第13話 デートの約束
今週も紗妃の家庭教師をするために白雪家を訪れていた俺は紗妃から衝撃的な報告を受けていた 。
「告白されてデートに行く約束をした!?」
「そうよ」
「付き合ったってことか!?」
「違うわ、デートに誘われていくだけよ。付き合うとかそういう話はしてないわ」
「うん?……あー……うん?」
淡々と何事もないかのようにデートの約束をしてきたという紗妃。告白されたってことでもなかなかの衝撃だったのに、さらにその男とデートに行くというのはそれを上回る衝撃だった。
「いつ行くんだ?」
「明日よ」
「明日!?」
「さっきから驚きすぎよ」
「こんなこと言われた驚くに決まっているだろ!?」
なんか俺と紗妃との温度差が激しい。頭が痛くなってきた。
「ふぅ……その男のことが気になっているのか」
気持ちを落ち着けるために大きく息を吐いてから聞く。
「……どうかしら……よくわからないわ。だって、私は恋愛というものが分からないもの……」
どこか遠くを見ているかのような紗妃。
「それに佑真君が言ったんじゃない。恋愛を理解するのにデートをすることは意味がありそうだって、デートを通して恋愛感情が生まれることもあるって」
「確かにそんなこと言ってけれど……」
「私の悩みもここでしれない終わるかもしれない、終わらないにしても何か得られるものがあるかもしれないわ。断る理由がないもの」
「だからって……」
そんな煮え切らない俺の様子を見て紗妃が言う。
「デートに行くことは反対なの?」
「……いや……そういうわけではないんだけど……」
紗妃の言葉を聞いて言葉に詰まる。このデートを通してもしかしたら紗妃のな悩みが解決されるかもしれない。それなら反対する理由なんてないはずだ。それなのに俺は……
うまく言葉にできない感情が渦巻く。自分でもよくわからない状態に困惑していると紗妃が言う。
「ならいいじゃない。それにこういってデートのためにこの前のお試しデートをしたんじゃない」
「……そうだな」
たしかに紗妃の言う通りだ。こんなに早く本番が来るなんて思っていなかった。まだ先のことだと心のどこかで思っていたのだ。きっとそれがデートにすんなりと送りだせなかった理由だろうと自分の中で結論づける。
「楽しんで来いよ」
「えぇ、せっかく佑真君が私に時間を割いてくれたんだもの無駄にはしないわ」
紗妃の言葉になどこか力こもっていて。もしかしたら緊張しているのかもしれない。自分の悩みに向き合っているのだから無理もない。
「気楽にな」
無難な言葉を送る。
「平気よ」
「そうか」
紗妃が平気というのだから俺はその言葉を信じるだけだ。
「……ちなみになんだけど、何時から待ち合わせ?」
「11時に駅前ってことになってるけど」
「ふーん……」
「なに?」
「い、いや、なんでもない! ちょっと気になっただけだからっ」
「? そう?」
不思議そうに首をかしげる紗妃から視線を逸らす。特に意味なんてない。ただほんの少しだけ気になっただけで他意なんてない。誰に言い訳しているのかわからないがそんなことを心の中で言う。
「まぁいいわ。今日の授業を始めましょう」
「そうだな」
紗妃がデートに行くってことが頭の片隅にちらつくが、とりあえず俺は自分の役割に専念することにした。