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第四試合 後編

第四試合の続きです。

今回で勝敗を決します。

「シエロさん、やりますね。ここまでやられたのは久しぶりです。正直、魔力やスピードで負けるとは思っていませんでした」

肩で大きく息をしながらも、シルバーは微笑みを浮かべてそう言った。

「いえ・・・そんな事は」

謙遜を口にするシエロだが、相変わらずその表情から彼が何を考えているのかは読み取る事は出来ない。

「出し惜しみをしている余裕は無いようです」

自嘲気味にシルバーが言う。

「神聖なる生命の守護石よ!我を癒し我に力を与えよっ!」

シルバーが銀色のオーラに包まれると、流血が止まり、先ほどまで荒かった呼吸も通常レベルまで収まっていた。しかし、傷を完全に塞ぐ事は出来ないようで、あちらこちらに切り傷の後は残っている。

「古より一族に伝わりし賢者の石よ!我の力になり給えっ!」

シルバーはシルバールチルだけではなく、一族に伝わる守護石、ポージーストーンの力も解放した。この石は賢者の石と呼ばれ、調和とバランスを生む石と言われている。

シルバー自身の守護石のシルバールチルと同じく、生命力や直感力も向上させてくれる。

「さぁ、存分に戦いましょう!!」

回復と強化を終えたシルバーは嬉しそうにシエロに向かってそう言った。


「シルバー様、貴方はお強い。私も守護石を使わせて頂きましょう。遥か彼方より来たりし守護石よ!我に力を与えよっ!!」

シエロは守護石の力を解放すると、一気にシルバーとの距離を詰め、上段から斬りかかった。シルバーはそれを上手くいなし、はね除ける。そして、脇が空いた所を一閃、斬り返した。シルバーの剣が、シエロの脇腹をかすめる。しかし、決め手にはならない。

一旦シエロはシルバーとの距離を取り、こう叫んだ。

彼方より飛来し厄災 (メテオストーム)っ!!」

シルバーに向かって炎を纏った巨石がいくつも降り注ぐ。

神なる雷の狂乱(ライトニングバースト)っ!!」

シルバーは負けずに雷撃魔法を使って巨石を破壊しつつ、シエロに迫る。

横一閃にシエロを切り抜く。渾身の一撃が入ったかと思われたが、その姿はボロボロと地面へと崩れさった。

「ゴーレムかっ!!」

シルバーは驚愕の表情を見せ、素早く周囲を見渡すが、シエロの姿はどこにも見つからない。シルバーが巨石に気を取られていた隙に、シエロはゴーレムを錬成し、魔法によって姿を隠した様だ。

シルバーは辺りを警戒しながら、剣を鞘に収め、柄に手をかけると眼を閉じた。周囲の音に意識を集中させる為である。

シュッと空気を切り裂く音が聞こえる。すかさず身を躱し、抜き打ちに剣を走らせる。

ガキンッと重い音が響き、シエロがシルバーの剣を受け止めた事が分かった。しかし打ち合いにはならず、また沈黙の時が流れる。

幾度かの同じ様な攻防が繰り返された後に、先に勝負を仕掛けたのはシルバーの方であった。


「広範囲究極雷撃魔法!古より伝わる巨大な雷(フラックスチューブ)っ!!」

目を開き、剣を高く掲げると、シルバーはそう叫んだ。

突如、練兵場に雷雲が立ち込める。雲の中では青白い雷がバリバリと弾けている。

「・・・!!流石にこれはまずいですね」

エクリプスは慌てて杖を掲げ、見物者を覆う様にシールドを展開する。

「何者も、この雷撃からは逃れる事は出来ませんっ!!いけっ!!」

シルバーが剣を振り下ろすと同時に、練兵場を覆い尽くさんばかりに極太の雷が轟音と閃光と共に襲いかかった。

エクリプスのシールド越しであっても、ビリビリとその雷撃の凄さが伝わってくる。

並みの魔導師ならば、到底防ぎきれる攻撃ではない。シエロの召喚武器であっても、この攻撃を相殺する事は難しいであろう。


「グアッッッ!!」

以外にも聞こえた悲鳴はシルバーのものであった。右脇腹を抑え、片膝をついている。

シエロはそれを無表情に見下ろしていた。

「・・・すみません」

そう言うシエロの手には美しい緩い曲線を描いた、片刃の細長い剣が握られていた。

先端が血に濡れて、ヌラヌラと鈍く光っている。

そして、シルバーに向かってこう言い放った。

「シルバー様、多分、私と貴方では相性が悪い。これ以上戦っても無駄だと思います」

シルバーは少しの沈黙の後に、それに同意する。

「・・・確かに・・そうみたいですね」

痛みに顔を歪めつつも、シエロを見上げ、少しだけ悔しそうな微笑みを浮かべてそう言った。引き際を誤らない事も、優秀な戦士の証である。

「・・・1つだけ聞いても良いですか?」

シルバーはシエロに向かってそう言った。

「最後の攻撃はどうやって?」

フラックスチューブは使える者も殆どいない、一撃必殺の大技である。それをどうやって回避したのかが気になったのである。

「・・・詳しくは言えませんが、雷を切り裂いたのです」

そう言いながらシエロは、チラリと自分の持つこの世界では異形の剣を見た。

「そうですか・・・」

シルバーは納得はしてはいないが、何となく理解はした様子であった。

2人の間に再び沈黙が流れる。

「それでは、第四試合はシエロ君の勝利で宜しいですね?」

そんな2人にエクリプスが声をかけた。

シルバーが頷くと、シエロは武具召喚を解除し、シルバーに向かって深く一礼をした。

こうして、第四試合はシエロの勝利で幕を閉じた。

「ねぇ、作者・・・前にも言ったけど、僕は主人公なんだよねぇ?」

睨め付ける様な視線を作者に向けて、アレクはそう言った。

「とりあえずさ、前回の話を聞いて僕も10話分は我慢したよ?でもそれが過ぎても僕が一切出てこないってのはどう言う事?!」

膨れっ面のアレクが作者に迫る。

「も、申し訳ありませんーーーっ!!」

すかさず作者はスライディング土下座をかました。そして、そのままの姿で矢継ぎ早にアレクに言う。

「お、思いの外、シエロ君とカイト君の試合が長引いてしまいまして・・・。予定では21話からはまた、アレク様サイドの話になる予定だったのですが・・・」

綺麗な土下座を決めたまま、作者は動く気配は無い。

「ねぇ、それって結局作者の文章力の無さで長引いちゃってるって事だよねぇ」

今回はアレクも簡単に許す気は無いようだ。

作者は考える・・・。どうすればこの魔王の怒りを解くことが出来るのか・・・。

「24話・・・いえ、23話から必ずまたアレク様の話を書きますので、何とかそれまではっ!!申し訳ありません!それまで何とかお待ちくださいーっ!!」

涙と鼻水でグチョグチョの顔でアレクに迫りながら、作者は訴えかける。

「ちょっ!その顔で近づいてこないでよっ!!鼻水がっ!!」

飛び散る作者の涙と鼻水に焦りながらアレクが言う。


「そうじゃっ!!アレクの言う通りじゃっ!!我が友をもっと出さぬかっ!!」

突如、作者に怒鳴りかかったのは、ホーリードラゴンのセレスであった。

「セッセレスさんっ!!」

突然の巨大なドラゴンの登場に、作者は真っ青な顔をして振り返る。

「こらこら、セレスーっ!作者が怖がっちゃってるじゃないかぁー」

苦笑いを浮かべながらアレクが言う。

「ムッ!ワシはじゃなっ!!少しでもお前の出番を増やしてやろうと・・・」

不満そうにセレスはそう言った。

「あははーっ!ありがとう。でも僕は君が僕のことを『我が友』と言ってくれた事の方が嬉しいよー。そんな事今まで言ってくれた事無いからねーっ」

満面の笑みを浮かべてアレクが言う。

「むっ・・・そ、それはじゃな・・・あの・・・」

顔を真っ赤にして尻尾をパタパタさせるセレスの姿は、さながら乙女のようであった。

「と、とにかくじゃっ!!作者よっ!!もっとアレクの出番を増やすのじゃっ!!ではなっ!!」

焦った様にそう言って、セレスは空へと舞い上がると、あっという間に豆粒の様になって見えなくなった。

「なぁんか、毒気が抜かれちゃったから僕も帰るよ。でも作者・・・約束は守ってよねっ!!」

そう言うとアレクもゲートを開いてさっさと転移して行った。

今回も何とか作者の命は繋がった様である。めでたし、めでたし???

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