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始まり

『私があの子に優しくしてた?ははっ、馬鹿じゃない?期待するのをやめただけよ』


『あの子は大袈裟だから、心配するほどのものでもないわ』


『その程度で家に帰って来ないでくれる?まだ掃除すら終わっていないのよ、どこまで私の邪魔をすれば気が済むの!』



ーーー苦しい、くるしい、クルシイ、助けて、たすけて、タスケテーーーーーーーー!!!!



「はあ、はあ、はあ…」


久しぶりに、悪夢を見た。

まるでどこかで体験したかのような、生々しく鮮やかな悪夢をーーー。




あれから数週間が経った。

未だに生徒会室に入ると少し身体が強張るが、渚をはじめとする生徒会の面々が皆何事もなかったように、普通に気兼ねなく接してくれているのが唯一の救いだ。


「おはようございます」

「おはよう、結生ちゃん。朝早くからごめんね。来てそうそう悪いんだけど、そこの書類に目を通して確認したらサインしといて」


一足先に登校して仕事をしていたらしい渚が指した結生の机の前には、20枚程の書類が積み重ねられてある。それは他のメンバーも同じらしく、まだ来ていないらしい蓮や響の机にも、また現在進行形で仕事を進めている渚の前にも、同じくらい、あるいはそれ以上の量の書類が積み重なっていた。


「それでさ、突然なんだけど、結生ちゃん今日の夜空いてる?」


とにかく仕事を進めようと自分の机についたとき、渚が目は書類に向けたままそう尋ねてきた。


「あ、はい、特に用事はありませんけど…」

「実はさ、きのう成徳の会長さんから連絡があったんだけど」


成徳というのはこの学校の兄弟校である成徳学園のことで、ちょうど数週間後に2校合同の体育祭を予定している。そのおかげで生徒会が今このような多忙に陥っているのであるが。


「明後日に予定していた打ち合わせ、急に向こうが駄目になっちゃったみたいでさ。でも今週中には一度打ち合わせ入れないと流石にやばいし、そうこう言ってたら、顧問同伴なら下校時間を過ぎても活動していいっていう許可がおりて」


本当はきのう中に連絡したかったんだけど、結生ちゃんケータイ繋がらなくてさ。


そう言う渚に結生ははっとしてブレザーのポケットに手を入れる。あの日ーーー生徒会に入ると決めた日に母に取り上げられたケータイは、その数日後には手元に返ってきていたのだが、どうにも面倒くさくて電源も入れないまま放置していたのだ。

急いで電源をあげたケータイには五件ほど不在着信が入っていた。言うまでもなく渚だろう。


「すみません、ちょっと電源入れるの忘れてて」

「いいよいいよ、それより今日いけそう?なんか、敦賀先生の提案で、学校じゃなくてどこか近くのレストランで晩飯食いながらやろって話になってるみたいなんだけど…」


そうか、顧問同伴ってことは敦賀先生も来るんだよね…


いまだにあまり会いたくない人物だけど、流石にそれは断る理由にはならない。

それに何より、家にいるよりはこちらのほうが居心地だっていい。


「大丈夫ですよ、ご一緒します」


それが、結生にとって人生を変えるほどの出来事になるとも気付かずにーーー。

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