表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/70

第二試合 後編

今回も長文になっております(^^;;

前・中・後に何とか納める為に、3000文字程になってしまいました(汗)

携帯の方すみません(^^;;

若干流血注意ですm(._.)m

それと、サブタイトルを@@vs@@から、第@試合に変更しました。

「あれだけ入り込んでいながら、僕の幻術を打ち破るとは流石ですね」

カイトは手を叩きながらシエロにそう言った。

「・・・母はもうこの世にはいない。それに・・・貴方はダークドラゴンを知らない」

シエロのその言葉に、カイトはピクリと右眉を動かした。

「・・・面白いと思ったのですが、失敗だったみたいですね」

忌々しげにシエロを睨みながら、カイトは言う。

「そうです。ダークドラゴンなんて見た事はありません。貴方から読み取った記憶から幻術を構築したまでです」

感情の無い微笑みを浮かべてカイトは言う。

「・・・あんなにダークドラゴンが弱い訳はない」

カイトを見つめながらシエロは言う。シエロもまたその表情からは感情は読み取れない。

「だからどうしたと言うのです。幻術を打ち破ったからと言ってもう勝った気ですか?」

ニヤリとカイトは笑うと、シエロに向かって複数のダガーを投げつけた。不意の攻撃に反応が遅れたシエロは、ギリギリの所でそれを躱すが、右肩に薄い切り傷を受けた。

「あはははははははっ!これで終わりだっ!!そのダガーの刃には、イラクサの毒が塗られている!!今度こそ僕の勝ちだ!!」

狂った様に笑うカイトを見て、周囲は静まりかえっていた。狂気とも取れるカイトの様子に底知れぬ不気味さを感じていたからである。

「エクリプス様、アレは大丈夫ですかい?イラクサの毒は回りも早い。早く解毒魔法をかけた方が・・・」

フリントが心配そうにエクリプスに言う。

「・・・まぁ、今暫く様子を見ていましょう。まだ終わってはいない様ですよ」

エクリプスはシエロを見つめたままでそう言った。


「・・・残念ながら、私に毒は通用しない。守護石の影響なのか、他に何かあるのか、産まれた時からそうらしいのですよ」

そう言いながら、シエロはクレイモアを構えると一気に距離を詰め、カイトへと切り掛かる。カイトは短剣を繰り出しシエロに応戦する。しかし、幻術使いのウィークポイントであるのか、接近戦は余り得意ではないらしく、シエロに押され気味である。

「くそっ!くそっ!!くそっ!!!くそっ!!!!こんな筈では!!」

カイトの表情に焦りが見えた。対してシエロは顔色を変える事なく冷静に剣技を繰り出す。

「美しき鳥の名を持つ守護石よ!我に力を与えよっ!!」

カイトが後ずさりながらそう叫ぶと、短剣から、濃い緑色のオーラが噴き出した。

彼の守護石はマラカイト。強いヒーリングの力を持ち、心身の癒しや体力の回復、邪気を跳ね返すなどの力がある。カイトは守護石が吸収した自らの淀みを吐き出して、シエロへとぶつけた。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

再びシエロの絶叫が響く。それを息を切らせながらも、ニヤニヤとした表情でカイトは眺める。

「・・・はぁっ、はぁっ。今まで溜め込んできた・・・苦痛の一部を・・解放したに過ぎませんよ」

息を整えながら、カイトは言う。シエロは頭を抱え、苦悶に満ちた表情でその場に跪いた。

「さぁ・・・今度こそ終わりです」

カイトが短剣を振り下ろす。誰もがもう終わりだと思っていた。しかし、シエロは左手でそれを受け止めながら、カイトの腹部をクレイモアで切り抜いた。

「・・・はっ?・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

一瞬何が起きたか分からない様なカイトであったが、驚いた様に腹部を押さえながら絶叫する。

「・・・負けられないのです」

暗い目をしたシエロがそう言う。

「・・・僕だって!!僕だって負ける訳にはいかないっ!!」

そう言いながら、片手で腹部を押さえ、フラフラしながら尚もカイトはシエロに切り掛かる。しかし、シエロにはその剣は届く事なく跳ね飛ばされた。

「・・・もう終わりにしませんか?」

シエロはクレイモアを下ろし、カイトにそう言った。

「・・・僕は英雄にならなくちゃいけないんだ!!こんな所で負けられない!!美しき鳥の名を持つ守護石よ!我を癒せ!!」

カイトの身体が薄い緑色のオーラに包まれると、傷がみるみる治っていった。そして、シエロに掴みかかる。

「・・・僕のっ!!僕の痛みが分かるかっ!!幻術を得るだけの為に、淫魔などと言う、穢れた魔族と延々と交わらねばならなかった事をっ!!・・・精神力の無い者達は次々に死んでいくか、廃人となっていった・・・。僕もね、正直もう感覚が鈍ってしまって痛みを感じる事が出来ないんだ。さっきは驚いて叫んでしまったが、これっぽっちも痛くは無いんだよ。それがどう言う事か分かるかい?例えば、とっても美味しい食事をしても味を感じられないのと同じさ。ボソボソ砂を噛んでいるようで、何を食べても美味しくないんだ」

自嘲的にカイトは笑う。

「そんなのもう、人間じゃないよね。人為的に魔族になったも同じさ。そして幻術を使える様になっても、卑怯だ何だと一生後ろ指を指され続ける。良い事なんて何にもないよね。だから僕はどんな手を使っても勇者にならないといけない。・・・そして魔王を倒して英雄になって見返してやるのだ!我ら!一族を!!蔑んだ奴らを!!そして、僕を!こんな風にした長老達をっ!!!だからっ!!!・・・・・お前なんて壊れちゃえよ」

濃い緑色のオーラの塊がシエロを襲う。それと同時にシエロにカイトの記憶が流れ込む。幼い頃、幼馴染の女の子が魔族への生け贄とされた事。その少女はカイトの初恋の相手だった事。悲しむ間もなく、サキュバスに精を吸われる生活が始まった事。狂いそうになるのを必死に押さえながら数年間を過ごした事。幻術を得てからは直ぐさま、一族の長に命じられ修行と言う名の幻術を使った暗殺を幾つもやらされていた事。父母に愛された記憶もなく、ただ幻術を使うだけの機械のように育てられた事。陽のあたる場所などに、今まで身を置いた事はない事。今回が最初で最後のチャンスだと思っていた事。

カイトの精神的、肉体的苦痛の全てがその記憶と共にシエロに流れ込んでくる。常人ならばそれだけで、気が狂ってもおかしくはない。

しかし・・・シエロはただ、泣いていた。シエロ自身も目の前で母を殺されると言う悲劇に見舞われた。だが、母との想い出は暖かいものだった。その後孤児となり、それなりの苦労はしたが、孤独では無かった。少なくともカイトの様に、誰にも心を開く事なく生きてきた訳では無い。

「・・・すまない」

泣きながらシエロはカイトにそう言った。

「っ?!・・・何故貴様が謝るっ!!!」

再びカイトはシエロに殴りかかった。シエロはそれを避ける事なく受け止めた。

「くそっ!くそっ!!くそっ!!!くそっ!!!!何故反撃しないっ!!」

カイトはシエロを殴りながら、そう叫んだ。

数分にも満たない間、練兵場にはカイトがシエロを殴る音だけが響いていた。

ただ広いだけで無機質な練兵場には音がよく響く。

「・・・やめた」

カイトはそう呟くと、おもむろに腕を降ろした。

「・・・エクリプス様、申し訳ありません。やはり僕には勇者なんて向かない様です。ここまでで僕は棄権します」

最初に自己紹介をした時の様に、カイトは優雅な仕草でエクリプスに頭を下げた。

「分かりました。良いでしょう。お疲れ様でした」

エクリプスは労いの言葉をかけると、兵士に命じた。

「守備兵!この者を牢獄に!!」

その言葉を聞いて周囲には騒めきが起きた。

「どう言う事ですか!エクリプス様っ!!」

シルバーが咎める様に声を上げる。

「元々、カイト君にはとある要人の暗殺疑惑が持ち上がっていました。もしも勇者になる事が出来れば、その件は不問にするとの約束であったのです」

エクリプスは何とでもないとでも言う様に、淡々とそう言った。カイトも大人しく、守備兵に縄をかけられている。そしてカイトは兵士に連れられて練兵場を後にした。

出口で一瞬立ち止まり、シエロに向かって何かを言ったが、それを聞き取れた者はいなかった。


こうして、シエロvsカイトの第二試合は幕を閉じた。

やっとシエロとカイトの戦いに決着がつきました!

若干重めの戦いになってしまったので、次週は純粋なぶつかり合いの様な戦いを書ければと思っています。

後、ここまでの試合を週またぎで更新しておいて何なのですが、次週より試合は前編、後編纏めての更新にします。

なんか間延びしている気がして^^;

なので来週は2話纏めての更新となります。


しかし、戦闘シーンって難しいですね(^^;;

あんまりガガガガガッ!とか、ドカーンッ!とか擬音を多用した戦闘シーンが好きではなくて(ぶっちゃっけ読み飛ばしてしまいます。笑)そうならない様に気をつけているのですが、若干説明的すぎるかなー?などと考えながら書いております。

まぁ精進あるのみですよねー。楽しんでいただける様に頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ