たどり着くは影(うた)
少し前の話。私が無事二回生に進級したころの話だ。
その日は授業を終え、サークルの集まりのために練の前に立つと、中から話声が聞こえてきた。
第一ミステリーサークルの人間は部外に友人が少ない人が多い。ということはこの時期に知らない人の声が聞こえるとなると……。
ノックをしつつ、「おつかれさま」といいながら、扉を開けると梅ケ谷と知らない女性が親し気に話していた。
「おお」梅ケ谷はこちらに気が付くと、話しかけてきた「おつかれさん。えっと、こいつは……」
「新入部員か?」
「そうそれ」
女性は前に出て、あまり自信のなさそうな声で自己紹介をしてきた。
「始めまして。図所軋美いいます……。お噂は兼々だいす……梅ケ谷さんから聞き及んでます……」
私もそれに返して自己紹介をする。
身長はあまり高くなく、少し痩せすぎといえるぐらい細い。前髪を目が隠れるほど伸ばしており、後ろ髪は肩にかかる程度の長さで切りそろえてある。ちらりと髪の隙間から覗く目は、少し不健康さが見てとれた。
上は紺色のパーカーを着ており、下は膝上ぐらいの長さの赤がベースのチェックのミニスカートを穿いていた。
見た感じでは初めて会う人と話すのは得意ではないようだ。私も人のことを言えないが。しかし梅ケ谷とは話せるようで、間に入ってもらい、先輩方が来るまで雑談をしていた。
偶につっかえたり、話題に困って、沈黙が訪れたりしたが、彼女には話そうという意志があった。会話事態に苦痛は感じているようだが、それを治すために努力をしている、そして、梅ケ谷がそれをサポートしている、というふうように見て取れた。
ふとテーブルの上にある本が目に留まった。私のものでなく、先輩達や梅ケ谷の趣味でもない。
ダーシル・ハメットの『マルタの鷹』だった。
「ハードボイルド小説が好きなのか?」
「え?ええ」
その答えには気恥ずかしさを含んでいるようであったが、同時に嬉しさもあるように思えた。よっぽど好きなのだろう。
「ただ」と図所は言おうか迷うそぶりを見せた「ハードボイルドでも、好きなのと苦手なのがありまして……。ダーシル・ハメットやアーネスト・ヘミングウェイの短編は好きなんですが……。内面描写が多いと……」
「ああ」そういう意見も聞いたことがある「チャンドラーの流れは駄目か。チャンドラーもほかの小説に比べると内面描写は少ないが、ハメットやヘミングウェイに比べるとかなり多い。だからチャンドラー作品の多くは厳密にはハードボイルドではない。という意見を聞いたことがある。私はその意見には反対だが」
「あ……。ちゃうんです。私はレイモンド・チャンドラーがハードボイルドやないとは思ってないです。ただ、わた、私が内面描写の少ないハードボイルドが好きなのは……こう一人称小説で内面描写が多いの読むと、感想持つ時私が卑怯や思えて……」
「卑怯?」
私は話の流れに少し不安を感じていた。
本音。
それは会話が苦手なものにとってとてもデリケートなものである。
変わった意見。珍しい意見反対されそうな意見。それらを人に話す時は慎重に吟味し、使い時をしっかりと選ばなければならない。しかし話すのが苦手だという者はそれらをする能力が少し低いことが多い。
私はこれ以上話すと彼女を傷つけてしまうのではと思い、梅ケ谷のほうを見た。
すると
『かまわん、続けろ。軋美がこんなに話してるのを見たのは初めてだ』
と、ジェスチャーをしてきた。
簡単に言ってくれる。
私はすでに梅ケ谷と図所が付き合っているのは気づいていた。ああ言いながらも、梅ケ谷は私へ嫉妬の視線を送っていた。それでも会話の訓練をさせるのには何か事情があるのだろう。
しかし、私自身会話のエキスパートというわけではないので、上手く相手をしてやれるわけがない。
もし私が彼女と同じ精神状態で、同じ立場なら会話の訓練などやりたくはない。
『どうなっても知らないからな』
ジェスチャーを返すと、梅ケ谷は頷いた。
図所は話を続けた。
なを次の文は、よくつっかえる彼女の言葉をわかりやすく治しつつ、少し分かり難さを残したものである。
実際はも少しやり取りや確認をしながら話した。
「こう、卑怯や思うのは、小説の主人公が辛いとか悲しいと思って、私達は感情移入したり、しなかったりするわけやないですか……。ただ読者が……いえ、ほかの人は関係ないですね……。私がです。私が。現実の世界では私は他人の行動を見て、その人が好きかどうか、嫌いかどうか、どちらでもないかどうかを決めるというわけですね……。しかし小説を読む時は主人公の内面を読んで行動と合わせつつ、それを決めるということですね。それがちょっと苦手でして……。悪いかなって。だから内面描写のないハードボイルド小説が好きなんです」
そこまで話すと彼女は俯いてしまった。少し自分のことを話し過ぎたと思ったのだろう。
梅ケ谷が手を合わせ、『すまんな』というそぶりをした後、彼らは部室から出ていってしまった。
彼女のいいたいことは理解はできる。しかし共感はできなかった。
それでも彼女の言い方には断固たる意志があるように思えた。ただ感受性が豊か、と切り捨てるには何か違うような……。
あの後落ち着いたのか、二人はまた戻ってきた。そして先輩方も加わり自己紹介をした。
副会長は
「んん~?あたしのこの黄土色の頭脳の見立てでは、あなたはサークラレベル2!自覚はないようだが、本人の努力しだいで、サークルクラッシュの危機は免れるだろう。がんばりなさい!」
などと意味のわからない、失礼なことを言っていた。
その日の集会は無事終わり、図所は温かく迎えられた。
その日の夜家に帰って、夕食を食べていると、あることを思いついた。
もしや図所軋美は他人の心が読めるのではないだろうか。
他人の心を読み、相手のことを好きとか嫌いとか判断してしまう。それのことが彼女には卑怯に思え、小説を読む間ぐらいは、他人の心の中を読みたくないと思ったのかもしれない。
そこまで考えて、私は、自分がそんな考えをしたことに内心苦笑いをした。馬鹿な話だ。
心を読むだって?そんなことがありうるものか。
その日私は自身が疲れているのだと判断し、夜は早めに眠った。
■ ■ ■
血と泥の味が口の中に広がった。目の前に、地面に落ちた自分の歯あった。やがて自分の口から流れ出た血が覆いかぶさった。
いつのまにか雨が降りしきっている。
雨により血が薄まって、排水溝に流れるさまをじっと私は、ぼやけた目で見ていた。
顔の傷とアスファルトが触れあい、痛みを感じる。肋骨が一本折れていた。内臓も傷をおっているだろう。
夢を見ていた気がする。昔の夢だ。中断されたということは走馬灯ではないと信じたい。
そうだ、私は黒い何かに立ち向かったのだった。そして結果はご覧の有様で、今黒い化け物に足踏みされている所であった。
「*****」
頭上から鳴き声のようなものがした。甲高い声だ。罠にはまった溝鼠を水に入れた時の断末魔のような鳴き声だった。おそらく黒い化け物が発したのだろう。
ウィジャボードは遠くへ弾き飛ばされているため、今は意思疎通はできない。
何が悪かったのだろう。
そう問うのなら、今の私腕っぷしより相手のほうが強かったというだけだった。
相手の反応がなかったので、初めに一発殴ったまではよかった。手ごたえはあったのだ。正直に言って触れられるかどうかも不安であった。
しかし、ひょろひょろしても三メートルのリーチは伊達じゃなかった。多分霊体的なものだから、普通の物理学で現せないだろうから、この身長差でも勝てるかもしれない、などと考えた私が浅はかであった。
私が股間の辺りを殴ると影は少しのけぞった。しかし次の瞬間、私は奴に持ち上げられ、投げ飛ばされ地面に叩き付けられた。そして体制が整わない内にまた掴まれ、持ち上げられ、地面に叩き付けられた。何度も、何度も、何度も。その間私は頭を守のが精いっぱいであった。
「なんだ、もう終わったのか」
頭上からしわがれた声がした。聞き覚えのある不愉快な声質だった。
しかし地面に抑えつけられているため顔を上げることはできない。
「中々『蛾坩堝界』への扉が開かないから、こやつには何かあると思おておったが、とんだ見当違いだったようだな。本当に期待外れだな。おい、殴れ」
次の頭上に衝撃を受け、首が地面に叩き付けられる。意識が飛びそうになるのを歯を食いしばり堪えた。
そして髪を掴まれ、顔を上げさせられる。
目の前に赤い老人のような顔があった。どうやら声の主は昨日の小人のようだった。表面に油が浮いており、できもののようなものが多くあった。
「立っている人間の頭部を殴ると、相手はのけ反り、力が分散する。しかし地面や壁に密接している頭部を殴るとそうはならない。最悪死ぬ場合も多い。まあそんなことはどうでもいい。私はね、今機嫌が悪いんだ。主にお前のせいでな。お前が弱すぎるせいでな」
顔を近づけ小人はそんなことを言った。
「まあ詳しいことは話せないし話しても仕方ないが。ほんとがっかりだのう。ここまでとは思わなんだ。これを見ろ」
私の顔に赤い何かを近づけてきた。霞んだ目でよく見ると、それは香澄子から貰った御守だった。
「誰から貰ったのかは知らんが、お前がこの黒案山子に触れることが出来たのはこの御守のおかげだ。きっとこの御守を渡した者は余程お前を信頼してたのだろう。触れさえ出来れば自分で何とかできるって」
私の指が少し動いた。
「しかしお前は無残にも敗れ去った。信頼を無駄にしたというわけだな。滑稽、滑稽、実に滑稽。お前も、これを渡した奴もな」
小人は私の顔に蹴りを入れた。
そして何かを伺うように、沈黙が訪れた。私は振り払おうとしたが、あまりの相手の力強さにより、私の腕力ではそれは土台無理な状態だった。
「恩人を馬鹿にされても、限界以上の力を出すこともできぬか……。もしや人違いかもしれんな。まあいい一応連れていくぞ。ちなみに気絶したふりをして、隙を伺っているのなら無駄だぞ」
その言葉を聞き私は目を瞑り、舌打ちをし、
「なら仕方ないか」
といいながら私は背の上の化け物を投げ飛ばし、民家の塀に叩き付けた。
◇ ◇ ◇
私はゆっくりと立ち上がり、腕を回した。
「心なしか、驚いているようにも見える」
上着を脱ぎ捨て、雨を払い、小人に向かって、私はそう言った。
先ほどより、雨足が強まっている。しかし遠方の空は晴れており、そろそろ逢魔が時だからだろうか、京の彼方に見える山々の一部を紅く染め上げていた。
「ふん」と小人は鼻で笑う「武術もへったくれもない投げ方だな。ただ力任せに投げ飛ばしただけだ」
「それはそれは御評価ありがとう」
「いつ自身の力に気が付いた?」
「昼飯を食ってた時かな」
「振って湧いた力で横柄な態度か」
「まあ」私は背後に注意を向ける。「降って湧いた力だから、もしかしたら使ったら逆にこちらが操られるかもと思ったから使わなかったんだが。そうでもないらしいので、お前らを倒すぐらいはこの力に甘えさせてもらうよ」
瞬間。影の化け物が飛び起き、私の背中を掴もうとした。
「********!」
そのまま私は右に大きく避け、自分自身を操り、通常の人間にはできない動きでさらに曲がり、化け物の手から逃れた。
そして自身を力で高く持ち上げ、背後から影の化け物の頭を膝蹴りにした。
「***……」
化け物は頭を抱え、うめき声を発しながら蹲る。
私はそのまま距離をとって、様子を見た。
「これは念動力だな。ただし」私は誰に言うでもなく、山から下りてから感じていた力を確認するように独りごちた。
再度影は真っ直ぐに向かってくる。
単純な動きだ。
今度は拳を前に構えている。
あのリーチから貯めのない拳が繰り出されたとしたら、避けるのはむずかしいだろう。
だから私は民家の塀の上に退避した。
それでも影のほうが高い。ならばと再度私は自身を持ち上げ、影より高く飛んだ。
「操れるのは自身の体だけのようだ」
影とすれ違いざま、顔面を踏み台にしつつそう言った。
着地の衝撃は念動力で和らげる。
「というか、御守がないと触れれないんじゃなかったのか」
小人の方を見ると黙って腕を組み、こちらを見ていた。
さっきのは只の嘘か、それとも有効範囲内なら少々離れても効果があるのか。
だとしたら御守を壊さないのは、罠か、それとも壊せないのか。
「******!!」
いや、今は目の前の影を倒すことに集中をしたほうがいいだろう。
影は警戒してかこちらの動きをうかがっている。
ならば今度は真正面から迎え撃とう。
地面に落ちていたメリケンサックを素早く拾う。
そして念動力を自分の体を弾丸のように前に飛ばした。さらに左の拳を後ろに構る。
やはり素早さではこちらに部があるようで、一気に懐に潜り込むことが出来た。
「がああああああぁぁぁぁっ!!」
そして、腹に向かって左拳を念動力と自身の腕力により打ち出した。
影は潰れた鼠のような声を上げ、後方に倒れる。
鈍い音と共に、影の腹筋と内臓に傷を負わせた感覚があった。しかし、
「があぁっ」
肩及び腕、そして拳に激痛が走った。
腕の第一及び第二関節の脱臼。そして拳の骨が数本折れていた。
自身に耐えられないほどの速さで拳を繰り出したのだ。当然の結果だろう。
影が起き上がろうとしているので、右手のラリアットで体制を崩す。動かない左手を念動力で動かしつつ、側にあったチェーンを拾い上げ、首に巻き付けた。
人の体が動くのは結局の所、筋肉が骨を引っ張っているからだ。ならば念動力で骨を引っ張れば、いつも以上の力が出るはず。
「******!」
「——っ。どうやら、首が長いからチョークが決まりやすいという見立ては当たっていたらしいな」
影は体を振り回し、逃れようとする。左手の気の遠くなるような痛みに耐えつつ、念動力で体の向きを安定させた。
ロデェオのようにに暴れる影。私の視界は回り、脳が揺さぶられ、体全体のダメージが響き始めた。
どれぐらいの時が経っただろうか。
一瞬意識が飛んだようにも思える。少し私の口から涎が垂れていた。
しかし私は生きて居る。影は倒れていて、私はそれの首をしめたまま覆いかぶさっていた。おそらくチェーンを握る手が硬直したのだろう。
嘔吐感が胃からせりあがってきた。耐えようと努力したが、次の瞬間それは決壊し、胃液を化け物の頭にぶちまけることとなった。
間近で見ても影の体は遠近感が狂いそうなほど黒いが、触れてみると爬虫類のような肌触りをしていた。それでも傷を与えているはずなのだから、表面だけが黒いというわけではあるまい。
私は影の背中に顔を当てて見た。弱ってはいるが心臓が止まっているわけではない。
素手で留めをさす余裕はない、そう判断し、ふらつきながら立ち上がった。
「次は」私は小人に向かって言った「あんたと戦るのかい」
しかめっ面をしていた小人は、組んでいた腕を解き、手を叩いた。誰もいない道路にて、その音が響き渡る。
いくら昔はいわくつきの町だったからといって、今は普通の住宅街である。ここまで人通りが少ないのはおかしい。
「合格だよ」小人は毎度のことの不愉快な声で言った「少々地味だが使い方次第では便利な神通力だ」
「神通力に念動力はない」
「それは貴様の世界の基準だろう。此方側では念動力も神通力なのだよ」
「で、どうするんだ。これから平和的解決でもするか?それとも平和的解決をするふりをして私を罠にかけるか?」
小人は鼻で笑った「状況もほとんど理解してないくせに何を馬鹿な。それとも黒案山子を倒したぐらいで天狗にでもなったか」
「そうかもな」
私は相手が話し合いで解決をするつもりがないのを確認したので、小人に顔を向けたままウィジャボードを拾い上げた。
「答えろ」文字盤に指示盤を置いた「私は目の前のあいつより強いか」
少し傷がついているからか、指示盤の動きが悪い。なんだか白雪姫の女王の鏡みたいだな、と思った。
『Yes』
「決まりだな」
小人は舌打ちをして、背を向け、走り出した。
私も盤を地面に置き、それを追う。
そもそもウィジャボードとは低級霊を交霊させ、指示盤を動かし意思疎通ははかるものである。ノリで使っていたが、目の前にいる影と会話ができたのはどういった理由なのだろうか。それに今『Yes』の方向に向けたのはいったい誰だというのだ。もし小人が念力的なもので動かしたのなら、逃げたのは罠なのかもしれない。
しかしながら今の所サークル仲間の手がかりはほとんどないと言っていい。虎穴に入らずんば虎子を得ず。ある程度見極める必要があるが、かなり深い所まで潜って探らねばなるまい。
そんなことを重いながら私は路地裏を走った。
念動力で体を補助しているが少し意識が朦朧とする。
それでも周りの景色に違和感を感じていた。
右い曲がり、次の交差点を右に曲がる。そして右に曲がり、右に曲がる。何度も何度も何度も右に曲がる。何度も。
それならば同じ場所を周っていることになるのだが、どうもそうではない。段々内側の方向へ傾いてきているようだ。それでいって一向に行き止まりや、中心には行き当たらない。
周りの家々も木造の古い家が増えているようだ。木の格子窓が目立つ。
どこからか霧が漂ってきているようにも見える。
まるでどこか誘われるようだ。
追っていた小人が急に、家の隙間の狭い道に入り込んだ。私も続いて入る。体が小さいため小人は楽に通り抜けているが、私はそうはいかない。手こずりつつ前に進むも、蜘蛛の巣や、道端に置かれたゴミが邪魔をした。
なんとか隙間を通り抜けるとそこは少し開けた庭のような場所に出た。
草が生い茂り、周りを木製の壁……家々の背に囲まれていた。私の寮の部屋ほどの広さで、空を見上げると、一面の赤色に見下ろされていた。夕焼けというよりは蛍光色で塗りたくったようにも見える。
そして一番目を引くのが、中心にある井戸だった。
組上げ式のもので、紅殻色に縫った木で作ってある。
私の入ってきた入口以外は出口はない。となると井戸の中に逃げた、ということだろうか。
私は井戸を覗き込んだ。奈落まで続いているようで、底は闇に覆われていて見えない。
この中に逃げた?果たして本当にそうだろうか?
昨日私はあの小人が消え去るのを見た。それにじつはすごい跳躍力を持っていて、家の上から逃げたのかもしれない。
どちらにしてもこの井戸の中に入るのは危険すぎだ。中で数人が待機しているとも考えられる。
私は一旦戻って体制を立て直すために、戻ることにした。
後ろを振り向くと視界の半分くらいが闇に覆われた。一瞬目がどうにかなったのかと思ったがそうではない。
「******」
顔を上げると影の化け物がいた。
構えようとするも、次の瞬間脳天に衝撃を受けた。薄れゆく意識の中、私は井戸に落ちていくのがわかった。