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Last EVIL - for fear -(更新停止)  作者: 山茶花久
二章「デパート襲撃」
13/17

偽装の平和

振り返り(適当):うっかりやの日和ちゃん(24)!仲間の慎一郎君たちに誤報を流しちゃったよ!!

〈???side〉


 コモンデパート、屋上。


「おい、来たぞ」

「え、マジ!?何人!?」

「三人だ、男二人に女一人」

「女の子!可愛い!?髪何色?」

「……自分で見ろ」

「なんだよケチ!…………おお、黒髪ジャン」

「そろそろ行って来い、あとはお前が《吸う》だけで完成する」

「ちょ、まって…………ヒョウ!しかも貧乳ちゃん、俺好みだよ」

「おい」

「……はいはい、分かってますよーっと」


ブウォン


「…………来てみろよ神殺しレべリオン……俺のコレクションにしてやる……」


××××××××××


 慎一郎ら第七支部戦闘員たちは領域エリアの中に踏み込み、デパートの扉を開けた。


「いらっしゃいませー!!」


 景気のよさそうな挨拶が三人にかけられた。

 目の前にいるのは「コモンデパート」のロゴが付いたワイシャツを着た店員。

 デパート内は、いつも通りの賑わいを見せていた。カップル、親子連れ、ビジネスマン…何一つ変わらない日常風景があった。


「……!?」

「はっ!?」

「…………なんで?」


 とっさの判断でマシンガンを《しまう》庸介。しかし、さすがに紫苑の刀までは手が回らない。

 気付かれていないことを祈りつつ、庸介は刀を隠すように店員と紫苑の間に入った。


「本日はどのような商品をお探しでしょうか?」


 庸介の行動が功をなしたのか、店員は普段通りの接客トークを始める。


「すまない、ここは初めてなのだが、洋服はどの階にある?」

「紳士服ですか?でしたら五階になります」

「ありがとう、行ってみるよ」


 慎一郎のでっち上げ話で店員を追い払う。

 一応店員を気遣い、五階に向かうエレベーターに乗った。


「おい、どーゆーことだ?」

「分かるわけないだろ」


 エレベーターに乗っているのは三人だけなので、遠慮なく状況整理を進める。


「あいつら全員が亜神エヴィルだなんてことはないだろーな?」

「…………それはない」


 紫苑が首を振った。慎一郎も庸介もそれは分かっている。

 あんな好戦的な奴らが、あんなに無防備に慎一郎たちの前に姿を現すなんて考えられない。


「昔やったゲームを想像してたんだけどなぁ……」


 庸介は再びマシンガンを取り出していじり始めた。それを見て紫苑が首をかしげる。


「…………庸介、いつもの小さいのは?」

「俺の愛しの『S&W』なら亜神エヴィルに喰われちまいました!」


 お前のせいでな!と、慎一郎を指さす。


「喰ったのは《美食家》だろう?」

「お前が縦にしたからだよ!おまけに『トカレフ』まで駄目にしやがって!!」


 人がいないのをいいことに庸介は大声を出す。


「せっかく『コルトパイソン』とセットで使ってたのにー」


 よよよ……と今度は嘘半分本気半分でなく始末だ。かなりショックだったらしい。

 ナイフ専門の慎一郎と、見るからに刃物派の紫苑にはこの悲しみは分からない。

 二人にとって銃とは、「やたら重い上に反動のでかい黒いもの」だ。

 しかし、このまま泣かれるのもうっとおしいので慎一郎はしょうがなくフォローに入る。


「庸介、確かにお前の拳銃は逝ってしまった、だが……」

「だが……?」


 慎一郎はす、と懐からナイフを取り出す。先日の戦いで使った網目状の模様が入ったナイフだ。


「俺の『トラッカー』は無事だったぞ?」


 エレベーター内の明かりを反射して怪しく光る『トラッカー』。

 刃物派の慎一郎からすると、「ナイフを守るためにこのクソ重い鉄塊を生贄にした」といったところだろうか。


「…………な?」

「……………ブッコロオオオォォス!!」


 『コルトパイソン』を取り出して慎一郎に向ける庸介。サブマシンガンを使わなかったのは理性がわずかに残っているのか。


「てめぇ、やっぱり俺のS&Wちゃんを身代りにしていやがったなあああああ!?」


 怒りのあまり若干目つきがイっちゃってる庸介。ためらわずにハンマーを下ろし、トリガーに指をかける。

 慎一郎がナイフを構え、紫苑が柄に手を添えた時。エレベーターが開いた。


「…………」

「…………」

「…………」

「いらっしゃいま……せ?」


 慎一郎たちを迎え入れようとしたスタッフが笑顔のまま固まっている。視線の先はもちろん拳銃だ。

 紫苑はさりげなく体で刀を隠し、無関係を装っている。


「ちちち違うんです!これはその……チャンバラごっこでしてぇ……」


 庸介は慌てて拳銃を小脇に抱え、即席の言い訳を並べ始めた。


「え、エレベーターで……ですか……?」


 庸介の苦しすぎる言い訳に笑顔がさらにひきつる。

 クーラーが効いているのに二人の額は嫌な汗でびっしょりだ。


「はい!ちょっとりたくなっちゃいまして………なあ!?」

「………ええ」


 庸介に任せて知らん顔の慎一郎だが、話を振られ、しぶしぶ答える。


(お前……なんで俺まで)

(うるせぇ!S&Wちゃんの仇だ!)

「唐突に殺りたくなるときがあるんスよ!」

「ええ……たまに」


 必死な剣幕の庸介となんか目つきと表情が怖い慎一郎。


「し、しかし………こんなところで…」

「すんませんっす!!次、気を付けますんで!」

「失礼しました………」


 二人の圧力に負け、スタッフは「はあ」、とあいまいに返事をした。


××××××××××


「えー、こちら紳士服売り場となっております……」


 まだこちらをチラチラ見てくるスタッフに案内され、三人は五階を歩く。

 ここも一階同様おかしなところは見つからない。


「あの……それで何をお探しで……?」


 いいからはよ帰れ、とでも言いたげな視線を送るスタッフ。


「ああ、自分たちで探すよ」

「……かしこまりました!」


 全身から安堵のオーラをまき散らしながら、スタッフは三人をブラックリストに登録すべく控室へ急いだ。


「…………最後だけすごくいい声」

「言うな!!」


 慎一郎はとりあえず近くの棚からネクタイを適当に取り上げた。


「え、慎一郎それ買うの?」

「これ以上怪しまれたいのか?」


 そう言って乱暴に買い物かごに放り込む。


「あとで返品すればいい」


 そして今度はワイシャツを見比べるふりをしながら話を続ける。


「庸介か紫苑、どっちでもいいからここ以外の階を見てきてくれ」


 慎一郎の腕は繊細な動きが難しい武器だが、庸介の銃や紫苑の刀はこのような狭い場所の方が効果を発揮しやすい。特にここは洋服が多いので、障害物に隠れてもそれごと打ち抜くこともできる。


「ここは俺だろうな!」


 庸介がはいはい、と手をあげる。


「男二人でスーツ選びとか……やってらんねぇよ」


 二人でカップルごっこしてな。そう言って庸介は階段へ向かって歩いていった。


「…………かっぷる……か」

「どうした、紫苑?」

「…………なんでもない…よ」

「?」


 慎一郎と紫苑、二人並んでワイシャツの前に立つ。


「俺たちも異常がないか見て回るぞ」

「…………まって」


 その場を去ろうとする慎一郎の上着の袖をつかむ。

 眠たげな双眸が慎一郎を捉えている。


「どうした?」


 情景反射的に目をそらす慎一郎。

 なんでんないという表情をしている癖に相変わらず視線を合わせることができていない。


「…………もうちょっと」


くいっ


 慎一郎をワイシャツコーナーに引き戻す。筋力的にはもちろん慎一郎が上だが、あっさり引っ張られてしまっている。女性体制は恐ろしく低いようだ。


「……五分な」

「…………ん」


 慎一郎は早々に抵抗を諦めた。早く紫苑が掴んだ腕を話してくれることを望んでいるのだろう。

 しかし、慎一郎の思惑とは逆に、紫苑はさらに腕をからめてきた。


「おいっ……!」

「…………このほうがかっぷるみたい」


 どことなく嬉しそうに慎一郎にくっつく紫苑と、どこからどう見ても不健康な顔色の慎一郎。

 暫くの間、おかしな二人組はワイシャツコーナーに立ち続けた。


××××××××××


「そちらの商品をお求めですかぁ?」


 慎一郎たちを本当にカップルと間違えたのか、さっきとは別のスタッフが紫苑に話しかけてきた。


「…………慎一郎に」

「シンイチロウ様………ああ、この方ですね」

「…………ん」


 自然な動作でスタッフとの会話を進める。

 普段は慎一郎の役目だ。しかし、紫苑は彼は自分といるときは、何故か・・・ほとんどしゃべらないということを知っていた。

 なので二人きりの時だけは紫苑が会話を担当する。

 例によって刀は服の影に隠されている。


「それではレジの方へお持ちしますね」

「…………ん」


 そう言ってかごをスタッフに手渡そうとした瞬間、ゾワリと紫苑の感覚に何かが走った。


「…………!!」

「……うおっ!?」


 紫苑は未だに放心中の慎一郎の足を払い、地面に伏せた。

 一瞬遅れて二人の上を風のような何かが通り抜ける。


「紫苑……なに…すんだ…」

「…………何か来た」

「…………っ!!」


 真剣な紫苑の空気に気付き、慎一郎はそこから飛び起きる。


「あ、あのー?」


 急に床に倒れた二人を見て、スタッフが訝しげに声をかけてきた。


「いえ、なんでもないです」


 周りに警戒しながら二人は立ち上がる。

 単にコケただけと思ったのだろう、スタッフはすぐに営業スマイルを顔に張りなおす。


「それでは商品の方を……」


 そう言って手を差し出そうとして、自らの異変に気付いた。

 スタッフの手のひら。そこにぽっかりと大きな穴が開いている。


「あ?ああ…ああああっ!」


 ほんの数秒、店員は思考が止まってしまう。

 その間にもみるみる穴からは血が噴き出す。しかもその勢いは収まることはなく、むしろ増してさえいる。

 噴き出た血液は地面に落ちる前にどこかへ飛んでいく。まるで何かに引き寄せられるかのように。

 慎一郎と紫苑も、その異様な状況に目を奪われていた。

 スタッフの顔はしぼみ、乾き、枯れていく。


「ああ…………あああ……あ」


 最後の一滴が搾り取られると、スタッフの肉体はまるで枯れ枝のようにガサッと音を立てて床に転がった。


「…………!?」

「なにが……あった?」


 さっきまで動いていたスタッフ、その亡骸を見下ろす二人に、声がかけられる。


「ウヒョーッ!!ついてる!俺ついてるぅーっ!!」

「!?」

「っ!」


 声のした方を向くと、そこには赤い男が立っていた。


「そこの黒髪ぺったんのねーちゃん!はじめましてっ!!」


 男は紫苑に向かって叫ぶ。


「このたび、あなたをぶっ殺しに参りました!壁蝨ダニと、もうしまあああああす!!」

微妙に13日に間に合ってませんね……

ポケモンが……ですね……

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