表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三王女ヴァレンティーナ〜異世界人の子孫にして王国最後の聖女  作者: 帰り花
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/23

第2話 第三王女殿下の魔力

宮廷魔道士サムエーレ視点


「宮廷魔道士サムエーレ、国王陛下の御下命により罷り越しました」


ヴァレンティーナ王女殿下の部屋に通され、挨拶をして顔を上げ、そのお姿をひと目見た瞬間。

俺は固まった。



なんなのだ。

この見たこともない魔力の輝きは……。

そして俺を見つめてくる赤紫の瞳の眼力……。



フォンタナ王国第三王女ヴァレンティーナ殿下。

国王陛下と側妃コンチェッタ殿下の間に生まれた姫君だ。

コンチェッタ殿下と同じ黒髪に赤紫の瞳。

お二方の容姿を引き継いだ目鼻立ちの整った愛らしい顔。

生後五か月ほどの乳児。


その乳児の体全体が光り輝くように魔力を纏っているのが見える。

体内の魔力が体全体から滲み出るように溢れている。

その魔力は揺らぎ、巡りながら体全体を包み込むように常に一定の範囲内にあって、しかも体内の魔力とひとつになっている。

乳児の小さな体では体内に収まり切らない魔力を、体の周りの空間をも器にして保持しているかのようだ。


なんとも不思議な形態だ。


部屋に入る前から大きな魔力の気配は感じていたが、その形態を目の当たりにして俺は度肝を抜かれた。



「お待ちしておりました。サムエーレ殿」


王女殿下の乳母に声をかけられ、俺はようやく我に返った。


「どうぞ、こちらへ。ヴァレンティーナ王女殿下に挨拶をなさってくださいませ」


乳母と侍女二人に見守られ、厚めの布地が広げられた真ん中に座りこちらを見つめているヴァレンティーナ王女殿下の御前に進み出て跪く。


「ヴァレンティーナ王女殿下。初めてお目にかかります。宮廷魔道士サムエーレにございます。どうぞお見知りおきください」

「あぶう」


まるで俺の挨拶に応えるかのようにヴァレンティーナ王女殿下が声を発した。




俺は国王陛下からヴァレンティーナ王女殿下の魔力と使える魔法についてひと通り調べるように、と命じられここへ来た。

コンチェッタ殿下や乳母から、王女殿下は魔力量が非常に多いように思われる、そのためか食の量もかなり多く乳母が足りないほどだ、生後半年にも満たないのに遊びで魔法を使っているようだ、などといくつも報告が上がっていたそうで、実際のところどうなのか俺が調べることになったのだ。



俺は十九歳。

貴族学院を卒業後すぐ宮廷魔道士となった。

そんなまだまだ若造に過ぎない俺がなぜ重要なお役目を仰せつかったのか。



俺は生体の魔力が見える目を持っている。

さらに魔力量は膨大だ。

このような人間は数が少ない。

少なくとも宮廷魔道士の中で生体の魔力が見える目を持っているのは今のところ俺だけだ。

そして治癒や回復は無理だが、それ以外のほとんどの属性の魔法、魔術は不自由なく使える。

自分で言うのもなんだが、俺の能力はあらゆる面で宮廷魔道士として群を抜いている。


その俺が見れば、殿下の魔力量もわかるし、魔法を使っているのかどうかもわかる。

だからこそ俺はヴァレンティーナ王女殿下の魔力を調べる役目を仰せつかったのだ。

当然、後宮の殿下の部屋に入る必要があるのだから、俺はあらためて身辺調査され、仕事ぶりや為人も見極められたことだろう。

そこで合格点をいただいたから、こうして殿下の御前に跪く栄誉を与えられたのだ。

正直言ってここへ来るまでは鼻高々、内心で驕っていた。



だがヴァレンティーナ王女殿下をひと目見てわかった。

上には上がいるのだと。

俺など殿下の足元にも及ばない。



乳児であるにもかかわらず、ヴァレンティーナ王女殿下の魔力量は他を圧倒している。

その輝きも他を圧倒するものだ。

そして俺がこの部屋に入った時からずっと、殿下は俺を見つめている。

まるで俺を観察しているかのようだ。

まだ乳児なのに風格すら感じられる。



「早速ですが、ヴァレンティーナ王女殿下にお目にかかり、どう思われましたか?」

「ヴァレンティーナ王女殿下はお体全体が魔力で光り輝いていらっしゃいます。魔力量は他を圧倒するほど膨大です。しかも、この小さなお体がそれに負けていない。このような方は初めて拝見しました。驚いております」

「まあ……そうなのですか」

「私がこちらへ入室する直前の殿下のご様子はどのようなものでしたでしょうか」

「サムエーレ殿が入室なさる少し前からずっと、扉を見つめていらっしゃいました」

「なるほど、そうでしたか」


殿下は魔力の気配に敏感なようだ。

魔力量が膨大な俺が部屋に近づいてくるのに気づき、興味を引かれて扉を見つめていたのだろう。


殿下がこれまでに魔力量が膨大な者に会ったことがあるとしたら、それはコンチェッタ側妃殿下だけだと思われる。

となれば殿下が俺に興味を持ち、今なさっているようにじっと俺を観察するのは頷ける。


俺はこの小さな姫君にますます興味が湧いてきた。



「早速、どのような魔法が使えているのか拝見しますが、その際、殿下のお手を取る必要も出てくるかと思われます。お許し願えましょうか」

「ええ。必要であればそうなさってください。ですが力加減にはくれぐれも気をつけてくださいまし」

「ご懸念には及びません。では、まず殿下に楽しい物をご覧に入れます」


俺は少し殿下に近づき、ポケットの中から準備しておいた色紙を花びらの形に切り抜いたものを十枚取り出して、右の手のひらに乗せた。

殿下を見ながら左人差し指でそれを指し示しす。

殿下の目がそこへ向く。

俺は、風魔法でそれを浮かせ、空中で舞い踊らせた。


「あー!……あぶう!」


殿下が目を見開き、声を上げて喜んでくださる。

風を操り色紙の花びらを手のひらの上に戻すと、殿下が両手を動かして、もう一度やれ、とばかりに声を上げた。


「あー!……たぁ!」

「ではもう一度ご覧に入れます」

「たぁ!」


殿下がさらに目を凝らして俺を見る。

俺は再び色紙の花びらを空中で舞い踊らせた。


「うー!……まぁ!」


俺が再び手のひらの上に色紙の花びらを戻すと、殿下が声を上げて俺の方へ手を伸ばそうとした。

すかさず殿下のお側に寄り、手のひらの上の色紙の花びらをお見せする。

殿下の手がまた伸びてきたので、俺は色紙の花びらを一枚、殿下に差し出した。

すると殿下が小さな両手のひらを揃えるようにして上に向けたので、俺はそこに色紙の花びらをそっと置いた。

殿下はじっとそれを見つめる。



と、その色紙の花びらがふわっと宙に浮いた。


「「「え?!」」」


乳母と侍女たちの声が重なる。


「きゃう!……あー!……たぁ!」


殿下は喜びの声を上げて色紙の花びらを舞い踊らせている。

声は出さなかったが俺も驚いていた。



まず始めに殿下の関心を引こうと花びらの舞いをお見せしただけだったのだが、殿下はいきなり同じことをなさった。


殿下は風魔法を使ったのだ。

俺と同じように。

だが、俺は殿下にやり方をお教えしたわけじゃない。

ただお見せしただけだ。


ということは、おそらく、殿下は生体の魔力が見えていらっしゃるのだ。

だが、それだけではないかもしれない。

俺が使った風魔法を見ただけでそっくり真似した。

見ただけで真似できた、ということは……。


ある予感に俺の胸の動悸が激しくなる。



満足なさったのか、殿下は色紙の花びらをご自分の両手のひらの上に戻し、ニコニコと笑いかけながら俺を見てきた。

とにかく俺は殿下の関心を引けたようだ。


「お見事でございます、殿下」

「たぁ!」


殿下は急に手のひらに乗せていた色紙の花びらを床に落とし、体勢を変えるとハイハイを始めた。

少し動いてくるっと振り返り、俺を見て声を出す。


「だぁだぁ!」


また少しハイハイしては振り返って俺を見る。


これは俺について来いと仰っているようだ。


「お供いたします」


殿下の後を追うようにゆっくり歩くと、殿下は今度は振り向かずまっすぐハイハイでおもちゃが並んでいるところへ進む。

そして数あるおもちゃの中から木の柄の先に丸い木製の玉がついたラトルを引きずり出した。

俺は殿下のお側に跪く。



殿下は俺を見上げて笑顔になると、そのラトルを握って振り始めた。

ラトルがガラガラと音を立てる。


乳児の手で持って振るには重いのではないのか?


と思ったのだが。

よく見れば殿下はラトルを握ってはいなかった。


それもそうだ。

殿下の小さな手ではラトルの柄を握れない。

ましてや持ち上げるなど無理な話だ。



殿下の手はラトルの柄に触れているだけだった。

殿下がその手を動かすだけでラトルも一緒に動いていたのだ。

宙に浮いた状態で。



これは重力魔法か?



俺は呆気に取られて殿下のお姿を見つめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ