ハックとクリスタ
2人の子供とのやり取りです。
何故魔族であるアレクが、清浄なる空気にも耐えられるのかが判明します!
「アレクよ、煩くてかなわぬのでワシはもう行くぞ。お主と僅かな時間しか話せていないのは心残りではあるが、ワシは子供は苦手なのでな」
セレスはそう言うと、アレクの返事も待たずに大きく羽ばたいた。一瞬で空に舞い上がる。
「そっかー。まぁ仕方ないね。また近々会いに来るよー!やっと飛べる様になったからって、無理しちゃ駄目だからねー!」
アレクは上空のセレスに向かって手を振りながら叫んだ。
「ではな!」
そう言うとセレスは更に上空へと舞い上がり、あっと言う間に小さくなっていった。
「お兄ちゃん、良かったの?」
もう、豆粒程の大きさにしか見えないセレスを尚も見つめるアレクに少女は言った。
「ん?大丈夫だよー。いつでも遊びに来られるからねー」
アレクは少女に視線を移し、微笑みながらそう言った。
「あ、そう言えばさ、君たち名前は何て言うの?まだ聞いてなかったよね」
思い出したかの様にアレクは言った。
「私はクリスタです」
礼儀正しく少女が答える。
「オレはハック」
ぶっきらぼうに少年は答えた。
「こら!ハックちゃんと敬語を使いなさいよ!いつもお姉ちゃんからも言われてるでしょう?」
「えーっ。別にいいじゃん。そんなの気にしなくて」
礼儀正しいクリスタに対して、ハックは少々やんちゃな子供のようだ。
2人のやり取りを見て、アレクは何か微笑ましいものを感じていた。
「まぁまぁクリスタ。僕は別に気にしないよー」
まだプリプリとハックに対して怒っているクリスタにアレクは声をかけた。
「あっ!わかりました!すみません!」
クリスタはアレクの存在などすっかりと忘れていたかの様に、振り向いてそう答えた。
「あ、そうそう僕はアレク=カクタス=オロウベルデって言うんだー。長ったらしいからアレクでいいよー」
「アレク・・・さんですか?もしかして、アレキサンドライトが守護石なんですか?!」
驚いた様にクリスタは言う。
「へー。良く知ってるねー!そうだよー。僕の守護石はアレキサンドライト。持つ者を成功へと導く皇帝の石だよ」
そう言うアレクは少し得意げだ。
「クリスタ、何だよそのアレキ何とかって?」
驚いて興奮しているクリスタを不思議そうに見ながらハックはそう言った。
「知らないの?!超、超超超超超激レアストーンだよ!持つ者は世界を治めると言われるくらいの力を持った石なの!」
クリスタは目を輝かせてハックにそう言った。
「ふぅん。流石はストーンマニア、詳しいね!」
ハックは感心した様にそう言った。
「えっ?でも・・・」
何かを思い出した様にクリスタは呟く。急に表情が曇る。
「アレキサンドライト・・・現世で持っているのは・・・魔王だけだったはず」
困惑の表情で、クリスタはアレクを見つめた。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんって魔族なのー?」
固まるクリスタとは打って変わって、ハックは無邪気そのものである。
恐る様子もなくアレクにそう訊ねた。
「あはははははははっ!」
ハックの様子にアレクは可笑しそうに声を上げた。
「うん。そうだよー。僕は魔族さ。まぁ正確に言うと、半人半魔ではあるけれど」
抑えきれない笑いをどうにか抑えながら、涙目でアレクは答える。
「へー!すげーな!魔族なんて初めて見たよ!」
今度はハックが目をキラキラとさせながらアレクを見つめた。
セレスの時といい、どうやら彼は人間以外の異形種に興味があるようだ。
「・・・なんで。なんで魔族ならこの清浄な空気に耐えられるの?!」
振り絞る様にクリスタは言った。その瞳には明らかに恐れの色があった。
「クリスタ、別に怖がらなくてもいいよ。別に人をどうこうして楽しむ趣味はないからね。むしろ人とは仲良くしたいと思っているくらいだ。って・・・話が逸れたね。僕がこの空気に耐えられるのは元々の素質もあるけれど、主に守護石のお陰だよ。アレキサンドライトは二面性があるからね。対になる属性であっても平気にしちゃうのさ」
クリスタの表情の変化に少しの寂しさを覚えながら、アレクは答えた。
魔族であるアレクの属性では「闇」である。「光」の属性である癒しや清浄な空気は、本来魔族にとっては劇薬でしかない。それを平気にさせるのは、一重にアレキサンドライトの守護の力である。
「へぇー!何か分からないけどすっげーな!」
相変わらずハックは目を輝かせてアレクを見つめている。
「うん。僕も何故そうなるのかは良く分からないんだけど、すっげーんだよ」
ハックに合わせてアレクも笑いながらそう言った。
次回は場面が変わって、王都に帰還したシルバーの話になります。
アレクは・・・出てくる・・・のかな?
作者本人にもまだ分かりません(笑)