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第一試合 後編

今回で勝敗が決します!

「んじゃ、俺も遠慮なしに使いますかね。大いなる大地の恵み。古なる守護石よ!我に力を与えよっ!」

フリントも己の守護石、フリントストーンを使う事にした。遥か昔の時代より矢じりや火打ち石などに利用されていたこの石は、派手さは無いが自分の経験値を実力に変える、そんな力を持っていた。

魔法の使えないフリントが、幾つもの戦場を潜り抜けてこれたのも、この石の力があったからこそだった。

「金髪の!この石は今まで俺が経験した全ての攻撃を記憶している。だから、一度でも俺がくらった事のある攻撃はほぼ通用はしない。俺を本気で倒したけりゃ、俺が見た事もない攻撃を仕掛けてくるこったな!」

そう言ってフリントは大剣を大上段に構えた。


「・・・んじゃ、やってやるよっ!究極神聖魔法、アポカリプスッ!!-世界を包み込む終末の光-全てを無にっ!!」

アルトの叫びと共にロングソードに凄まじい魔力を帯びた光が集約される。

魔力のうねりが空気を撹拌し、台風の様な風が巻き起こった。

「うーん。少しばかりやりすぎかもしれませんねぇ・・・」

それを見ながらエクリプスは、万が一に備えていつでも防御魔法が展開出来るように杖を構えた。

「これで終わらせてやるっ!!いっけぇーーーっ!」

アルトの声と同時に、白い光が一斉にフリントに降り注ぐ。

誰もが終わりを確信した。眩い光に目を細め、光が収束していくのを待つ。

これだけの攻撃をくらっては、いくらフリントでも無傷ではいられないだろう。

死んでもおかしくはない程の攻撃なのだ。

しかし・・・フリントは何も変わりなくその場に立っていた。大剣を頭上に構えた姿で。

「なぜあの攻撃をまともに受けて無事でいられるっ!!」

焦った様にアルトが叫んだ。その表情には彼が初めて見せる恐怖の色があった。


「んーっ。そんなの単純さ、この剣は魔法を跳ね返すんだよ。俺の戦いを見て気づかなかったのか?」

何とでも無いと言う様にフリントは言う。

「・・・馬鹿な。いくら魔法を跳ね返すと言っても、通常ならば自分の魔力以上の攻撃をくらえば、防ぎきれないはず!それなのに何故?!」

フリントは魔法を使えない。それならば、たいした魔力は保有していない筈だった。

「まぁ、通常ならばそうだろうな。だけどこの剣は特別なんだ。良く見てみろよ。この柄の部分にフリントストーンがはまっているだろ?んで、この守護石は経験値を実力に変える。今まで俺がどれだけの魔導師達と戦ってきたと思う?」

ニヤリとフリントは笑った。

「まだやるかね?」

フリントの言葉にアルトは一瞬目の色を変えたものの、この戦いを通してフリントの実力は嫌と言う程の思い知らさている。

「何故・・・私ではお前に勝てない!!魔力も、技術も、私の方が勝っていた筈だ!」

絞り出す様にアルトは言った。彼にとってこれは初めての敗北だった。その表情に、悔しさが滲み出る。今までは全て、彼の魔力量の多さと、類まれなる魔法のセンスによって多少の苦戦こそすれ、最後には勝利をおさめてきた。

「正直、純粋な実力なら、お前さんの方が俺よりも上であろうよ」

真剣な表情でフリントは言う。

「ならば、何故っ!!」

顔を歪めながら、アルトが言った。

「経験さね。お前さんには経験が圧倒的に足りないのさ」

「私も今まで幾人もの実力者と試合ってきた!」

納得がいかないと言う様にアルトが言う。

「試合じゃダメなんだ。潜ってきた死線の数だよ。何度生きるか死ぬかの場面に身を置くかによってそれは変わってくるんだ。お前さん、本当に生きるか死ぬかの戦いをした事はあるかい?」

フリントは優しい微笑みを浮かべてアルトに言う。

「・・・・・」

アルトは無言下を向き、唇を噛み締めた。比較的平和な時代に生まれたアルトは、今まで戦場と言う場に身を置いた事は一度もなかった。それに、これ以上フリントと戦っても勝てない事を、自分自身が1番よく分かっていた。

「まぁ、魔王討伐なんて物騒な事は大人に任せて、お前さん達若いのはしっかりと勉学に励んでれば良いんだよ。この国の未来の為にも」

フリントはアルトにそう言った。

「・・・分かった。ここは素直に引こう。これ以上戦う事が無駄な事くらい、私にも分かっている。ただ・・・これで終わりと思うな!いずれ必ず貴様を倒してやる!首を洗って待っていろ!」

最後まで、アルトはアルトであった。プライドが高く高圧的。しかし、それは向上心の表れでもあった。

「おうっ!いつでも待ってるぜっ! 」

アルトの言葉に、フリントは笑顔でこたえた。


こうして、アルトvsフリントの戦いは、フリントの勝利で幕を閉じた。


「さて、次は僕たちですね」

カイトはシエロに微笑みながらそう言った。シエロ会釈でそれに応えた。

「正々堂々とお願いしますね。・・・正々堂々と」

そう言うと、カイトは歩き始めた。

カイトの細い目が更に細くなり、妖しい光を帯びた事に気付くものは誰もいなかった。

アルト君も、フリントのオッサンも書いていて楽しいキャラでした(笑)

次週はシエロvsカイトの戦いになります。

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