…どこにも休めるとこはなく。
けれど、歩き続けることも出来ず。
やっと見つけた…誰にも見つけられないだろうと見当をつけてその身を預けた地下だったけれど。
私はふいに起こされた。
たった一人が私に側にいて欲しいと望んだがために。
望まぬ覚醒を余儀なくされて。
手を引いてこの道を示してくれた人が、あつらえてくれた席に。
息を潜めて気配を殺して…肩身を狭くしながらも、仕方なくその場にあり続けた。
背中合わせで頂点の座に居座り続ける彼女はいつもキラキラと輝いていて。
とても憧れた。
私にはスポットライトなんてもの、当てられることなんて滅多になくて。
それに、当てられるとびくりと体をはねさせていつも彼女の後ろに引っ込んだ。
地味な私と綺麗な彼女。
いくら我が身を疎ましく思おうと、彼女はその手を放さずにいてくれた。
大丈夫よと…。
可愛いんだからもっと堂々と胸張って笑ってればいいのよって。
そう…いつも抱きしめてくれたけど。
私はやっぱり彼女みたいには笑えない。
彼女はいつもニコニコしていて。
白くてやわらかい肌で。
甘くて…けれど、舐めてるとクスリ…と意地悪く笑ってすっぱさを与えてくるカラダで。
人を簡単に虜にさせて、癖にさせる。
……魔性の存在。
ねぇ…どうしていつもそんなに堂々とその椅子に座っていられるの?
女王様――。
私は私らしくあり続けることに…自然なままに、与えられたカラダを受け入れて生きることに自信がもてません。
どうせ同じ裏ならば、彼女の後ろの席に背中合わせでつくよりも。
もっと下の階段の始まりより下の土の中で埋もれていたかった。
きっと…贅沢なことなんでしょうけれども。
ねぇ…どうして私をお選びくださったのですか?
彼女には憧れという存在だけでいて欲しかったのに……。