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無能賢者と魔法と剣  作者: 秋空春風
第7章 勇者と饗宴
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捜索


ミックのオススメスポットを大方回り終えていた俺たちは昼食後は姉を探してみることにした。

とは言っても当てなどあるはずもない。

実質はあちこち物見しているようなものである。


…まあ、そうはいうものの。

約3名ほど、やけにやる気に満ちている人物がいるのだが。


俺は拳を握りしめて意欲を燃やす面々に緩い視線を送った。


「よっし!黒髪美人を探せばいいんだな!」

「いやだから…」

「そうです!

今日は髪を左の後ろで緩く三つ編みにしてます。

白っぽいワンピースに青っぽい上着を着ていてとっても素敵なんです!」

「な、なんだって!?

ゆるふわヘアーにワンピースの美女!?

それは是非とも姿を拝まなくては!」

「はい!お姉様はとっても可愛らしい方なので拝む価値ありですよ!」

「おおー!燃えてきた!」

「……もう勝手にしてくれ」


無駄に盛り上がる面々を遠巻きに、渋面で腕を組む。

微妙な顔になっている俺の横でルネが口元を隠してクスクスと笑う。

楽しそうで何よりだ。


「はあ」と溜め息を吐いてから蒼龍の方に向き直った。


「どこを探したとか、探してないとかあるか?

まあ、あっちも移動してるだろうけどな」

「えっと、南の方で逸れたので昼前まではそちらを中心に探していました」

「あーっ!なるほどなー!」


ミックが「あちゃー」という顔で言う。


「その時間で南の方って言ったらイベントやってたろ?」

「はい…」

「そりゃーもー混んでただろー。

あんなんじゃ簡単に見失っちゃうよなー」

「本当に…」


ミックが大笑いしながら蒼龍の落とした肩を叩く。

その余りの勢いに、側から見ているフレイアが眼を白黒させている。


「顔見知りのとこでも行って目撃情報でも聞くか」

「そうですね」

「フレイアと蒼龍は姉とよく街に来るだろ?

心当たりはあるか?」


俺の問いに、フレイアは下唇に人差し指を置いて考えた。


「顔見知り…。

でしたら一番は商店街の方ですかね。

リリさんの「クェンティンさんのところですね」


眉間に皺を寄せて蒼龍がフレイアに被せるように即答した。


珍しい蒼龍の反応に刮目しつつも、聞き覚えのある名前に反応する。


「クェンティンっていうと、薬屋さんのことか」


リリという名の人物については心当たりがないが、例の不健康そうな薬屋の名前は一応聞いていて覚えている。

何故一番世話になっている姉より先に俺が彼の名前を覚えるに至っているのかは謎だ。


「彼の店の辺り…。

確かトーマスさんとこの商会の側の商店街だったか」

「あ、はい。

クエンテンさんは目立つのがお嫌いなので今日はお店をやってないかもしれません。

でもお隣のリリさんなら「クェンティンさんのとこに行きましょうね」

「ふぁ、え?は、はい」

「…蒼、リリさんとやらが嫌いなのか?」

「嫌いではないですけど…」


口を尖らせて拗ねたようにそっぽを向いてしまう。

フレイアが苦笑する。


「リリさんはクエンテンさんのお隣にあるお店の娘さんで、お花屋さんをしている方なんですよ。

とっても綺麗な人なんですけど、ちょっと悪戯っ子というか…」

「ちょっとじゃありません!」

「ええ、まあそうですね…。

それでですね、他人を揶揄うのがお好きな方なんです。

それで蒼龍くんも何度か犠牲に…」

「な、なってません!

犠牲にってなんですか!」

「ああ、まあ、何となく分かった。

とりあえず行ってみるか」

「…くっ、致し方ないですね。

これも師匠のためです」

「そんなに嫌か」


悔しげな蒼龍を興味深く眺める。


蒼龍は普段周囲や姉を立てるばかりであまり自己主張をしない。

それなのにこんなに反抗するなんて珍しい。

余程苦手なんだろう。


何となく微笑ましく思いながら、道中雑談に興じる。


現在目的地として定めているミズガルド商会本社横の商店街は、俺以外は行ったことがあるそうだ。

とはいえ現地に行ったことが無くとも、王都住民であればその存在だけなら誰でも知ってる一角なのだとか。

商店街が有名というよりは商会本社の知名度が高いことが理由みたいだ。


因みに、商店街で購入出来なかった必要物資を商会で取り寄せ注文するのがよくある客の行動パターンらしい。

社長のトーマスが姉と話しているのを見るとーー言い方は悪いが大したこと無いように感じるが、ミズガルド商会はやはり大企業なんだなぁと感心する。


そういえば前に聞いた時の姉から彼に対しての評価は高かった。


曰く。

「トーマスさんは確かに色々と残念だけど、それも含めて戦術にしているきらいがある。

あの人、単純な話術に限らず商売関連はマジ強いぞ。

私なんて足元にも及ばないだろうな。

あの人のこと信じ過ぎると後から傷つくだろうから、そのつもりでいろよ」

だそうだ。


多少商業知識のある姉で敵わないなら俺はもう全然無理だろう。

というか敵対する気もないし。

「そもそもあの人味方じゃないの?」と言ったら、「商売人にとって味方ってのは利用しないこととイコールじゃないぞ」と返された。

続けて「だから気をつけろよ」と言われたのだが、俺にどうしろというのか。


あの言い方からして姉も彼を味方だと認識はしているみたいである。

それなのに信用出来ないと言うのはどう言うことなのかがまず分からない。

とりあえず半信半疑でいればいいのだろうか?

…なんか違う気がするがーーもしそうなら姉ははっきりそう言うだろうしーー、それ以外の想像が出来ないので暫定的にこういう認識をしている。

まあ、どうしたらいいのか分からない以上、今まで通りに対応するが。


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