リオン=セプタリアン=ブラッド
アレク達が警戒する、ブラッド卿とは果たしてどの様な人物なのか?!
今週それが明らかとなります!
白髪の紳士。そう言った表現が似合う男が、アレクの眼前に現れた。この男こそ、リオン=セプタリアン=ブラッドその人である。柔和な笑みを浮かべてはいるが、瞳の奥は全く笑ってなどいない。
「うん。ブラッド卿、久しぶりだね。で、前にも言ったと思うけど、僕の事はアレクって呼んでよね。その長ったらしい名前で呼ばれるのは嫌なんだ」
珍しくアレクが笑みも浮かべず、無表情にそう言った。
「これはこれは失礼致しました、アレキサンダー様。・・・おっと、ついつい」
アレクとは対照的にブラッド卿は笑顔で応える。
「・・・わざとらしいっ」
アレクの陰からブラッド卿を睨みながら、ローザがボソッと呟いた。
「おや、どなたかと思えばレディミスティカでしたか。相変わらずアレク様につきまとっていらっしゃるのですね。身の程もわきまえず、お可哀想に」
ニッコリと良い笑顔を浮かべながら、ブラッド卿はローザに向かってそう言った。
「別に貴方には関係の無い事でしょうっ?!」
ローザは眉を釣り上げてブラッド卿にくってかかる。
「関係ありますとも。アレク様の奥方になろうと言う事は、この魔国の女王にもなられると言う事。その尊ぶべき女王が穢れた淫魔風情では他の魔貴族も納得しますまい」
決して笑ってはいない笑顔を向けて、ブラッド卿はそう言う。
「・・・でもっ!「身の程を弁えよっ!!」
反論をしようとするローザに向かって、牙を剥き、真っ赤な瞳を向けてブラッド卿は怒鳴った。しかし直ぐに貼り付けた様な笑顔を浮かべる。
「これはこれはアレク様の御前で大変失礼致しました。しかし、アレク様におかれましても、この様な穢れた娘はさっさとご処分なさって、早く相応の奥方を娶られると良いのです。いつまでも独身でお優しいからこの様な娘がつけあがるのですよ?何なら我が血族より、選りすぐりの娘を献上致しましょうぞ」
アレクに微笑みを向けながらブラッド卿はそう言った。
「ブラッド卿、今日はそんな事を論じるために呼んだんじゃ無いんだけどな。それに僕はまだ妻を娶るつもり何てないよ。血統至上主義のヴァンパイアとは価値観も合いそうにも無いから、君の血族から妻を娶る事も無いんじゃないかな」
アレクは冷静にそう応える。
「それはそれは失礼致しました。まぁ気が変わられましたらいつでもお命じ下さい。して、今回の御用向きとは?」
大仰な仕草で礼を取ると、アレクを見つめてそう言った。
ブラッド卿に促され、アレクが先刻アゾゼオと話をしていた件を口にする。
「うん。君の領内で鮮血の雫石と、人魚の涙の産出量が増え続けている件だけど・・・」
するとブラッド卿はアレクの言葉を遮って、芝居掛かった口調で驚いた様にこう言った。
「おや!そんな事でしたか!私めはてっきり、王国に於いて勇者が任命されたと言う件かと思っておりましたのに」
その言葉を聞いて、一同に緊張が走る。勇者を立てる、それは王国から魔国に対しての宣戦布告にも等しい重要事項である。そんな情報はまだこの場にいる誰も知り得ない。
「・・・ブラッド卿、それはどう言う事?」
少しの動揺を感じつつ、勤めて冷静を装ってアレクは訪ねた。
「おや、そのご様子でしたら、まだご存知ではありませんでしたか?」
やれやれとでも言う様にブラッド卿はため息をつく。
「先刻・・・そうですね。ちょうどアゾゼオ様より召集のご連絡が来る少し前でしょうか。私が放っております蝙蝠から勇者が任命されたとの連絡が入りましてね。その後すぐの召集でしたものですから、てっきりその件かと思い、さすがはアレク様と感心していたところだったのですよ?それが領内のたかが資源の産出量の事だったとは・・・ふふっ。いや、これは失礼。いけませんな。歳を取るとついつい本音でしか話せなくなります」
如何にも可笑しいと言った様に、笑いを堪えながらブラッド卿が言った。
「・・・残念ながら、その話はまだ僕の耳には入っていないよ。ブラッド卿、詳しく話を聞かせて貰えるかい?」
本日ブラッド卿と顔を合わせて、初めての笑顔を浮かべてアレクはそう言った。
「御意にございますとも」
恭しく礼を取り、ブラッド卿もまた笑顔を浮かべてそう言った。
何気にこのブラッド卿も描きやすい人物です。
最初のプロットでは名前だけしか決まっていなかった(しかも今とは少し違う)のですが、書き進めていくうちに勝手に設定が決まっていき、今の様な人物となっていきました(笑)




