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無能賢者と魔法と剣  作者: 秋空春風
第2章 賢者と召喚
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川下り


河原には四人の人影と一つの透けた円柱が立っていた。


頭の中で誰かが言う。


今日の三分クッキング!


気分は料理番組である。

続いて軽快なクラシック音楽が流れる。

私はその幻聴に従うままに鼻歌を歌う。

三人は困惑顔である。

気にしない。


「よし、つくるよ」


本日造るのはこちら。

バリアのゴムボート風です。

材料はこちら。


・硬質バリア(直径約2m×長さ1m)――1つ

・硬質バリア(直径約2m×長さ3m)――1つ

・軟質バリア(直径1m×長さ2m)――4つ

・軟質バリア(直径1m×長さ3.5m)――2つ


大きさは大体でおーけーですよ。


まずは硬質バリアを処理しましょう。

事前に作っておいた3mの方を半分に切ります。

切り口を上に向けてぴったりくっつけます。

2つの底面の接点が中点となるように1mの方の硬質バリアをくっつけて発生させます。

円柱と円柱が重なったところ、1mの方の上面はそぎ落とします。

この時角を丸めてておきます。

これを船部品Aとします。


次は軟質バリアです。

2mの方を左右の長さを揃えてL字型に重ねてくっつけます。

船部品Aの前と後ろにL字型のをくっつけます。

真っ直ぐにするコツはロープをピンとまっすぐ張ったものを地面に置いて、その線を目印とすることです。

各部品中心が、全て線を通るようにしましょう。

線に平行になるよう、横に残りの2本をくっつけます。


舵取り用に後ろの方は、硬質バリアをもう少し削っておこうかな。


目印にしていた縄をこれまたバリアで船の枠部にくっつけたら


「完成!」


わーいと拍手すると、手伝っていた二人と功労者の一人も一緒に拍手してくれた。

私の秘策は上手いこと作用したらしく、かなり強度の高いボートが完成した。

下手すると地球のラフティング用ボートより強度が有るかも知れない。


後は船の舵を取るためのオール。

これは錬金魔法で細い鉄パイプを作りその両端に、様子を見ながら斜めにバリアを張って手刀で形を整えればカヌースタイルのオール完成。

念のためもう一種類。

片側にだけ羽がついているついているタイプのボートスタイルのオールも2本作っておく。


用意するものを一頻り造りきり、大きく伸びをして立ち上がる。

既に脱出してから二時‬間近くたっている。


「だいぶのんびりしちゃったし。

そろそろ出発しますか」


手にはトーマスさんに借りた手袋がはめられており、その手にはカヌータイプのオールを握っている。

素肌が船に触れてしまうと穴が開いてしまうからな、気を付けないと。

私は基本かじ取りをする。


「そうですね」


ボートスタイルオールを持った蒼龍が言う。

水魔法で船の安定と推進力の補助を担当。


「あの、流れ早くないですか…?」


少し怯えているトーマスが抱えているのは魔法地図だ。

危険を事前に察知して報告、陸への回避を勧告する係だ。


「うん」


少し眠そうなのはミーシャである。

大人でも寝ている時間なのだ、彼女には辛かろう。

早く安置ににげなくてはな。


重りでしかない残りの鉄扉は捨て置いて、船を持って川縁へ。

前から順に、蒼龍、トーマス、ミーシャ、私の順で乗る。

本来なら川へ押しながら乗るのだが、今回は全員乗ってから水魔法で押し出してもらう。


流れに乗ってすぐなかなかの速さで進み始める。

トーマスの言にもあったように、川の流れが速いのである。

私は急いでオールを操り船体を真っ直ぐに。


バランスを保つため全員が座る中、私は船首で立ちオールを構える。

川の流れを読むため神経を研ぎ澄ます。

私の役割は船を進めることじゃない。

岩や浅瀬をよけ、波や障害物からくる衝撃を最小限にすること。

だからオールは漕ぐより、川に差し込み圧に耐えることのほうが多い。


疲労物質が過剰なほど全身にたまっていくのがわかる。

明日は筋肉痛。

間違いない。


予想していたよりスピードが出ているけど、日本の急流達に比べれば全然大したことはない。

あっちじゃ勢いよくバーンなったら全員ドーン振り落とされるのが当たり前なとこあるからな。

ここは危険と速さの割合が程々な感じでいいんじゃないかな。


トーマスは悲鳴上げて縄にしがみついてるけど。


それに比べて子供二人は割と平気そうだ。

ミーシャは楽しそうに笑っているし、蒼龍は特にリアクションもなく前を見つめている。

頑張れ最年長。

下流に行くにつれ流れは穏やかになっていくから。


年少組が平気なら、まあ良かろう。

速度は落とさずそのまま水面を滑り続ける。


流れてきたことが信じられないような大岩をよけるにつれ障害物は減ってゆく。

岩々を避けて荒れる水飛沫をくぐりぬける度に船が上下しなくなる。


そろそろオールの操作はいらないかな。


疲れが誤魔化しきれないほど溜まったあたりでオールを船のヘリに置く。

一息つく。

静かに目を閉じ耳を澄ます。

誰かさんの悲鳴は相当前に止んでいるから、聞こえてくるのは自然の音だけだ。

川のせせらぎ、野鳥の囀り、木々のざわめき。

さらさら、ぴょーぴょー、ざわざわ、ごー。

…ごー?

ごーって何の音だ?

分からない。

いや、聞いたことがある。

これは、


「おい、ちょっとまて、まさか。

トーマスさん」


嫌な予感に地図担当を見る。


…。


「気ぃ失ってんじゃねぇぇぇぇええ!」


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