魔国動乱
先週より、日曜日更新となっております。
どうぞ宜しくお願い致します。
将軍シーンが魔国への帰路を急いでいた頃、アレクは休む間も無く様々な対応に追われていた。
いつもはアレクとアゾゼオと数名の従者しかいないフェネクス城もこの日ばかりは様々な人に溢れ、俄かに活気付いた様にも感じられる。
しかしそれは、アレクが望んでいるものでは全くなかった。
「アレク様!将軍シーンが軍を動かしたとはどう言う事ですか!」
「ついに!侵攻開始ですかぃ!待ってましたよ!!!!!」
「何故、我々には進軍命令が下りないのですか!」
「・・・・・・・困りますねぇ。一同に一言も相談も無しにいきなり軍を動かされては・・・」
「あはははははは!なぁーんか、騒がしくなって楽しいね!アレク様!」
「・・・・・・・・」
「アレク様ー!オレにも命令して下さいよー!」
皆、思い思いに口を開く。それがもう、半日は続いていいる。
「だーかあーらーーー!将軍シーンは侵攻しに行った訳じゃないのっ!詳しい事は機密事項だから話せ無いって言ってるでしょーーー!」
大広間にアレクの声が木霊する。それでも一同の騒めきは治らない。
「だったら将軍シーンが戻ってくるのを待ってます!将軍シーンから直接話を聞いてみないと!」
「そうだ!そうだー!抜け駆けは許されないぞ!!!!」
「・・・・・確かに彼の言い分も聞いてみるべきでしょうねぇ」
「あはははははは!」
「・・・・・・・」
アレクは頭を抱えながらはぁーっと深い溜息をついた。
「・・・アレク様、大丈夫ですの?」
珍しく真面目な顔をして、ローザが訊ねる。
「・・・うーん。残念ながらあんまり大丈夫とは言えないようだねぇ」
疲れ切った顔でアレクが答える。
「ローザ、悪いけどアウインにコレを渡してきて貰えるかい?僕はここから動くのは難しそうだから」
そう言ってアレクは、片手に収まるくらいの大きさの、小さな小鳥の銀細工をローザへと手渡した。
「コレを将軍シーンに急ぎ届けるようにと」
ローザの耳元で小声でアレクはそう言った。
ローザは頷くと、それを受け取ってアウインの元へと急いだ。
ローザ自身、アレクから詳しい話を聞いた訳では無かった。
しかし、アレクが望んでこうなった訳では無い事は充分に理解をしていた。
そして、自分を信用してアウインへの言付けを託された事を嬉しく感じていた。
「アウイン!!」
人気の無い裏庭で、ローザはアウインを呼んだ。
すると、数秒もしないうちに物陰からスッとアウインが現れた。
「ローザ、どうかしましたか?」
覆面で顔半分が覆われている為、目元しか分からないが、どこか訝し気な表情である。
昔からアレクにまとわりついているローザを、あまり良くは思ってはいない様だ。
それをローザも知っているので、ローザもローザで何も言わない。
「コレ、アレク様が将軍シーンに届けて欲しいって。大至急で」
そう言って、銀の小鳥をアウインへと渡す。
「分かりました。では!」
アウインがそう言った次の瞬間には、もうそこに彼の姿を見つける事は出来なかった。
土曜日から日曜日に移って、まだ感覚的にも慣れない方もいるかもですが、どうぞ宜しくお願い致します。




