一枚の湿布
「ふぅ すまん たのみがあるんだが・・・・・・」
部屋にあるベッドの上連れは蚊の泣くような声で私に話しかけた
「なんですか?お父さん あらたまって」
私は悲しい顔を見せまいと少し大きめな声で答える
「いやな・・・・・・ワシが死んだら そこにある はぁ 湿布を貼ってほしいんだが」
「どうしたんですか?死んだらなんて・・・・・・いま貼りましょうか?」
連れは自分の死期が近いことをうすうす感づいているのだろう
私は今は日常の会話でこの日常を少しでも長く続けていたかった
「いや・・・・・・高い・・・・・・ものだしね あと一枚しか・・・・・・ないだろう? ふぅ 生きてるうちには・・・・・・・貼らなくて いいよ」
「あと・・・・・・言っとく・・・・・・お前と歩けて・・・・・・いい人生 だった 先に ごめ んな・・・・・・・ 」
「・・・・・・ふう」
連れはそう言ったあと静かに目を閉じた そして3日後息を引き取った
私は静かに湿布を彼の背中に貼ってあげる