第12話 デートの誘い
校舎裏へと行くと人影があった。近づいていくとこちらに気が付いたのか振り返る。
「白雪さん来てくれたんですね! ありがとうございます」
笑顔でこちらに駆け寄ってきた。私はさっそく本題に入ることにした。
「話って何かしら?」
私の問いかけで動きが硬くなり、言いにくそうにもじもじとする。これまでと似たような反応だ。
「えっと……その……」
こちらにも緊張が伝わってくるようで、気まずい気持ちになってしまう。この時間は何度経験しても苦手だ。
黙って待っているとどこか覚悟を決めた表情となり、ゆっくりと口を開く。
「白雪さん! 初めて見た時から気になっていて、この前話してみて自分の気持ちに確信が持てました!」
わずかに声が震えているが声に力が入っている。
「だから……その……もしよかったら僕とデートしてくれませんかっ?」
予想外の言葉に反応が遅れてしまった。
「……デート?」
「は、はい!」
似たような状況な何度か経験があるが今回みたいにデートの誘いを受けたのは初めてだった。
「えっと……告白ではないってことかしら?」
「いえ、告白です!」
「??」
状況が理解できずに困惑してしまう。
「でも、デートて言わなかったかしら?」
「言いました。お互い相手のことをよく知らないと思うんです。そんな状態で付き合ったほしいって言われても困ってしまう と思ったので、デートに誘いました!」
お互いのことをよく知らないのに何でーー
そんな言葉が出そうになったが押し込める。恋愛感情が分からない私が聞いてもいきっと意味がないと思ったからだ。
「……どうでしょうか?」
ためらいがちに聞いてくる水島君。その表情は少し不安げに見えた。
彼の言葉を聞いて考えるとこの前の佑真君とれ恋愛を理解するためにしたデートのことを思い出した。それだけではなく、佑真君に家庭教師をお願いして時間を割いてくれているのに何の進展がない焦りも私を襲う。佑真君に頼りきりの今のままではだめだ。私の悩みなのだから……
「……そのお誘い受けるわ」
「本当ですか!? やった! ありがとうございます!」
ガッツポーズをする水島君。
「いつなら都合がいいですか?」
「そうね休日なら基本空いているわ
「なら、今度の日曜日はなんてどうでしょうか?」
「わかった。その日にしましょう」
「!! よろしくお願いいたします!」
「こちらこそ」
「楽しみにしています! それでは!」
そういって走って帰っていく彼の後ろ姿を見送る。
少しだけでも変わらなくては……
週末のデートを通して何か得られることがあると、わずかな希望を抱かずにはいられなかった。