しけい執行中
驚くべきことに私はまだ生きていた。
初代担当が確か四十代の中年だったのは覚えている。
その中年が老年となり、ある日に若い人間を連れてきて言った。
「後任だ」
二代目担当は若い女だった。
初代と共にそれを続け、ある時から初代は消えた。
若い女は中年となる直前にこう言った。
「前任は死んだよ」
二代目担当が中年となり少しして、初代の頃と同じように新しい人間を連れてきた。
今度は若い男だった。
二代目担当は初代と同じように私へ言う。
「後任。私のね」
三代目担当と二代目担当は私にそれを続ける。
やがて三代目担当は中年となり、ある日、私へ言うのだ。
「前任は死にました」
驚くべき事に私は生きていた。
担当が三代も変わったのに。
初代は中年から老年になり姿を消した。
二代目は若年から老年となりやはり姿を消した。
そして、三代目ももう中年となっている。
どう少なく見積もっても八十年。あるいは百年近く過ぎているはずなのに。
それでも私は生きていた。
「先生」
遂に私は三代目に問う。
「私はいつまで生きなければならないのでしょう」
三代目は答えることなくそれを開始した。
痛みに私は叫んだ。
血が流れる音がした。
指を落とされる音がした。
髪の毛を燃やされる音がした。
骨を断たれる音がした。
そして、それら全てが癒される音がした。
癒されているのが感覚で理解できた。
*
時は遡り、おおよそ百年前。
とある富豪が私財を投げ打ち一人の死刑囚を買い取った。
「頼みがある」
後に初代担当となる医師に富豪は言った。
「この男を出来る限り苦しめて殺してくれ。この男は娘の命を奪ったのだ。だから。だから――」
簡単には殺してくれるな。
出来る限り死を引き延ばしてほしい。
初代の前に積まれた金額は子供や孫どころかその遥か先の子孫まで遊んで暮らせそうなほどだった。
故に初代は引き受けた。
「かしこまりました。ギリギリまで痛めつけて。その都度に死から生還させましょう」
*
噂によればとある死刑囚の死刑は未だ執行中らしい。
とはいえ、二百年も続く執行ともなれば。
最早それは私刑の様相を醸し出してくるのではないだろうか。




