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無能賢者と魔法と剣  作者: 秋空春風
第2章 賢者と召喚
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果物屋


夕暮れ前になると、「また明日おいで」と帰宅を促された。

昼頃ここに訪れたから、3、4時‬間くらい入り浸っていたようだ。


我々はお礼と明日また再会することを約束してお暇した。


帰りの道のりで店を見ようかと思っていたが、気が変わった。

あと1日しか滞在できないんだもんな。

婆ちゃんの「また来たら?」発言により、「次の機会に買い物は回せばいいや」に思考が変わったのだ。

普通に疲労が溜まってるともいう。


それでも道中少し買ったものはあった。

果物と片手鍋と砂糖と瓶だ。

分かる人にはわかるだろう、ジャムを作ろうというのである。


思い立ったきっかけは果物屋さんが品物を片付けているのを見たことだ。

あろうことか美味しそうなベリー類をしこたま捨てようとしていたので、割とがちで引き留めた。


植物は魔法で簡単に育てられるので単価が安く、沢山仕入れられる。

よって少しでも古くなったり傷むとポイされてしまうらしい。


欲しいならあげるよと引き気味に言われた。

私はそんなこと気にしない。

大喜びした。


食べきれない程のベリーがあるならジャムだろ。

と他アイテムを買い集めた。


私が無駄に喜んだのには理由がある。

後顧の憂いを思ったのだ。

実はかなり前から見て見ぬふりを続けてきたのだが、この国の平民食は基本「野菜スープとロールパン」一択なのだ。

おかずが出る事もあるけど、そのおかずもレパートリーが少ない。

コンビーフか魚肉ソーセージかペーストシリアルバーの三択であり、これは市販品だ。


痩せるわ。

しかしながらコレが日常らしい。

嫌なら外食するか、お抱えシェフを呼ぶしかないのが当然だと。

聞く人聞く人肯定されている。

領主の一人息子ですら、牢入りする前からあまり大差ない食生活だったと言うのだから間違いないだろう。

地下牢で頂いた食べ物は牢獄用の食事では無かったんだね、兵士君。

彼への好感度が上がるね。


こんな食べ物事情、実弟だったら発狂しているのではないだろうか。

私は彼に比べれば平気だが、これからもずっと三食コレだと流石に飽きる未来が見える。

ジャムくらいは欲しい。


もし、私が作ったモノに抵抗がないなら皆さんにお裾分けしても良いしね。

そんな思いから瓶も2、3個を購入している。

貰って貰えなくてもまぁ、使い道があるから大丈夫。


それはともかく。

私なりに考察してみたが、料理事情がこの有様なのにはこの世界なりの理屈があると思われる。


この世界において料理とは料理魔法または料理スキルによって作られるものであるのが常識なのだ。

それ故にそれ以外のものは安全性に不安を感じるものらしい。

勿論「その2つの能力所有者が各ご家庭に1人は必ず設置されています」なんて訳はなく市販品によって賄われるのだ。


別に料理魔法料理スキルが無いと料理が出来ない訳では無い。

一般人に料理の知識がまるで無いからできないのだ。

出来るとも思っていないのだろう。


各人が自分の能力に対する知識関心ばかりに囚われている。

それがこの事態を引き起こしている要因なのではないかと想定している。

おそらく、コレは料理に限らないのだろうな。


この世界の料理事情はまあ、いい。

能力持ちじゃないと飲食店などは開けないだろうが、開くつもりもない。

別に料理は上手いと言うほどでもない。

それに、個人で作って食べる分には好きに料理くらいして良かろう。


食材は普通に売っているのだから、困らない。

困るとしたらアレだ。

借りた部屋にキッチンがないと言う展開が普通にありそうだと言う事か。

部屋探しの時には「料理スキル持ちなんです!」と嘘をつこう、そうしよう。

そうじゃないとコンロなんて多分ついてない。

他にも私にとって無くてはならないものを想定しておかないと後から困りそうだ。


まぁ、いつから個人行動が許されるかはわからないが。


買い物が終わったら店には戻らず港を観に行った。

船も存在しないのに港ってどういう事だよ。

という好奇心には勝てなかったからだ。


そうしてたどり着いたのはコンクリート打ちっ放しの広場だった。

広場、広場である。

だだっ広いだけで特に何もない空間が、柵で囲われて侵入禁止になっている。


「み、港?」

「一体どんな所をイメージしてたんですか?」

「えっ?

うーむ、具体的には特に何もないんだけど、こう…」


目を閉じ右手をふわふわさせて考える。


「漁港と空港を足して二で割った感じ?」

「ギョコー?クーコ?」

「コンクリートの地面にもっと目印に線とか引いてあるとか?

人が沢山歩き回っていて、賑やかな雰囲気で、紐を縛るとこがあったりして?

うーむ、あ、乗り物!

そう乗り物が沢山置いてあるイメージだったよ。

見てこの殺風景な有様!」


手をばっと広げてアピールしてると、困ったような笑顔を向けられた。


「ここが賑やかなのは主に夜明け前から昼過ぎまでですよ。

海の向こうから荷物が届いて、こちらの荷物を向こうに持っていくんです」

「なるほど、それがお店に並ぶのね」

「王都に運ばれる分もありますよ。

明日おれたちが乗せてもらう荷車みたいに、ですね」

「国の中心部だものね。

色んなモノが集まっているんだろうな」


うんうん頷き、未だ見ぬ首都に想いを馳せる。

ここや村の建築様式を見るに、割りかし近代的な建物が多そうだ。

となると、ヨーロッパの街並みみたいな想像で合っているだろうか。

あら、素敵。



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