文化祭クエスト
《クエスト1:3丁目の加島手芸店で、5メートルの布を入手せよ》
《報酬:売店のおしるこ缶(先着2名)》
クエストを引き受けた、ふたりの女子高生。
「うちの担任、やるじゃんね」
「ただのおつかいじゃ、誰もやる気出さないもんねぇ」
「加島さんのとこ、なにげに遠いし」
「ほんとそれ」
「まぁ、おしるこ缶に釣られるウチらもウチらだけどね」
「いやだって、あれなにげに高いじゃん。ウチらのお小遣いじゃ手ぇ出しにくいっていうかさぁ」
「それなー。190gで450円はちょっと……って感じだわ」
「なー。めっちゃ美味いってわかっててもさぁ」
「450円つったら、駄菓子屋で大人買いできんじゃん?」
「たしかにー」
などと、ローテーションながらも止まらない会話をしつつ、市バスで向かった。
店に着くと、恵麻は勝手知ったる様子で引き戸を開けた。
「おばちゃん、こんにちはー」
「こんにちはー。布くださーい」
恵麻の声に続き、咲菜の声も店内に響く。
「はいよー」
答える女性の声も、店内に響いた。
「恵麻ちゃん咲菜ちゃん、おつかい?」
布コーナーに進んだふたりに近づきつつ、店主の女性が声をかけた。
「そー」
「文化祭で喫茶店やるから、ちょっと可愛い布5メートル買って来いってさー」
「なるほどね」
女性は布の山にサッと目を通すと、一巻、もう一巻と生地を取り出していく。
「はい、これ持って。これもね」
見る間に、ふたりの腕の中に丸巻の生地が積まれていった。
「それ持って、こっちおいで」
ふたりは女性の後に続き、裁断台まで生地を抱えて歩いた。
台に並べられた、10種類ほどの生地。
「後は予算と相談しなよ。決まったら呼びにおいで。レジ向こうで仕事してるから」
去っていく女性にお礼を言い、ふたりは布たちに向き直った。
「おばちゃん、ウチらの好み熟知しすぎ」
「ドンピシャじゃんねぇ」
「マジどれも可愛いし」
「選ぶのムズくない?」
ふたりは可愛い布にときめきながらも、全部は買えないことに、もどかしさを感じた。
それから15分。悩み抜いた末に2種類選び、会計を済ませて店を出た。
1つ目のクエストは成功した。
2つ目は翌日に伝達される。すべてのクエストを成功させ、無事に文化祭を迎えることはできるのか……それは、神のみぞ知る──
使用キーワード『文化祭』『クエスト』
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