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Last EVIL - for fear -(更新停止)  作者: 山茶花久
序章「学び舎の崩壊」
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今の世界

振り返り:ついに始まる亜神とのガチンコバトル!!飛び出す厨二な技名!やっと出番が来た庸介!

「馬鹿じゃないんですか!?」


 透百合が教室に戻ると、一番に優紀のパンチが待っていた。


「何の話だ」


 こともなげに優紀の拳を受け止める透百合。


「なんであんなにあっさりと私たちを見捨てられるんですか!!」

「君なら庸介の助けが入るまでは生き残れるだろうからな」

「だからって何も言わずに行くなんてひどいと思わないんですか!?」


 横では庸介がケラケラ笑いながら二人の口喧嘩を観戦している。


「何とか言ってみてくださいよ!蔓穂慎一郎ツルホシンイチロウさん!?」

「っ!?なんで知ってる?」


また透百合が動揺する。


「庸介さんに教えてもらいました」


 本名を言われて動揺気味の透百合、いや慎一郎。

 苦し紛れに庸介をにらむが、庸介は目をそらして口笛を吹いている。いかにもわざとらしい誤魔化し方だ。


「庸介…なんでばらした?」

「どーせすぐにばれてたでしょ、さっき《美食家》にも知られてたじゃん?」


 慎一郎隠し事苦手だしね、とだめ押しをする庸介。


「とにかく、私が納得できるような説明をしてください、慎一郎さん」


 本名とか偽名とかはこの際どうでもいい。

 優紀が知りたいのはあの生き物達のこと、そして慎一郎達との関係だ。


「えー、優紀ちゃんさっき俺が教えてあげたじゃーん」

「庸介さんの説明は分かりにくすぎます」

「そんなぁ!?」


 わざとらしく嘆く庸介。妙にうざったいキャラだ。

 しかし優紀はそれを無視。

 かなりドライな高校生である。


「……じゃあ、順を追って説明するか」

「よろしくお願いします」


 観念したらしい慎一郎。渋々口を開いた。


××××××××××


 今から十年近く前、突然亜神達は現れた。

 世界各地に出現した彼らは、その身体能力と異質な力を使って暴れ回った。

 その規模は、大きいもので大陸一つを飲み込むほどのものだった。


「ちょ、ちょっと待ってください」


 語り始めて早々に優紀はストップをかけた。

 まずい、早速わからない。


「大陸を一つなんて、そんな大きな事件、今までテレビで見たことありませんよ?」


 日課のように朝のニュースを見ている優紀だが、そんな歴史に残るような大事件があったなんて一言も言ってはいなかった。


「そりゃそうさ」


 口を挟む庸介。


「俺らの仲間が消しちゃったんだもん」

「消し……た?」


 大陸を消すなんて、一体どんな兵器を使ったというのか。


「分かりづらい説明をするな、庸介」


 慎一郎の補足が入った。


「消した、というのはある意味正しい、ただ物理的な話ではない」

「……よくわかりません」


 物理的に消す以外、どうすれば消せる?

 優紀には想像がつかない。


「記憶を消すんだ、世界中の人間のな」

「あっ!」


 確かに、それならば大陸一つを「精神的に」消すことができる。

 どうやって?など、今更聞くことではない。


神殺しレべリオンが、やったんですか?」

「そうだ」


 やっぱり。それ以外に考えられなかった。


「じゃあ、私も忘れているんですか?」

「そういうことになる」


(そんな……)


 記憶を消される。

 SFなどではよくある展開だが、実際にやられたとなると、その感覚は不思議なものだった。自分のこれまで見てきたと思っていたものが、すべて疑わしくなってくる。


「世界が……五大陸だったなんて…」

「いや、それも違う・・


 苦々しく言う慎一郎。

 「違う」とは、何が違っているのか。


「本来の世界は六大陸・・・だ」

「え……?」

「つい最近、南極大陸が亜神エヴィルに占拠された」


 南極。優紀の記憶では、そこには北極と同じく大きな氷の塊が浮かんでいる場所のはず。


「南極に…大陸?」

「無理に信じろとは言わないが、本当のことだ」


 全くだ。

 昨日までの優紀ならこんな話、聞きすらしないだろう。今だって受け入れるのを脳が躊躇しているくらいだ。


「…でも、信じます」


 慎一郎が驚いて優紀を見つめた。


「昨日までの先生なら、絶対聞き入れなかったでしょうけど、今の慎一郎さんなら、信じることができます」

「…ありがとう」

「!?」


 お礼を言われた。ちゃんと目を見て。

 顔が熱くなるのを感じる。

 男性経験の少ない優紀には、この男の本気スマイルは効きすぎた。


「なんだ、できるじゃないですか」

「?」


 不思議そうにする慎一郎に、今度は優紀が目をそらす番だった。


××××××××××


「次は俺たちのことについて、だな」

「はい」


 神殺しレべリオン。慎一郎や庸介がこれにあたる。

 亜神の肉体は、その魂と強い繋がりを持っている。

 そのため、亜神にとって肉体の死は魂の死と同意である。亜神が死ぬと、肉体は崩れ、消滅する。


「その前に、俺たちはその肉体を喰ったんだ、生きたまま」

「…………」


 その状況を想像してぞっとする優紀。

 エビの踊り食いとは訳が違う。

 今日の体験だけでも、亜神達の多くは人に告示した姿をしているとわかる。それを食べた。しかも生きたまま。


「その結果、俺たちは亜神に近い肉体を手に入れることができた」


 優紀にかまわず話を続ける慎一郎。本人にとってもあまり思い出したいことではないのだろう。


「例えば、俺の場合はこんな感じね」


 こんな時にもその軽さを崩さない庸介。

 メンタルは強いのかもしれない。単にバカなだけかもしれないが。


「バカなだけだろうな」

「心を読まないでください」


 二人の言い合いをスルーして、能力を発動する庸介。


「それ、ブラッティ・トイボックス!」


 ポコンと音がして、急に庸介の右腕が消えた。しかし、血は流れてこない。


「俺はね、収納家シュウノウカって名前の亜神エヴィルを喰らったんすよ」


 何故か自慢げに自分の能力を説明する庸介。慎一郎と違って彼と亜神エヴィルとの接触は悪いものでは無かったようだ。


「これを使ことで、体の内側に何でも《しまう》ことができるんだよー」


 そう言ってポコンポコンと変な音を立てながら腕を戻し、今度は腕から拳銃を取り出した。

 体積は関係ないのか、機関銃のようなものまで出てくる。


「人型の四次元ポ○ットですか」

「やめて!なんか格好悪いから!」


 両手で×のマークを作る庸介。


「そのポケット能力で慎一郎さんの腕になってたんですか?」

「そうだけど違う!ポケット能力って何!?ブラッティ・トイボックスだから!!」


 むしろこっちに何かのトラウマがあるのか、必死に訂正を求める庸介。


「で、どう?かっこよくない?」


 最後に身を乗り出して聞いてくる。

 これが聞きたかったのか。

 そう思いながら、優紀は思っていたことを口にする。


「なんか、音が変です」

「ぐはぁっ!!」


 倒れる陽介。

 こうかは ばつぐんだ !


「それだけは言ってほしくなかった……」


 地に伏しながらも何かをもごもごつぶやく庸介。


「それじゃあ」

「俺は教えないぞ」


 優紀の先を読んできっぱり断る慎一郎。


「何でですか!?」

「あまり格好が付くものじゃない」

「陽介さんのよりはましでしょう?」

「がっ!」


 言葉の凶器でダメージを受ける庸介。


「まあ、あれよりはましだ」

「ぐはっ!!」


 もう一発。


「あんな変な音を出す能力なんて、アイツくらいだ」

「ぐわあああぁぁ!!」


 とどめの一撃!!

 今回ほとんど戦闘に参加していない庸介だが、この数秒の間に心に大きな傷を負うことになった。


「そう言えば、どうやって慎一郎さんの腕になりすましてたんですか?」

「俺たち亜神エヴィルも、小さい領域エリアを張れるんだ」


 床に倒れこんだことで、無視されたことに気付かれなかった庸介は、ある意味幸運だったのか。

The・説明回でした。序章はまだもうちょっとだけ続きます。

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