第15話 尾行
二人はまずはカフェに入り少し早めのお昼ご飯を食べている。そんな二人の様子を店の外から眺める。窓際の席に座っているので見やすが気を抜くとこちらに気が付かれてしまいそうなので注意が必要だ。会話を楽しんでいる様子の二人。男の方は終始笑顔で話をしている。一方紗妃はいつもながらクールな感じだがどこか緊張しているようだ。
しばらくして料理が運ばれてくる。食事をしながらも楽しそうな様子で会話をしている。二人のことを見ながらも料理に目が行ってしまいおなかが鳴りそうになる。
必死に堪えているとようやく食事を終えた二人が店から出てきた。
「映画の始まる時間までいい感じの時間になったしそろそろ映画館に行きましょうか」
「そうね」
そんな会話が聞こえてきたと思ったら二人が歩き始めてしまった。俺もあわてて歩き出す。二人に気が付かれてしまわないように少し離れたところから様子を窺いながら後ろをついて行く。
五分ほど歩くとようやく映画館に到着した。
「まずはチケットを取りに行きましょうか」
「わかったわ。それとわざわざ予約してくれてありがとう」
「いえ、誘ったのは僕ですしこれくらい気にしないでください」
券売機から今日見る予定のちチケットを受け取った二人。どうやら今日見る映画は最近話題になっている恋愛もののようだ。俺もどこかのタイミングで見に行こうと思っていたやつだ。
「何か買いますか?」
「そうね……飲み物だけ買うわ」
「さっき食べてきたばかりですもんね。僕もそうします」
二人はそういって飲み物を購入し商品を受け取ると映画館の奥に入っていた。
さすがに映画が終わるまでは待っていられない。そう思い帰ろうと思った瞬間急に後ろから声をかけられる。
「ちょっとそこの君。怪しいな。一体何をやっているんだ?」
「ーーっ!?」
心臓が飛び出しそうになるほど驚いた俺は顔を隠すようにしながらここから立ち去るべく言い訳をする。
「いや、ちょっと知り合いがいたというか……別に怪しいことは何も……」
とっさに言い訳をしようと思ったがうまく言葉が出ずむしろ怪しさが増している気がする。何とか挽回しようと必死に思考を巡らせていると奇妙な声が聞こえてきて、話しかけてきた人の方向く。
「くっくく……」
そこには必死に笑いをこらえている琴美さんの姿があった。
「ぷっくく……何その犯人みたいな言い訳……怪しすぎだって」
我慢できなかったのか笑いだす琴美さん。
「……こんなところで何やっているんですか?」
「それはこっちのセリフだよ。怪しい男がいるなって思ったら知っている顔でびっくりしたよ。正直声をかけようか迷ったけど知り合いが警察のお世話になるのは見たくなかったしね」
「警察って……そんな大げさな」
「いやいや? 自覚ないかもしれないけど結構不審者だったよ」
「うぐっ……」
実際に自分のやっていたことといい反論できない。
「それで何をやっていたんだい?」
俺は素直に ここにいた理由を説明した。幼馴染みのデートにこっそりついてきたなんて改めて言葉にするとなんだかとてもやばいやつのように感じてしまう。
「うっわぁ……」
「なんですか、うわって」
「そう言うのやめた方がいいと思うよ」
琴美さんから冷たい視線が飛んでくる。
「ちょっと気になったというか、家庭教師?みたいなことしてるからってだけで……」
「全然言い訳になってないから」
自分でもほんの少しだけ自覚があったので黙る。
「まぁまぁここで立ち話もなんだしそこのお店に入ろうよ」
「い、いや、俺は帰ろうと思ってて」
「えー? いいのかなぁー?」
「な、何がですか?」
ニヤニヤと笑う琴美さんの姿を見て嫌な予感がする。
「幼馴染みをストーカーしてたなんて他の人に知られたら大変だよねぇー」
「……なにをすればいいんですか?」
「話が早くていいね。ちょうどお昼だしそれで勘弁してあげるよ」
「はぁ……わかりましたよ」
「やったね! ほら、早く行くよ」
そう言って店の方へと歩き出す琴美さん。ここは自分で蒔いてしまった種だし運が悪かったと思って甘んじて受け入れよう。
それにお腹も空いていたしちょうどいいか。
そう思って俺は琴美さんの後を追って店の中へと入った。
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