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硬い=脆い
以外と知ってる人が少ない事実です
少女は結局少年の死体の両腕の肉を粗方食べてしまった、肉としては結構な量だ、幼い外見に似合わず大食漢らしい、もっともやることなすこと外見通りではないが。
「はー、久々にお腹いっぱいー」
「なら、食後の一服でもどうだ?」
ずっと木陰から少女の食事風景をぼんやり眺めていた男はここに来て少女に自ら声をかけた、自分のタバコを奨めながら。
「ん、貴方はだぁれ?」
「俺はこの森で迷ってしまったものでね、状況が判らず困っている」
タバコはスルーされてしまったので自分でくわえて火を付けながら男は言う、しかし目の前の少女が人知を越えた危険なモノであると理解しているだろうにあえて接触するとは男は果たして何を考えているのか?
あるいは男は大して考えてないのかも知れない、男はやはり眠たげな眼で大きく紫煙を吐いた。
「そーなのかー」
「あぁ、出来れば君に協力願いたい、情報でもくれればそれでいい、例えばここは何処なのかとか」
「ここは幻想郷だよ、私は妖怪のルーミア、貴方はその格好だし外から来た人ね」
「ほう?ここは幻想郷と言う場所で君は妖怪、そして俺は外から来たと、もう少し詳しく頼めるか、まずその幻想郷というのが‥‥」
男はあっさり目の前の妖怪ルーミアが知りうる限りの情報は得られた、まずここは外の世界からは隔離されている事、その閉鎖的な世界で人間と妖怪がバランスを保ち共存している事、そして自分のように幻想郷の外の人間が幻想郷に来てしまうケースがたまにある事等だった。
「そういう外から来た外来人と私もたまに会う事があるの、お腹が空いてる時は食べちゃうけど、今はお腹いっぱいだから貴方の事は食べないであげる」
「そうか」
ルーミアは少年を先に補食していた為に満腹で機嫌がよく男は結果的に命拾いした形になる、その事を男自身が自覚しているかどうか。
「ところで貴方の背中と腰の長いのはなに?」
「釣竿」
「そーなのかー、釣竿を持った外来人なんて初めてね、釣りするなら泉もあるよ」
男は呼吸するように嘘を付き、ルーミアも変な関心をしながらわざわざ釣スポットを奨めていた。
「いや、釣りをしている場合でもないな、それより俺のような他の外から来た人間はどうなるんだ?」
「妖怪に食べられたり、神社から外に帰ったり、たまにここを気に入って帰らずに住み着いちゃう人もいるらしいよ」
「なんだ、帰る事も出来るのか」
危機管理がなってない一般人がここに来て襲われあっさり殺されるというのは納得だが案外無事に帰る事も出来るらしい、そこまでヤバい事態でもなかったな男は思った。
男は少し考える、神社とやらから帰れるらしい、ならば一度その神社に行って話を聞くべきか、もっとも男はすぐに外に帰らなければいけない都合もなかった、別にしばらく、あるいは死ぬまでここにいる事になっても男は構わなかった、どうでも良かっただけとも言える。
「じゃあその神社の場所を教えてもらえるか?」
「神社?帰るの?」
「いや、多分直ぐには帰らないとりあえず責任者にでも顔合わせしておくだけだ」
外からくる人間が住み着いてしまう事もあるくらいなら案外ここも面白い場所なのかも知れない、ならばとっとと帰らずこの世界を見ていくのも悪くない、快楽主義の気がある男はそう考えた。
「ふーん、なら案内してあげる、ここからあまり遠くないから私に付いてきて」
「そうか、感謝する」
人喰いの化け物と言えども案外話は通じるものだな、男は思った。
「じゃあ行こう」
ルーミアは地面から少し浮かんでふよふよと移動を始める、男は特にそれには驚きもせずに無惨に肉を食べられた少年の死体を指して言った。
「まだ食える部分が残っているがあれはもういいのか?」
「ん?大丈夫、あのお肉は後で持ち帰るから、料理して食べても美味しいよ」
「そうか、確かにそのままかぶり付くばかりが食べ方じゃないからな」
男はやはり眠たげな眼でそんな事をいいながら新しいタバコを取り出した。
「じゃあ行こうか」
ふよふよ飛んでいくルーミアとタバコを吹かす男が森を進み始めた。




