第3話 恋愛感情がわからない私
本日ラストの更新です!
佑真君に家庭教師をお願いしてはじめての登校日。いつもと変わらない日々を過ごす。
「紗妃! おはよう!」
「おはよう」
友達と挨拶を交わしいつもの学校での一日が始まった。
何も変わらない一日のはずだ。でもいつもと違うことが一つだけあった。
友達との会話の中で出てくる話題。
「ねぇねぇ、昨日のドラマ見た?」
「あの話題になっていた恋愛ドラマ?」
「そう!」
「見た見た」
友達がドラマの話で盛り上がる。
「紗妃ちゃんも見た?」
「えぇ、面白かったわ」
「だよね! すっごくドキドキしたよね! いいなぁ……私もあんな恋愛してみたい」
「ねー! 彼氏ほしいー」
皆が楽しそうに話している。あのドラマは面白かった……と思う。だけどみんなのようにドキドキしたかと言われると、していない。もちろん彼氏が欲しいとも思えなかった。
だけど私以外のみんなはそうではないらしい。私だけみんなと違う。
「そういえばあれ、どうなったの?」
「あれ?」
「もう! わかっているくせに! 隣のクラスの子に声かけられてんでしょ!」
「別に何もないって! そんなんじゃないから!」
「えー怪しい。紗妃も気になるよね」
「そうね」
「もー、紗妃ちゃんまで。ほんとに何もないって!」
困ったような嬉しいような反応を見せる友達。本当に楽しそうだ。
私は恋愛感情が分からない。恋愛ドラマや漫画を見てもみんなと同じようにドキドキすることもなければ、誰かの恋愛話を楽しんだり気になったりしない。ましてや誰かを好きになったことも一度もない。私はきっと普通ではないのだと思う。みんなが普通に持ってい感情が分からない。
私は異常だ。
私はみんなと同じ普通として振る舞わなくてはいけない。話を合わせることくらいできる。それが私を誤魔化し守る手段だと思っている。
でも、私には恋愛感情というものが分からないのだ。私が普通ではなく異常だという事実は変わらない。
その現実を何の変哲もない会話の中で何度も思い知らされてきた。
「そういえば知ってる?」
「なにが?」
「二組の佐藤さん、彼氏できたんだって」
「え! ほんとに!? だれだれ?」
「三組の野球部の人だって」
気づけば話が変わっている。
「武藤君だったかしら」
会話の中に入る。
「そうそう! 紗妃よく知ってるね」
「たまたま耳にしたのよ」
「いいなぁ、彼氏……」
「そうね」
「やっぱり紗妃ちゃんもそう思う?」
「えぇ」
思わない……思えない。普通に合わせて話す。
「だよね!」
「でも紗妃ちゃんならすぐにできそうだよね」
そうだったらどれだけよかったことことか……
「確かに美人だし」
「ありがとう」
私はきっとうまく笑えているはず。
「ねぇ、紗妃ちゃんはどんな人がタイプなの」
そんなこと考えたこともなかった……ふつうはそういうものがあるのだろうか?
「そうね……あなたの好みのタイプはどんな人なの?」
「私!? 私はねー、背が高くて運動が出来て、イケメンでねぇ……」
楽しそうに自分の好みの男の子について話始める。これが普通。
「そんな人いるわけないでしょ。ドラマの見過ぎ」
「いいじゃん別に!」
「紗妃からもなんか言ってやって」
「そう? 自分の好みを素直に言えるのは素敵だと思うわ」
「さっすが紗妃ちゃん! わかってる!」
「もー、甘やかしちゃダメだよ!」
この言葉は嘘ではない。本当に素敵なことだと思う。みんなキラキラと輝いている。羨ましい……私もみんなと同じように……
いつもなら苦しく、虚しい気持ちになっていたが今日は違っていた。
思い当たる理由は一つしかない。小さいころからずっと一緒だった幼馴染の佑真君。馬鹿にするわけでもなく適当にあしらうわけでもなく真剣に話を聞いてくれた。一人で抱え込んでいたこの気持ちを話しただけでもだいぶ気持ちが楽になった。
それだけでなく彼は私のばかげたお願いを引き受けてくれた。昔から変わらず優しかった。
佑真君とならきっと異常な私も変えられるのではないかと淡い期待を抱いてしまう。
「紗妃、何かいいことでもあった?」
そんなことわを考えると不意に話しかけられる。
「え?」
「なんか嬉しそうに見えたからさ」
もしかしたら顔に出ていたのかしら……
「ふふっ、ちょっとね」
「えー! なになに!? 教えて!」
「秘密」
変わることが出来るかもしれない、そんな未来が来ると少しだけ夢見てしまっているみたい。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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