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花火

作者: 羽切 愁慈


どん、どんと頭に痛い音が鳴る

「ねぇ、花火あがってる」

「うそ。」

知らせなど目にしていなかった


「外に行こう」

そう言われなければ動かなかっただろう

衝動に駆られ裸足でスニーカーをつっかけた

「待って、鍵」

きちんと締め、歩いて辺りを見回す


塾帰りの女子高生がきゃあきゃあしてる

振り返れば二階の階段で頬杖をつく人がいた


行かなきゃ


そう思って歩き出した

あっちかこっちか言ううちに、空が緑に光る

あれだ

そう思うと周りが見えなくなった

走れるじゃん、というため息は聞こえないフリをした


花火を探しに2人で走る

あがる場所はわからないから無駄になるかも

そんな不安を消すように走る

景色はわからない

声もわからない

ただ、ただ、心臓を打ち鳴らす衝撃だけが

身体を次々刺してゆく

花火の音が聞こえる

彼の声が聞こえる

無我夢中で走った

きっと


花火が打ち終わったら、何かが終わる


全力疾走して汗かくのも忘れるくらい夢中になる

周りで花火を見る歓声が聞こえる

焦る気持ちとワクワクする鼓動

息を切らしながら指をさしてめいっぱい叫ぶ


「見えた!」


どぉんと音がした。

視界めいっぱいに広がる火花


手を繋いだ帰り道

コンビニでガリガリ君を買った

汗を冷やす風はソーダ味だった

家に帰ると、それは夢だったのではないかと現実味を消して行った


走ったのは何のためだったのか

どうして花火がみたかったのか

なぜ行かなきゃと思ったのか


それはもう、2度と思い出せないものだった

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