シルバー帰還
今週もシルバーの話が続きます。
いつもより文字数が、400文字くらい多くなってしまいました(^^;;
「皆、すまぬが、ここから我は先に転移で城に戻る事にする。各隊このままゆっくりと第二城壁まで向かい、そこで待機してくれぬか」
第一城壁を後にして少し進んだ所で、シルバーは各部隊の隊長を集めそう命じた。
先程の第一城壁の騒ぎを考えると、このまま第二城壁まで進めば、更なる騒動を生みかねない。それに第一城壁とは違い、第二城壁は街からほんの目と鼻の先なのである。
とりあえず先に自分だけが城に向かい、事のあらましを陛下に伝えるべきだろう。シルバーはそう判断した。
「はっ!了解であります!」
隊長達は綺麗な敬礼をすると、速やかに自分の隊へと戻って行った。
「さて、では行くか」
隊長達が各部隊に戻ったのを見届け、シルバーは懐から金色の繊細で美しい細工の施された懐中時計を取り出すと、フッと文字盤に息を吹きかけた。
キュィーンッとでも音が出そうな感じに黄金色のゲートが開く。この懐中時計は、転移魔法が使えない者でも任意の場所に転移する事が出来る魔法具である。
転移魔法ほど万能ではなく、幾つかの登録された特定の場所にしか転移する事が出来ないのだが、それでも十分役に立つ物であった。
「あまり、転移は好きでは無いのだがな・・・」
そんな事を呟きつつ、シルバーはゲートへと足を踏み入れた。
「お帰りなさいませ。シルバー様、ご無事のご帰還心よりお慶び申し上げます」
転移先には既にベリル王の側近の大魔導師である、エクリプスが待ち構えていた。片膝を着き、片手を胸に当て、首を垂れた臣下の礼をもってシルバーを迎え入れる。
「おやめ下さい、エクリプス殿!私は一介の将軍でしかありません、大魔導師であり、陛下の側近でいらっしゃる貴方にその様な礼を尽くされる覚えはありませぬ」
エクリプスの姿に大変恐縮しながら、慌てた様にシルバーは言う。
「しかし、貴方様は陛下の甥子。王家の血筋でいらっしゃる。この若輩が礼を尽くすのも当然の事です」
顔を上げ笑みを浮かべながらも、姿勢を崩さずにエクリプスは言う。
「確かに血縁ではありますが、私は既に臣下に降った者。その辺りの家臣と何も変わりませぬ。さぁ、エクリプス殿どうぞお立ち下さい」
手を携えて、エクリプスを立ち上がらせながらシルバーは不思議に思った。転移して城に行くとは連絡はしていないのだ。
「エクリプス殿、どうして私が転移してくる事が分かったのでしょう?」
不思議そうにシルバーは訊ねる。
「皆様にお渡ししている魔法具は私が作り出した物。誰かがゲートを開くと、私に通知が来る様になっているのですよ。魔法具をお渡ししてあるのは、一部の尊い方々のみ。それに特殊な魔法で本人でないと使えなくはなっておますが、万が一陛下に害意ある者の手に渡って使われないとも限りませんので」
微笑みながら、エクリプスは言う。その答えにシルバーは成る程と感心をした。まだ30代の若さで魔術を極め、王の側近にまで上り詰めた男は伊達ではない様だ。
「さぁ、そんな事よりも、陛下がお待ちです。参りましょう」
エクリプスはシルバーを伴い、転移の間を後にした。
「シルバー!良くぞ無事に戻った!」
王の執務室へと続く重い扉を開くと、国王ジル=トラピッチェ=ベリルが駆け寄って来た。
白い髭を蓄えた、何処にでも居そうな中肉中背の老人である。
「良かった・・・本当に良かった。良くぞ無事に戻った」
シルバーの手を掴み、泣き出さんばかりにベリル王は言う。
「陛下、有難うございます。何とか無事に戻って参りました」
シルバーはベリル王に向かって微笑みながらそう言った。
「シルバー、お前が陛下等と言う必要は無いと前々から言っておろう。叔父上で良いのだ。叔父上で」
不服そうにベリル王は言う。シルバーを甥子として可愛がっている様子が伺えた。
「いえ、私は既に臣下に降った身。他の者に示しがつきませぬ」
困った様にシルバーは言う。
「今はエクリプスしか居らぬのだから、構わぬであろう」
ベリル王は折れる事なくそう言った。
「・・・そこまで仰るのであれば・・・叔父上」
恐縮しながらシルバーは言う。
「うむ、うむ。・・・それで魔王は倒したのか?」
一瞬嬉しそうに笑うと、直ぐに真顔になってシルバーに訊ねた。
「申し訳ありませぬ。私には無理でありました。叔父上、その事についてもご相談がありまして、一人で先に報告に戻ってきた次第です」
シルバーは真剣な眼差しでそう言った。
「して、そのアレクと言う魔王は信用出来そうな者なのか?」
シルバーから事のあらましを聞くと、椅子に深く腰掛け、困惑の表情でベリル王は言った。
「はい、叔父上。こちらから攻めて来なければ、戦う気はないと。それに、今までの彼の戦い方を見ても、過去の魔王達とは違い人を殺す事に興味はない様子でした」
「うむ・・・」
ベリル王は難しい顔をして、考え込んでいる様子だ。いきなりの友好条約や不可侵条約が難しければ、せめて停戦協定なりを結ぶ事が、国にとっても民にとっても良いのではないかとシルバーは考えていた。戦は国を疲弊させる。遠征費用もばかにならないのだ。
「シルバーが、そう言うのであれば・・・」
そうベリル王が口を開きかけた時、「相手は魔族です。過去の例もあります。そんなに簡単に信じても良いものでしょうか?」とエクリプスから横槍が入った。
「エクリプス殿がご心配なさるのも当然の事だ。しかし、我はあのアレクと言う魔王の言葉は信頼に値すると思っている。陛下もお会いになれば、きっとお分かり下さる筈だ」
シルバーは力を込めてそう言った。
「それが陛下を亡き者にする罠ではないと言い切れるのですか?」
エクリプスは鋭い視線をシルバーに向けながらそう言った。
「うむ・・・エクリプスの言う事も一理ある・・・」
ベリル王は二人のやり取りを困った様な表情で眺めていた。
今週もアレクは出番無しでした(^^;;
来週は漸く勇者を登場させられそうです。
アレクは・・・また登場しないかも(^^;;




