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無能賢者と魔法と剣  作者: 秋空春風
第2章 賢者と召喚
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魔法陣


正に魔方陣然として並ぶ品々。

胸の翻訳機をしてもーー看板などの文字は読めたーー何が書いてあるのか全く読めない。

分からないなりに言語における規則性のような物を感じた。

主語、述語、修飾語って感じ。

英語や中国語などの文法と同じだ。


「ん、私が召喚された魔法陣とは種類が異なるのですね?」

「よく気づいたねぇ。

アレも魔法陣ではあるんだが、アレは特殊さね。

召喚士どもの技術の粋が集められてるんだよ」

「ふむ」


地球で言うところの電卓とパソコンみたいな違いか?

両方機械、でも技術が違いすぎる、みたいな?


「慣れてたって書けやしないよ。

あんたはこっちの基礎からね」

「まずは簡単で汎用性の高いものを習得したいですね」

「ふふふ、1日ちょっとでそこまでいけるかねぇ?」


私達が乗せてもらう荷車の出立は明日の夕方だから、その事を言っているのだろう。


「頑張ります!」

「まぁね、焦らんでもええさ。

間に合わなかったらまたここに来ればええんじゃけぇなぁ」


ふふふと息を漏らすように笑った。


そこから始まった魔法陣訓練は割と楽しかった。


まず、専用の布地にチョークで下書きをする。

この布は魔力をあまり通さない代物で材料は謎。

チョークは普通に石灰製だ。


その上に清書する。

特殊なインクを布に乗せるように肉厚な線を書いていくーー道路の白線みたいな感じでーーのだが、このペンが面白い。


インク瓶とペンがセットになっており、それぞれにビッシリ魔法陣が描かれている。

瓶の蓋とペンの背には魔石がはまっており、コレが動力源だ。


使い方は瓶にインクを入れて、ペンのボタンを押す。

するとペン先からインクが出るのだ。

出ると言ってもマジックインキのように染み出てくるのではなく、ペン先で球状になって現れる。

しかもその球は宙に浮いている。

原理はワープ魔法に因るものらしい。

魔法ってすげー。この一言に尽きる。


清書が終わったらしっかりと乾燥させ、固着魔法をかける。


ここで魔法陣の出来を確認する。

魔法陣に間違いがないか。

布にインクがくっついて取れないか。

魔法陣に余計な魔力がこもっていないか。

何か不備はないか。

以上である。


問題なければ陣の中心に銅板を縫い付ける。

何故銅板なのかというと、魔力を最も通す金属が銅なのだそうだ。


銅板の上には空の魔石を専用の接着剤でくっ付ける。

"空の"と言うのが重要で、魔力を補填されている魔石を誤って付けてしまうとその場で魔法が暴発するのだという。

しかも未完成な魔法陣の暴発なので、ただ魔法が発動する訳ではなく危険らしい。


接着剤が乾いたら、魔法陣全体に魔法陣用補強魔法ーー耐水耐光耐摩擦の魔法ーーをかける。


魔石に定められた種類の魔力を供給すると完成。


以上が大まかな流れだ。

複雑な魔法陣になると作業工程も複雑になるとか。


因みに工程途中の固着魔法と補強魔法はそれぞれ別で魔法陣を作っておいてそれでかける。

「予め作っておいたのがこちらです」ということだ。


この作業のポイントは書いている最中、極力魔力を抑えることである。

魔力を通さない手袋をして作業するのだが、それだけでは足りない。

身体や吐息などにも気をつけて作業する事が望まれる。

少しでも陣に魔力が残っていると魔法陣の稼働率が下がるからだ。


そのため私は最適役だ。

手袋なんて無くてもいつだって無能なのだから。

逆に蒼龍はやばい。

普通にしてても魔力ダダ漏れなのである。

今回のチャレンジで、集中してると更にそれが加速するという事を発見した。


何事にも向き不向きがあるよね。


練習用の布に2人して練習中。

模写する段階まではなかなか上手く出来るようになってきた私達。


しょぼくれている様子を眺めて思った。

ん、ちょっと待てよ。と。


「ソウ君、ちょっとそれ貸して」

「いいですよ?」


婆ちゃんにダメ出し食らって帰ってきた蒼龍から彼作の魔法陣を受け取る。

テーブルに置いてしばらく手を翳してみる。


「婆ちゃん、こうすると魔力消えない?」

「なんだぁ?」


少し離れたところで作業していた婆ちゃんは私の手元を少しの間見つめた。


「ああ?

何で無くなっていってるんだぁ?」

「お、やっぱり魔力無くなっていってる?

コレは活用出来るのでは?」


蒼龍が書いて私がフラットにすれば陣としてモノになるのでは?


「書いてる最中に発動したらいかんでしょうよ。

やる事は変わらんさね。

いいから続けなさいな」

「んー、だめかぁ。

綺麗に書けてるから勿体無いな」

「ありがとうございます。

もっと練習します」


少し嬉しそうに私から受け取って、流しに布を洗いに行く。

このインクは水洗いで取れるのだ。

それを保護する為の2つの保護魔法なのだろう。


練習し放題だな。

練習用のインクは本番用のインクよりも安価だが、水洗いで取れるのは同じだ。

書いてすぐなら綺麗に消えるが、長年使っていた魔法陣を洗浄すると薄っすら跡が残ったりする。

それを利用して、魔法陣の修復も可能らしい。

まるっと洗って消してから作業するので、修復ってかほぼ書き直しだけど。

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