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 川上は昼食を終えた後、一旦自分の私室に戻ってきていた。


 謎の女からの施しであるタバコの山を置きに来たのだ。


 ベッドサイドの引き出しにゴールデンバットのカートンを納める、その内の一カートンの包みを破って2パックを取り出すと一つを上着のポケットに納めもう一つは封を開け指でパックを軽く叩き詰まったシガレットを一つ取り出すとくわえて火を点けた。


 ふぅ、と川上は長い煙を吐き出す、この食後の一服が終わったら午後からの仕事に取りかからねばならない。


 川上は灰皿を引き寄せ伸びた灰を落とす。


 シガレットに口をつけゆっくりと煙を吸い込む、川上の眼は相変わらず気だるげで眠たげなものだった。


 短くなったタバコを灰皿でもみ消すと川上は立ち上がった、咲夜からは午後からも引き続き掃除を頼まれていた、四時までやったら後は自由にしていいとのお達しだったが。


 時計を見る、時刻は午後一時二分、もう一仕事するか、そう思いながら川上は私室を後にした。


 


 ――紅魔館西側客間


 川上は昼に中断した所から掃除を再開した、切り良く終えていた部屋から次の一室の掃除に移り黙々と作業をする。


 ある時部屋の外の廊下を移動する気配を感じ川上は顔を上げた。


 それ自体はおかしくはない、この館にはメイド妖精も咲夜もレミリアも住民は沢山いるのだから廊下を誰かが歩くのは自然だ。


 だが川上はすでにこの館の住民は大方把握していたし、その者達の体格、履いてる靴、歩き方の癖等覚えていた。


 しかし廊下を歩いているのは館の者ではない、川上はそう判断した、メイド妖精のような小さく軽い体躯の足音でもない、咲夜の体の軸がまるでブレず足音が殆どしない歩みでもない、この気配は‥‥。


 侵入者かあるいは客か、川上は自分のいる部屋の扉の前を気配が通り過ぎたのを見計らって無音で扉を開け気配の主を確認した。


 果たしてそれは客だった、いや、館の人間なら鼠とでも言うかも知れないが、川上が昨日まで世話になった普通の魔法使いがそこにいた。


 そういえばまた来ると言っていた事を川上は思いだした、川上は廊下へと出る。


 「ん?」


 気配に気付き魔理沙も振り向いた。


 「よお川上、元気そうだな、上手くやってるか」


 「なんとかな」


 気さくに声をかけてくる魔理沙に川上は答える。


 「ま、お前みたいな奴はどこでもしぶとくやっていきそうな気はするぜ、まぁ元気そうでよかったぜ」


 「昨日の今日でどうこうなりはしないだろう」


 端的に答える川上に魔理沙はくくっと笑う。


 「相変わらず無愛想な奴だな、今日はこれを返しに来たんだぜ」


 そう言いながら魔理沙は小脇に抱えてた服を川上に手渡す、川上が幻想郷に訪れた時に纏っていた黒服だ。


 「あぁ、ありがとう」


 受け取りながら川上は魔理沙に服を借りていた事を思い出す、あれは部屋にあるが返すなら洗濯してからが礼儀か、川上はそう思った。


 「それと俺が借りた服だが‥‥」


 「あぁあれか、いい、いいあんなものどうせ私には着れないし持っててもしょうがないものだったんだ、お前にやるよ」


 川上の言葉を遮って魔理沙は言った、どうやら彼女には必要のないものだったらしい。


 「なら有り難く貰っておく」


 寝間着にはちょうどいいだろう、川上はそう思った。


 「しかし、何だな」


 魔理沙は使用人服の川上を上から下へと見た。


 「こうして見ると中々様になってるじゃないか、似合ってるぜ」


 「そうか」


 社交辞令なのか、いや彼女の性格から考えれば社交辞令ではなく多分に本心なのだろうお褒めの言葉にも川上の返答は素っ気なかった。


 そんな川上の態度に何が可笑しいのかまた魔理沙はくっくと笑って言った。


 「ま、格好は様になってるけど使用人ならその無愛想さは何とかした方がいいとおもうぜ」


 「そうか」


 魔理沙の忠告に川上はまるで分かっていない答えを返す、こりゃだめだな、魔理沙は思った。


 「んじゃあ私は図書館で本を借りてくるからまたな」


 「あぁ」


 そう言って地下図書館の方へと向かっていく魔理沙を最後まで見届けず川上は部屋に戻った。

 

 懐からタバコを取り出し火を点けるとくわえタバコのまま掃除の続きへと戻った。


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