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第3話 手探りの検証

 煮沸し、冷ました水に口をつけた俺は、次の食料問題について考える。

 水を作るために能力《想創神域》を使い、様々な検証を行った結果、飲水の安定供給に繋がった。

 今回も先程同様、能力を使わないとおそらく食糧難に陥るだろう。

 いや待てよ……。食べ物を能力《想創神域》で作りだすというのはどうだろう…

 しかし、先程の水を作り出した一件を思い出し、やめる。何もない場所から何かを作り出すのはリターンに見合わないほどの体力が必要だからだ。

 煮沸できる環境があるので、きのみやどんぐりを灰汁抜きして食べれることはできるが、きのみの可食の選別はできないし、灰汁抜きにも時間がかかる。飢えを満たすには少し物足りない。


 俺は適当な岩の上に登り、川を見る。川は陽を受けてゆらゆらと銀色に揺れ、石の間を縫って水がさらさらと音を立てていた。空腹じゃなければしばらく見惚れていたかもしれない。

 でも今は食料問題。俺の食欲は感受性など簡単に薙ぎ払ってしまうのだ。


「お……!」


 魚影が見える、ということは魚が取れるな。

 俺は岩から下り、魚を取るための道具を考える。

 仕掛け漁は正直、道具の形もわからないし、効率的に魚を穫るための石の配置などもわからない、パスだ。


 釣りも考えたけど、これも一匹ずつ、更に餌や針、糸など森のなかで賄えない素材がたくさん必要だ、何より時間が掛かりそう、パス。


 と、いうことは魚影も見えているし、ここはやっぱり銛での捕獲しかないでしょ!ってことでさっそく材料の選定に入る。

 銛の構造自体シンプルだ、銛先と柄、これだけだ。柄は木製で問題ないとしても、銛先は木製だとどんどん先端が潰れてくる。なので石製にしよう。


 枝も石も無限に転がっている。ここは川辺で今は森の中だ。

 素材に困ることはない、俺は適当に枝を集める、煮沸する際に作った焚き火に焚べる用の枝の分も余計に集めておこう。

 結構な量を集めたところで、銛作成スタートだ。


「《想創神域》」


 音が遠ざかり、感覚が研ぎ澄まされる。

手の枝を銛の柄に、反対に持った石を銛先に変化させる。

 枝は、小枝がどんどん縮んでいき、ヤスリ掛けされたような表面に綺麗に仕上がる。

 石はグニャグニャと蠢く、創造の際の過程の動きだ。そして石は突いた魚が抜けないための返しが付いた三叉の銛先へと変化した。

よし、上出来だ。あとはこの完成した2つを組み合わせると……


「ん?刺さらない……?いや、刺さるけどしっくりはまらない……?」


 柄を銛先に差し込んでもポロリと落ちる。これでは漁に使えない。

 おそらくイメージの精密さがだめだったのか。

柄の外径は、銛先の接続部の内径より小さくできてしまったのだ。

 別々で作り出すとイメージのズレでこんな弊害もでちゃうのかぁ……

じゃあ異なる2つの素材を使って、一つの物を作ることはどうだろう。

 今度は手にある柄と銛先を一つにするイメージ。両手のものが引き合うような感覚。柄が差し込まれた穴の中で、ガチっと固定される感触が伝わってきた。


「おぉー、できた!かっけぇ〜」


 俺は銛を眺め、その出来に非常に満足した。

木製の柄、石製の銛先による十分すぎる一品だ。

 この銛を使い魚を取り、焚き火で魚を焼く。完璧なまでの流れ、美しささえ漂うサバイバルライフ!今の万能感纏う俺を止める事など、何人たりともできないのだ!!

 銛を片手に俺は川へ駆ける、その目的は飢えた腹を満たすため!!



 結果、捕れませんでした。



 なんだあの反応速度!なんだあの速さ!!やつら未来予測でもしているんじゃないか!?俺は苛立ちをぶつけるように水面を蹴る、それに反応した魚影が逃げるように散っていった。


 あ……これはいいこと思いついた……。


 俺は《想創神域》で上流からの川の流れを受け止めるような形でUの字型の囲いをつくる、川底の丸石をそのまま囲いに変換した形だ。

 浅瀬で流れを受け止めるような、そんな形を意識した。隙間から魚が逃げられないように念入りに隙間を埋める。


 さらに上流に上った俺は、銛の柄を水面に叩きつけ、魚影を追いやる。目標は囲いの中!

 逃げられた魚たちもいたが、囲いまでうまく追い込むと、一匹行き場を失った影が逃げ道を探すように小刻みに動いている。

 俺はその影に銛を突き立てた。銛の先がぐっと止まり、手元に重みが走る。

 水面で魚が暴れ、水しぶきが飛び散る。

 俺は銛を引き抜き、突き刺さった魚を掲げた。



「獲ったどぉ〜〜〜っ!!!」


 掲げた銛の先には、ビチビチと暴れる魚が突き刺さっていた。






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