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無能賢者と魔法と剣  作者: 秋空春風
第2章 賢者と召喚
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海岸線


物思いに耽るのから立ち直ってパッと全身で振り返る。


「ところで」


ずっと気になっていた事をきく。


「荷物ってどうやって海を渡ってくるの?」


急な問い掛けに少し驚きながら返事を返してくれる。


「人によりますよ。

魔法使いによって変わりますね。

俺が知ってる方法だと、浮遊魔法でそのまま飛んでくると言うやり方がありますね」

「ほぁっ!?」

「え、えっと。

他には保護魔法と水魔法で無理矢理水中を突っ切ってくるとか」

「ふぇ!」

「…召喚士もしくはワープ士が港に常駐していて定時に荷物を呼び寄せると言うのもあります」

「ほおお〜、なるほどなぁ」


私のふざけたリアクションに戸惑いながらも真面目に答えてくれる。

私からすると何とも力業な運び方だと思うのだが、コレがスタンダードなんだろうな。


「広いスペースさえあれば良さそうな運搬方法ばかりなのか」

「狭い方がいい運搬方法の方が思い浮かびません」

「ああ、そうか。

ふむ、私の故郷には魔法がない。

魔法が無いと運ぶのに時間がかかってしまう。

でも、なるべく早く運びたいだろう?

だからその為に沢山考えて工夫してるんだ」


運送業に詳しくはないが、考えながら言葉を選ぶ。


「まず、運ぶ道や順番をきちんと決めてあってね。

他の人とぶつかったり、つっかえたりしないようにしている。

全てが丁度いいタイミングでタイムロスなく運搬方法の変更をすることによって、魔法が無くてもスピーディーに物が届けられるようになってるんだ」


ただのコンクリ広場を見ていても楽しくない。

海岸の方へ足を向ける。


「どうしたらタイムロスを無くせるか?

その試みの1つが積み荷の大きさを揃えて、整理して、まとめておく事。

そうすると、動かす道具も技術も一定でいい。

一定だと、持ち替えたり、出来る人を変えたりしなくていいからその分早くなる。

それに、水上、上空、陸上それぞれに乗り物があるんだけど、荷物の積み込みは右の乗り物から左の乗り物へ一気に1つ置き直すだけで移動完了するんだよ。

小さなものを何個も運ぶと時間がかかるからね」


ああ、いや。

何故狭いスペースの方がいいか、と言う疑問だったか。


「使う道具も乗り物も動きも大きさも決まっているなら、必要な広さは大体決まっている。

広大なスペースなんていらないんだ。

それよりも、そこそこのスペースが沢山あった方がいい。

沢山あれば、同時にいくつも準備が出来る」

「…」


あまりの無言っぷりに顔を覗いて確認する。

呆気に取られているようだ。


「うむ?

説明が難しかったかな?」

「はい、あ、いえ」

「?」


全く知らない人に説明するのは難しい。

そんなに説明が上手いわけでもないからな。


「すごくいっぱい考えてるんだなって思ったんです。

運ぶだけなのに」

「ん?ああ、うむ。

そうだね」


確かに、魔法やスキルで大体の事をこなせてしまうらしいこの世界の住人は原理を考えるとかあまりしないのかも?


「出来ない、足りない、なれない、手に入らない、間に合わない…。

そういうのをどうにかする為に考え、工夫する事が求められるからなぁ」

「考え、工夫する…」

「うん。

良く知り、よく考えて行動する。

それだけでどんなに無理そうな事でも実現可能になったりするしね!」

「…俺の呪いもどうにかなりますか?」

「なる?違うな、するんだよ」


ドヤ顔で即答する。


「困った事が勝手に解決するなんてのはよくある事じゃないよ。

どうにかしたいなら、その為に必要なことを考えた方がいいね。

その問題の原因を探って、どうなったら解決と言えるのか定める。

そこまで決めてからが始まりだね。

定めた目標に至るまでにしなければならない行動は何なのかよく考えて行動する。

コレだよ」


自分の発言に、うんうんと頷く。


「最初に望んだ結果にならないかもしれないけどね。

ま、そん時はそん時でまた最初から考え始めれば良いからね。

どうしてこうなったのかな?ってね」


長々と話していた為、私たちは既に海岸線を歩いていた。

眼下には砂浜が見える。


「そして、長年そうやって魔法が無くとも思考に寄って問題解決に挑んできた私には分かる。

ソウ君の望みは叶うだろう、ってね!

「…本当ですか?」

「もちろん!

そう思ったからこそ、君を旅路に誘ったんだよ?」


叶う事こそが当然だと言うように微笑んで見せる。

少しでも蒼龍が安心出来たらいい。


「それにね、実を言うと既にいくつか案があるんだよね。

ちょっと思いつくだけで5、6個位あるよ」

「ええっ!?」


こっちが驚くほどビックリしている。


「そ、それはどういう?」

「ん?」


理解が追いついていないようだが、その顔から先程までの暗さは感じなかった。


「んー、魔法陣案、魔石案、寄生案、魔法案、達人案、複数反覆案。

ふむ、6つか」

「???」


色々偉そうに捲し立ててしまったな。

少し自己嫌悪だが、彼の様子を窺うに不機嫌には見えない。

気分を悪くしてないのなら良かった。


「まぁ、おいおい説明するよ。

それにこれからもっと良いアイデアが浮かぶかも知れないし」


話が回りくどくて説教臭いのが私の悪い所だ。

よく言われる。


「上手くいくまで諦めなければ何とかなるさ」


言いながら心の中で反省していると、繋いでいる手がぎゅっと握られた。

どうかしたのかと蒼龍の顔を見やる。


目が合うと花が咲いたように微笑んだ。


「はい」


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