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介入の狼煙(15)

 七の月 五日


 イクヴァール=カッサー、別名山猿女。アルリ村出身。


 泥棒で、街の本屋から書物三冊を盗んだ。背が高く力も強く、取り押さえられる時官憲の腕に噛み付いて血を吹き出させている。連行される間ずっと暴れているので、三人がかりで抑えこまなければならなかった。


 当地にて絞首刑にした。



 七の月 十三日


 ジョー=マルトー、マーチ村出身。別名女殺し。


 街外れの小屋で女五人といかがわしい行為に耽った。相手をした女の中には十一歳の童女もいた。彼らの行為は夜中にしばしば目撃されていて、その度に上手く逃げてしまうので半年も正体がわからずにいた。それがどうにも我慢ができなくなったのか、昼間からおっ始めたところを逮捕されたのである。


 官憲が駆けつけるまでの間、開き直ったのか衆人環視の中でも行為をやめなかった。裁判で罪状を突き付けられると、なるほど貴方様がそう思われるのならそうなのでございましょうな、と気障りな笑みを浮かべて言ったものである。


 斬首の上車裂きの刑に処した。



 八の月 十九日


 サー・コート=サイヤン、通称指揮官殿。ノルカミン市出身。


 彼は元軍人で勲章を賜ったこともある。若い小姓と男同士の行為に耽っていたところを捕らえられた。


 申し開きの場で、我々は悪役を演じたのだと主張して失笑を買った。処刑の見物に来る元部下が多すぎて、いつもより倍の警備を割かなければならなかった。元部下達は楽しい見世物だとばかりに酒を飲みながら野次を飛ばしていた。サイヤンは縛られた両手を振って満面の笑みで刑場に入った。


 お慈悲により立ったまま斬首刑に処した。



 八の月 二十七日


 ジノ=ヴィヴァンガ、ジーグザーヴ街出身。通称旅人の。


 彼は八年前母親を撃ち殺して行方を暗ましていたものである。我が国の端から端まで逃げていたが、先月ついにお縄になった。何故ここまで逃げおおせたというに、彼は同じ場所に留まること長くとも一日であって、官憲がやってきた時にはとっくにそこから去っているのである。


 でも同じ場所には二度と行こうとしなかったので、だんだんと動きが狭まり、ある村で嵐に遭って三日も滞在した時、とうとう追いつかれた。捕物の際に官憲十三人を撃ち殺した。


 逮捕されてなお、彼は旅をやめないと言った。そして実際、川の氾濫のために、今まで通ったことのない地域を通過して、彼は街まで引っ張ってこられたのである。


 焼けた火ばさみで体を五度つまんだ後、車裂きの刑に処した。



 この月 計四名を処刑した。


 ――――――――――――。


 ばたりと本が落ちた。カイラルは胃の中のものをぶちまけようとし、夕飯ですらもとっくになくなっていることに気づいて、苦い胃液を垂れ流した。

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