査問会 前編
アレク様、、、、
どうなってしまうんだろう、、、
「それでは査問会を開廷する。議長は筆頭貴族である、リオン=セプタリアン=ブラッドが務める。アレク様、中央へお進み下さい」
正面の一段高い位置には、ブラッド卿、その両脇にはマリン嬢とルカートが控え、背後には傍聴人とも言える人々が控えていた。
ふふ。これじゃあまるで、裁判にでもかけられる被告人だな。もっともブラッド卿の狙いはそれに違いないのだろうけど。
そんな事を考えながら、アレクは中央へと進み出た。
その表情からは、アレクの感情は読み取ることは出来ない。
「アレク様、今回の件は如何にアレク様と言えど、その権力の範疇を超えているかと存じます。軍隊の私的流用。しかも、ご自身で不可侵の命令を出していらっしゃるにも関わらずです」
ブラッド卿以外に声を発する者は誰もおらず、シンッ静まり返った部屋にブラッド卿の声が朗々と響く。
「アレク様は如何なるお考えを持って将軍シーンにあの様な命令をお下しになったのか。その意図をお聞かせ願いたい」
神妙な表情を浮かべ、ブラッド卿はアレクにそう問いかけた。
そんなの君が仕組んだ事じゃないかと言い出したくなるのをグッと堪えて、アレクは口を開いた。
「そうだね。君の言う通りかもしれない。しかし、敢えて反論させ貰うとすれば、軍隊の利用はあくまでも威嚇であって、戦闘が目的じゃないよ。だから、僕の不可侵の命令何も犯しちゃいない事になる。それに、シルバーを引っ張り出すには、あの方法しか無かったのさ。何せ僕はシルバーと連絡を取る事なんて出来ないからね。1番確実な方法がアレだったんだよ」
両手を上げて、頭を振りながらあくまでも仕方なかったのだと言う様にアレクはそう言った。
「まぁ、確かにシルバーに僕が固執するばかりに軍隊の私的流用と言われると、若干否めない部分はあるかもだけど、調略の一環でもある訳だから、そこの所は理解して欲しいかな。それが例え人間であっても、使える人物を欲するのは魔王として間違っているとも思わないしね」
まっすぐにブラッド卿を見据えながらアレクはそう言った。
「ほほう。では、軍隊の私的流用についてはお認めになると」
アレクの言葉尻を捉え、ブラッド卿はそう言った。
「そうだね。多少は私的流用と捉えられても仕方な部分はあったかなと反省はしているよ」
アレクはあくまでも平静に、そう答えた。
「分かりました。それについては今後は他の七つの大罪にもきちんとご相談頂く事をお願いして、不問に致しましょう」
アレクの予想に反して、ブラッド卿はアッサリ引き下がった。
「良かった。分かって貰えて嬉しいよ」
アレクは内心では驚きながらも、平静を装いつつそう言った。
ブラッド卿がきっとここで引き下がる訳がない、、、、、と思う。




