第5話 デートをすることになりました
妙な空気が流れる。
「う"、うんっ」
誤魔化すように咳ばらいをして話を変える。
「紗妃の現状に関してなんとなく理解できた。次は恋愛について調べてきたから聞いてくれ」
まさか恋愛って言葉を辞書で引く日が来るとは思わなかった。ネットでも『恋愛とは』って検索してみた。
我ながら何やっているんだろうと思ったが、何事も教えるには定義が必要なはずだ! たぶん!
調べてきたことを言う。
「恋愛とは特定の異性に特別の愛情を感じて恋い慕うこと。またその感情。だな」
「ふぅーん……よくわからないわ」
「正直俺もこれだとよくわからない」
「なら、なんで言ったのよ」
「一応恋愛の定義?のようなことを知っておいた方が良いかなと……悪い迷走してたかも」
「私も変なことをお願いしている自覚はあるから気にしないわ。むしろいろいろ考えてくれたみたいで感謝してる」
「そうか……それにしても難しいな……」
「そうね。難しいわ……」
勉強ならまだしも恋愛っていうのがなかなかに曲者だ。引き受けた以上力になりたいが……
「うーん……」
頭を悩ませていると紗妃が気が付いたように言う。
「もうこんな時間なのね」
紗妃の言葉を聞いて時間を確認すると、思っていたよりも時間が過ぎていることに気が付く。
「今日はここまでにしましょう」
「そうだな」
帰ろうと思い立ち上がる。
「ねぇ」
「うん?」
「お昼、まだよね?」
「あぁ、これから考えるところ」
「……もしよかったらうちで食べて行かない?」
「俺は非常に助かるけど、いいのか?」
「えぇ、ちょっとしたお礼だと思ってくれたらいいわ」
「なら、お言葉に甘えようかな」
「すぐ用意するわ」
そういって部屋をで出て行ってしまう。俺は一人部屋に取り残されてしまった。なんとなく部屋の中を見回すとタンスの上に飾ってある一枚の写真が目に入る。俺と紗妃が小さいころの写真だ。
「なつかしいな……」
引っ込み思案だった紗妃はよく俺の後ろに隠れていたっけ
懐かしい記憶がよみがえる。
この部屋も昔は子供部屋みたいな感じだったがすっかり変わっている。
ハンドクリームやメイク道具にコスメなど、おしゃれ関連の雑誌などが目に留まる。男の俺の部屋とは置いてあるものも全然違う。俺の部屋にあるものといえば漫画とかゲームくらいだ。
男女の違いを感じているといつの間にか戻ってきたさき紗妃から非難の声が飛んでくる。
「準備を終えて呼びに来たら……あんまり女の子の部屋をじろじろ見るのは感心しないわ」
あらぬ誤解をされてしまい、やましい気持ちがなかったと慌てて弁明する。
「そんなつもりじゃ!」
「でも見てたでしょ?」
「……はい……気を付けます」
何も言い返すことが出来ず素直に謝罪する。
「冗談よ、ちょっとからかってみただけ。部屋を見られるくらい気にしないわ。さすがにタンスとかを勝手に開けられたら困るけど…」
「そんなことしないって」
さすがにそこまで非常識ではない。
「知っているわ」
いたずらっぽく微笑む紗妃。
「お昼ご飯の準備ができたわ。下に行って一緒に食べましょ」
そう言って歩き出した紗妃に急いでついていった。
紗妃の後について階段を降りていくとその途中でお昼ご飯のメニューが分かった。
「カレーか」
「そうよ。昨日の残り物で悪いけれど」
「そんなことない。カレー好きだし」
食卓に着くとさらにおいしそうなカレーのにおいがする。
「おいしそうだな」
「食べましょう」
「そうだな、いただきます」
「いただきます」
まっずは一口。
「うん、うまい」
「よかったわ」
おなかがすいていたからか、止まらずどんどん食べ進める。気が付けばもうなくなってしまった 。
「ふぅ、ごちそうさま」
「お粗末様」
一息ついてと紗妃が思い出したかのように言う。
「そうださっき聞こうと思っていたんだけど、佑真君はデートしたことあるかしら?」
「ん゛っ!? ゴホッ、ゴホッッ!」
突然の質問に飲んでいた水を吹き出しそうになり必死に堪えたら変なところに入ってしまい咽る。
「大丈夫?」
紗妃がティッシュを手渡してくれる。それで口元をふきながら答える。
「大丈夫だ。それにしても、いきなりだな」
「さっき聞こうと思っていたけど忘れていたのよ。それで?」
「まぁ……多くはないけど……ある」
「それってやっぱりお互い恋愛感情があるからデートに行くのかしら?」
「うーん、どうだろうな……少なくとも誘った方にはそういう感情があるかもしれないけど、誘われた方はそうとも限らないんじゃないか?」
「そうなの?」
「誘われたからとりあえず行ってみるけど合わなかったらそれっきりなんてこともあるし。それに少し違うかもしれないけど、マッチングアプリとかナンパとかもデートに行ってから関係が進展ってこともあるだろ?」
「確かにそうね……私もデートしてみたら少しは恋愛のことわかるようになるかしら?」
「それに関してははっきりしたことは言えないが、やってみる価値はあるんじゃないか?」
「そうよね。なら来週でいいかしら?」
「なにが?」
あきれた目でこちらを見てくる。
「なにってデートに決まっているでしょ」
「だれとだれが?」
「私とあなた以外にだれがいるの?」
「は!? 俺と!?」
「そうよ。私にデートに行くような男友達はいないわ」
「う、うーん……」
「いやなの?」
「いやじゃないけど」
「ならいいじゃない。協力してくれるんでしょ?」
「……わかったよ」
「なら決まりね。とりあえずやってみましょう」
「そうだな」
こうして俺と紗妃のデートが急遽決まったのだった。
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