陰謀
先週の続きですー!
「あはは!ボクの顔を知っている人がいるとは思わなかったよー!」
男は笑顔でそう応える。
「な、なぜ魔王がこんなところに?!」
青ざめたエリスが声を震わせながらそう言った。まさかこんな所に魔王が現れるとは微塵も思ってもみたなったのだ。エリスの動揺も当然の事と言える。
「ん?そりゃあ噂の勇者と遊びにきたに決まっているよー!」
エリスとは相反する様に、男は嬉しそうに両腕を広げてそう言った。
「まぁそんな事どーでも良いわさ。魔国にまで行く手間が省けたんだ。今この場でぶっ倒してしまおうぜ!」
いつの間にか大剣を構えてフリントが男に迫った。
ガキィィィンッ!
金属のぶつかり合う甲高い音が響く。
「あはは!怖い怖い!そんなにいきなり攻撃して来なくっても良いじゃないか!もう少し話くらいしようよ」
フリントの大剣を受け止めながら男は言う。
「それに、今ここで暴れると、関係ない人たちも巻きこんじゃう事になるけど良いの?」
男の言葉にハッとしてフリントは思わず大剣を引いた。
「あは。分かってくれたみたいで良かったよー」
短剣を鞘に収めながら男は言う。緊迫したシエロ達とは裏腹に余裕すら感じられる仕草である。
「・・・何が目的だ?」
シエロが男に訊ねる。
「うーん、目的と言うか、さっきも言った様に君たちと遊んであげようと思ってね。わざわざ結界の外に出てきたって訳さ」
おどけた様子で男は言う。
「・・・」
沈黙でそれに応えながら、シエロは考えていた。
遊ぶとは言っても額面通りではないはずだ。自分たちをいたぶりに来たに決まっている。
一体何をする気なのだ?!
表情にこそ全く出ないが、内心色々なネガティヴな事を考えまくって冷や汗タラタラのシエロである。
「んーっ。そうだねぇ。実はこれと言って何をするかは考えていなかったんだよねー。まぁフィーリングって感じ?あ、ただ、今眠ってる人たちには早く解毒剤を飲ませないとヤバイかもねー?」
男は考える様な素振りを見せながらそう言った。
「どう言う事だ?!」
少しだけ語気を強めてシエロが言う。
「あはは!知りたいかい?」
悪戯っ子の様に嬉しそうに男は言った。
「まぁ今回使ったのは1種の催淫剤なんだけどね、ちょっと改良が加えてあって早く解毒しないと皆んな淫魔化しちゃうんだよねーっ。だから早く解毒した方が良いよー?」
まるで新しいオモチャを自慢するかの様に男は言った。
「なんだと!?」
シエロは憎々し気に男を睨んだ。
「あははー!怖い怖い!そんなに睨まれてちゃ怖いから、ボクはこの辺りでお暇させて頂くよー!あ、そうだ!今回無事に皆んなを救う事が出来れば何かご褒美をあげるよ!だから勇者様、頑張ってねー!」
陽気に男はそう言うと、無詠唱でゲートを開いた。
「ま!待て!!」
シエロが男の腕を掴もうとするが既に遅く、男はゲートに吸い込まれていった。
「・・・っくそう」
悔しそうにシエロは虚空を見つめる。
「それよかシエロ、解毒ってのは簡単に出来るものなのかい?魔法とか魔法薬に関しては、俺は何にも分かんなくてよぅ」
坊主頭を掻きながらフリントが言う。
「・・・私も専門では無いので何とも言えないが、使われた薬の成分にもよると思う」
考える様にシエロが言う。
「・・・無駄だとは思いますが、解毒魔法をかけてみますわ。女神の祝福!・・・やはり効果は無いようです」
困り顔でエリスが言う。
「・・・とりあえず、クロム猊下にご相談してみますわ。猊下は神聖魔法の研究家でもありますから、何かご存知かもしれませんもの」
エリスは一同を見つめてそう言った。
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「あーぁ!もう!疲れましたわ!!」
不満顔の女性がそう言う。
「まぁ、そう仰いますな。上手く行ったようではありませんか」
男が女性を嗜める様にそう言った。
「・・・ま、まぁそれはそうですけれども。だけどもう、彼の方の真似なんて懲り懲りですわ!話し方を真似するだけで本当に大変なんですもの」
ソファに身体を投げ出して、ため息をつきながら女性は言う。
「それは確かに。しかし貴女のお陰でこれからが楽しみになってきましたよ」
男は悪い笑顔を浮かべながらそう言った。
「まぁ、それはそうですわね・・・」
女性の機嫌も少しはなおった様子だ。
「ふふふ。・・・本当にこれからが楽しみですよ・・・アレク様」
来週はどの場面から書くか少し迷い中です。




