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出発

今回からまた勇者サイドに戻ります。

魔国が俄かに騒がしくなってきた頃、シエロ達は当初の予定通りにバタフライ一座と共に帝国へと旅立とうとしていた。

あの騒動の際におかしくなってしまった人々は、今は聖アイリス市国の大聖堂へと集められ、深い眠りについている。


「勇者シエロよ、どうぞお気をつけて!吉報をお待ちしていますね」

バリバリのアイドル顔負けのキラッキラの笑顔を向けて、レムリアはそう言った。

太陽さえも目が眩んでしまうような笑顔にシエロ達は少し戸惑いながらも頭を下げる。

「何かあればすぐにコレで連絡を下さい。力になれる事は致しますので」

そう言って、薄い透明な板の様な物をクロムはシエロに差し出した。

「これは・・・?」

レムリアが開発したと言っていた魔法具を前に、シエロは戸惑いの表情を浮かべた。

きっと、高額な物に違いない。そんな物壊しでもしたら・・・と内心ビビりまくっているのだ。

「シエロ、それは通信機ですわ!」

戸惑うシエロにそう声をかけたのは、エリスである。

シエロがその板を何に使うか分からずに戸惑っているのだと、勝手に勘違いしたのだ。

「音声による通信の他、画像や動画等を撮って送る事も可能です。記録媒体としても優秀な道具ですので、どうぞお役立てください♪」

レムリアにまでそう言われては、シエロ達も断る理由がない。

シエロは感謝の言葉を述べると、クロムからその魔法具を受け取った。

「そう言えば前にシエロ猊下が使ってたところを見たっすね!」

ユディが珍しそうにその魔法具を覗き込みながらそう言う。

「そう言われるとそうだなぁ、綺麗な鈴の音が鳴って通信が入ったのを知らせてた気がするぜ」

フリントもまた、興味深そうに魔法具を見つめてそう言った。

「さぁ、挨拶もお済みの様ですし、そろそろ出発致しますわぁっ 」

そう言って声をかけてきたのは、妖艶な笑みを浮かべるマダム バタフライであった。

人には分からない程度の少しの緊張の表情を一瞬浮かべたシエロだが、バタフライの言葉に頷くと、エリスとユディと供に、キャラバンへと乗り込んだ。

フリントは周囲の警戒も兼ねて、騎乗での同行をする事になっている。

「それでは、出発しよう」

シエロの号令により、キャラバンはゆっくりと動き出した。


******************

「無事に帝国までたどり着けると良いですね」

レムリアがクロムに声をかける。

「皆さんかなりの実力の持ち主みたいですので、恐らくご心配には及ばないとは思いますが・・・」

少しだけ心配そうにクロムは応える。

「そうですね。それでは皆さんの無事を私は女神イリスに祈りましょう」

麗しい笑顔を浮かべながら、レムリアはそう言った。


そう・・・皆さんには無事に帝国に着いて頂かないと困るんですよ。

鍵を見つける為にもね・・・。

同時進行感を出す為に、あっちこっちに話が飛んですみません。

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